世界は6人でつながる?


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世界は6人でつながる?

 「友達の友達は、みな友達だ、来て…くれるかな?」「いいとも!」毎回、ゲストの知人を紹介して次のゲストとするタモリの長寿番組「笑って、いいとも」はある意味、連鎖の真理を突いている。実は、世界は6人前後を介するだけでつながるかもしれないからだ。

It's a small world!

 SNS(Social Networking Service)花盛りの今日、スモール・ワールド現象とともにネットワークを再考する必要がありそうだ。
 心理学者のスタンリー・ミルグラムは6人の共通の知人の連鎖を介せば、世界中のすべての人間と間接的に知人関係を結べるとし、これを6次の隔たり(Six Degrees of Separation)と表現した。
 彼はネブラスカ州オハマに住む160人の住人をランダムに選んで、それぞれの知人へ手紙を転送しながら、ボストンに住む謀株式仲介人へその手紙を届けて欲しいと依頼した。その結果、ほとんどの手紙が5段階か6段階の知人を経て目的地となるボストンの人へ届いていたのである。
 日本の社会学者も同様な実験をした。北海道の人を目的地とし、「北海道の知り合いを紹介してください。もしいなければ、北海道に知り合いがいそうな人を紹介してください」と、九州から手紙を出した。その結果、平均で7人目で目的地の北海道の人に届いたのだ。
 例えば、10人の知人がいれば、10の6乗で、100万人につながり、つまり1000万人の知人につながることになる。日本人の人口を1億2600万人とすれば、22.42人の知人がいればつながり、世界の人口が64億人とすると、43.15人の知人がいれば64億人以上の知人につながるということになる。
 ところで、バージニア大学の研究グループが、ハリウッド世界の有力俳優は誰か、という興味深い調査をした。
 ケビン・ベーコンと映画で共演した俳優、あるいは共演した俳優がケビン・ベーコンと共演したことがあるか…と調査したのである。共演した人をベーコン数1、共演した俳優が共演していた場合はベーコン数2、共演した俳優の共演した俳優が共演していた場合はベーコン数3…とする。その結果、
ベーコン数1が、1806人
ベーコン数2が、145024人
ベーコン数3が、395126人
ベーコン数4が、95497人
ベーコン数5が、7451人
ベーコン数6が、 933人
ベーコン数7が、106人
ベーコン数8が、13人
という数字が得られた。ベーコン数の平均は2.946だった。ショーン・コネリーの場合は、
ベーコン数1が、2272人
ベーコン数2が、218560人
ベーコン数3が、380721人
ベーコン数4が、40263人
ベーコン数5が、3537人
ベーコン数6が、535人
ベーコン数7が、66人
ベーコン数8が、2人
で、ベーコン数の平均は2.731だったのだ。
 このように計算して、ハリウッド世界での中心的な俳優(売れっ子)とのつながりを割り出したのである。ハリウッドでは、2、3人を介してつながっているようだ。ちなみに、もっとも売れっ子から離れている(マイナー俳優)ベーコン数は9.2だった。
 日本のmixiもスモール・ワールド現象に関して同様の実験を行っている。

 スモール・ワールド現象は静的な視点であり、関係の親密性の程度や状況、対象とする系によっても数字は異なってくるとは思うが、仮に世界が6次(層)を介してつながっているとするならば、世間は本当に狭い。一般に、貴重な情報が得られるネットワークは、付かず離れずの、弱い紐帯(ちゅうたい)だといわれている。
 逆に、濃いつながりである、いわゆる内輪では、その関係性は開かれておらず、当然、内部ループを繰り返すだけで、環境変化とともに陳腐化し、衰退していく傾向にある。
 上記の事実は、ネットワークや組織、系の大きさを考察する場合に大変有用な示唆を与えるものだ。
 様々な系や塊の中で、その中心人物となる磁力を持つ人は、狭い世界の中に存在しているにもかかわらず、開かれた人脈を介して世界とつながっており、ちょっとした力でその連鎖が大きな力となる。

 私たちの所属する系は狭い世界かもしれない。しかし、狭い世界で起こることは、全世界に多大な影響を与えることでもあるのだ。世界や系は6層の入れ子状であり、相似的に構成されているというイメージが沸く。身近な等身大の生活圏を大切にして開けば開かれるほど、世界が身近になり、大切にできるのである。

2006.10.10. 松村崇

等身大が大切

 人間の進化のほとんどは、農業発生以前、少数グループのなかで互いの顔が見える範囲で暮らしているときに起こった。すなわち、人間の生態は今はもう存在していない生活条件に適応すべく進化したのである。人は少数の相手を、短い距離を、比較的短い時間を強く意識するように進化した。そして、それが今もなお人にとって重要な生活規模となっている。(S.L.ウォッシュバーン)

 世界が6層の入れ子状だとしたら、分析レベルも6層に分類すると良いかもしれない。例えば、新制度主義者W.リチャード・スコット/河野昭三・板橋慶明訳「制度と組織」(税務経理協会P.90)では、世界システム、社会、組織フィールド、組織個体群、組織、組織下位システムという6の分析レベルに分類し、規制的か規範的か認知的かを支柱に8つの制度学派に分類した。

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