西日本新聞

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パブリック・シティズン

 1971年に弁護士で社会運動家のラルフ・ネーダー氏が設立した米国の消費者非営利団体。日本語訳は「一般市民」。環境保全、消費者の権利保護などに取り組む。ワシントンと、テキサス州オースティンに事務所があり、支援者8万人からの寄付や発行物の販売で運営されており、政府や企業の補助金は受けていない。米外交政策は大企業への利益誘導型、帝国主義的な反民主主義、反人道的と指摘。議会、エネルギー計画、国際貿易、保健衛生、訴訟の五つの分野で監視活動、政策提言を行っている。国際貿易グループは環境保全、安全な食料、医薬品や雇用などについて弁護士らが調査している。

(2012年3月18日掲載)

「TPPは富裕層のため」 米消費者団体のワラック氏 福岡市で講演 大企業優遇、食の安全崩壊… 「米国の標的は日本」

 福岡市で先日開かれた「環太平洋連携協定(TPP)を考える会 in 福岡」(TPPを考える国民会議主催)では、米国の消費者団体「パブリック・シティズン」のロリ・ワラック氏が、国際法が専門の弁護士の立場から、北米自由貿易協定(NAFTA)や米国と韓国の自由貿易協定(FTA)の実態を踏まえ、TPPは「1%の富裕層のためのもの」と国内外に警鐘を鳴らした。講演要旨を紹介する。

 ■秘密裏で進む協議

 現在、関係9カ国で交渉中のTPPだが、その交渉内容は政府のアドバイザーを務める多国籍企業はつぶさに見ることができるが、各国の市民やマスコミ、国会議員さえ知らされず、秘密裏に進んでいるのが実態だ。

 日本政府は交渉について「まだ30%しか進行していない」と言っているようだが、前回のオーストラリア・メルボルンでの協議は、オバマ大統領になってから既に11回目のラウンド交渉。3割ではないだろう。ただ、知的財産権や医薬品など、ページナンバーも付けられないほど議論がまとまっていない分野もある。

 そもそもTPPはブッシュ政権下の2008年に素地ができていた。NAFTAをアジア太平洋地域に広げ、金融サービス、投資家保護の政策を重視する考えだ。米国は一握りの大企業に毒された民主主義で1%の富裕層のためにTPPを推し進めている。米国民の99%が反対か、少なくとも望んではいないだろう。大統領選のドタバタの最中に国民に気付かれないように、TPPの協議を進めているのだ。

 ■NAFTAの結果

 米国、カナダ、メキシコの3カ国でNAFTAが署名されて20年。今では米国内でも共和党、民主党、その他の政党支持者からも反対が多い。米大手経済紙「ウォールストリートジャーナル」の世論調査では69%がNAFTAに反対している。製造業の雇用が500万人失われ、賃金が1972年当時のレベルまで下がり、4分の1の企業が国外流出した-というのが理由に挙げられる。

 さらに米国から大量の食品が流れ込み、メキシコでも200万人の農民が仕事を失った。自給自足していたトウモロコシは今では8割を米国からの輸入に頼る。すりつぶしたトウモロコシから作る国民食トルティーヤの価格は2倍に高騰した。カナダでは医薬品の価格が高くなった。米国は汚い手口(ダーティートリック)で協定を結んでいく。協定締結後も、いろいろ口をはさみ、大企業優遇策を続けている。

 ■米韓FTAの結末

 米韓FTAはNAFTAの強力版だ。米国の利益に対応しており、大企業や外国投資家の権利を守るための2国間条約だ。国内法より上位に位置付けられる。外国企業には特権待遇が与えられ、投資先の土地や工場を購入できる。

 韓国の自動車会社が低燃費の新車を開発したら、輸出の際は米国と協議しなければならない。一方、食品の安全性も担保できない。輸出元の国の基準が満たされていればいいので、韓国としては自国の基準で輸入制限ができなくなる。BSE(牛海綿状脳症)感染牛が輸出されるが、米韓では「肉の同等性」という言葉で問題を片付けたようだ。

 米国では食品に遺伝子組み換え作物が含まれているかどうかを表示する義務はなく、輸出先では使用表示の方法や安全基準も緩和されるはずだ。食品を工業製品のように、例えば、タイヤを作るようにしか扱わなくなるだろう。

 ■二つのハンマーで

 米国のターゲットは日本だ。他国には申し訳ないが「金持ち」の日本以外には関心がない。米国の主な目的は、BSE問題で輸入制限されたままの月齢20カ月以上の食用牛の制限解除や郵政民営化、完全なる関税撤廃などだ。

 参加すると協定は絶対的だ。米国の多国籍企業が日本政府を相手に訴訟を起こすこともできる。米国は二つのハンマーを持っている。政府間で訴訟を起こし、日本の法律を変えさせるか、従わなければ経済制裁を加えるかだ。

 企業は投資先の国で特権待遇が与えられるため、海外進出に二の足を踏まなくなる。低い賃金と低年齢の労働力のあるベトナムやマレーシアに進出するため、雇用の場が国外に移転するだろう。

 米国は夏までに交渉を終えたいと考えている。日本が交渉に入る前に他国と内容を固め、意思決定に日本を参画させないつもりだ。


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