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久里浜アルコール症センター被災地派遣チームが任務終えるも、復興進まず癒えぬ心/横須賀

2012年4月9日

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仮設住宅に住む男性を訪問する藤田さん(左手前)らスタッフ=岩手県大船渡市

仮設住宅に住む男性を訪問する藤田さん(左手前)らスタッフ=岩手県大船渡市

 東日本大震災の発生直後に岩手県の要請を受け、同県大船渡市で被災者の心のケアを続けてきた国立病院機構「久里浜アルコール症センター」(横須賀市野比)の派遣チームが、3月で1年間の任務を終えた。だが、復興は遅々として進まず、仮設住宅で先の見えない生活を続ける人たちが飲酒問題を抱えるなど、心の病気はより深刻化している。同センターは今後も要請に応じて医師らスタッフを派遣する意向だ。


■夢抱き再生へ

 大船渡湾を望む高台の小学校敷地内に、プレハブ平屋の仮設住宅が立ち並ぶ。派遣終了が迫る3月半ば、同センターの「こころのケアチーム」が、1人暮らしをしている男性(61)の居室を訪ねた。

 精神保健福祉士の藤田さかえさん(55)らスタッフはやんわりと問い掛けた。「最後にお酒を飲んだのはいつですか」。男性はすぐ答えた。「しばらく飲んでないよ」。藤田さんはうなずくものの、心配が解消されたわけではない。

 アルコール依存症と診断された男性は2月、脱水症状で倒れ、市内の病院に運ばれた。「一緒に食べる人がいないと張り合いがない」。食事もろくに取らず、アルコールだけだった。

 震災後に妻と別れた。がれき除去の仕事は次第に減り、家にこもりがちに。飲酒時間も増えた。男性はケアを受け、「もう飲まない」と断言、依存の克服に努めだしている。やがて津波に流された家を再建し、「離れて暮らす娘たちが戻ってこられるふるさとをつくる」夢があるからだ。

 そんな思いに共感しながらも、スタッフらは男性が今も食欲不振に悩まされていることに不安を抱く。「被災による環境の変化で、体が急激に衰える人たちは多いから」(藤田さん)。

 「その(夢の)ためにも体を大切にしてください」。藤田さんらは安易に酒に手を出さぬよう幾度も念を押し、男性の居室を後にした。

■仕事なく暴飲

 男性のように明確な目標を持てない人たちはなお深刻だ。「生きる目的を見いだせず、ストレスだけが募り大量飲酒に走ってしまうケースがある」と同センターの樋口進院長は事態を重くみる。「『この暮らしがいつまで続くのか』といった不安が付きまとう仮設住宅での生活は特に注意が必要」と警鐘を鳴らす。

 仕事がなく、暇な時間を持て余すことも飲酒に走る一因。同市三陸町の仮設住宅に暮らす男性(72)も、震災で船大工の職を失った。「酒を飲む暇もないぐらい忙しかった」現役時代から一転、今は「仕事ができず全てにイライラする」。2年前にやめたたばこも再び吸い始め、酒も毎日飲む。「この状態が続くのはしんどい」。アルコールで憂鬱(ゆううつ)を紛らわす生活が続く。

 岩手県の要請を受け、同センターはこの1年間に大船渡市に医師と看護師、精神保健福祉士ら3、4人のチームが交代で現地に入り、仮設住宅などを訪問してきた。藤田さんによると、継続して訪問した20人のうち、8人がアルコール問題を抱え、うち3人が依存状態にあったという。

 樋口院長は「仮設住宅での生活が続く限り、飲酒問題は増えていく」と予測する。過度な飲酒は重症化につながることを懸念し、「小まめに巡回を続け、症状を早期発見することが必要」とし、再び要請されれば、可能な範囲で支援に協力したいという。


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