<「物忘れよ さようなら」(2012年1月16日 本放送)>
ゲスト:勝村政信さん、平山あやさん
<「スゴ技Q くらしが変わる!?速読 遅読」(2011年11月29日 本放送)>
ゲスト:内藤剛志さん(俳優)、山口もえさん(タレント)
リポーター:宮下純一さん(タレント・元水泳選手)
「鍋を火にかけていたら、電話がかかってきて、火を消し忘れた」「買い物中に話しかけられ、何を買うのか忘れてしまった」といった経験はありませんか?最近の研究で、物忘れは、脳の前頭前野にある「ワーキングメモリ」という記憶の働きの低下が原因だとわかってきました。その働きが衰えてくるのは40代。簡単な3つの質問に答えるだけで、あなたのワーキングメモリがどれだけ機能しているかが判明します。そして、ワーキングメモリが鍛えられると専門家が注目しているのが、“料理”と“スロージョギング”。実際に脳を測定し、どうすればより効率的に鍛えることができるのかをお伝えしました。
ワーキングメモリとは、『鍋に火をつけていたときに、電話がかかってきて、鍋のことを忘れてしまう』など、日常生活のなかで頻発する『もの忘れ』の原因と言われている、記憶の仕組みです。鍋の火を消す、という目的を果たすまでの間だけ覚えておかなければならない、一時的な記憶の働きがワーキングメモリです。
脳のなかで、これまで長い間覚えておこうという記憶は「海馬」が関係していると言われてきましたが、一時的な記憶のワーキングメモリは、おでこの辺りにある、前頭前野が関係しています。ワーキングメモリは、『作業台』に例えることができます。同時に複数の作業をしているときに、それぞれの記憶を置いておく働きで、3つほどの記憶がのると考えられています。
自分のワーキングメモリを測る、簡単なテスト(リーディング・スパン・テスト)があります。
(実験協力:大阪大学大学院人間科学研究科・苧阪満里子教授)
【3文問題のテスト例】
趣味が音楽鑑賞というのはどうも【平凡】
すぎる気がする。
【雪山】
に出かけるときは暖かい服装でなければならない。
少子化のために大学の【入試】
はますます多様化している。
このような文章が一文ずつ出てきます。文章を音読し、同時に下線が引かれた単語を覚えます。
音読が終わると一つ目の文が消えて、二つ目の文が出ます。
こうして3文目まで行い、その後、下線部が引かれた3つの単語を答えるものです。
この時、最後の単語を最初に答えるのはNGです。
音読をするということと、下線が引かれた単語を覚えるということが二重課題になっていて、けっこう難しいのです。
【点数の付け方】
この3文を読むテストを、5回繰り返します。
1回のテストは、単語3つをすべて答えられてはじめてクリアとなります。
・5回のうち、クリアが1回以下の場合・・・2.0点(およそ70代の平均)
・5回のうち、2回できた場合・・・2.5点(およそ40代の平均)
・5回のうち、3回以上できた場合の点数・・・3.0点(およそ30代の平均)
【ワーキングメモリをうまく働かせるコツ】
イメージを働かせて記憶することで、容量が限られているワーキングメモリにうまく記憶を載せることができます。例えば、下線の単語が「がけ」「百万人」「要求書」だった場合は、「がけに百万人が立っていて、それぞれが要求書を持っている」というイメージをして、一つの記憶として載せるのがコツ。これは日常生活にも応用できます。鍋に火をつけたときに、他の家事に移る前に、「鍋に火がついていること」「忘れたら、火事になってしまったこと」をイメージすることで物忘れしにくくなると言われています。
【ご家庭で使えるテスト文の例】
趣味が音楽鑑賞というのはどうも【平凡】
すぎる気がする。
【雪山】
に出かけるときは暖かい服装でなければならない。
少子化のために大学の【入試】
はますます多様化している。
土曜日には家族と【散歩】
する人たちをよく見かける。
窓から外を見ると、たくさんの【自動車】
が国道を走っていた。
職場で新しい【装置】
を購入したので、講習会が開かれた。
父は最近は【白髪】
が多くなったとしきりにぼやいている。
住民たちは月に一度、町内を【清掃】
してまわる。
真夜中の落雷で、【校庭】
の大きな木が倒れた。
その古い映画館は【人々】
に惜しまれながら閉館された。
塩分の取りすぎは血圧に悪いと【証明】
されている。
その時計は限定モデルなので、【国内】
で見つけるのは困難だ。
工場で車の【部品】
が組み立てられるのを見学した。
【同僚】
は会議での発表の準備に追われている。
祖母は昔の【生活】
は環境にやさしかったという。
番組では、料理の仕方でワーキングメモリの働きが変わるのか実験。まずは野菜を切る場合。
ピーラーやスライサーを使った場合、ワーキングメモリはあまり活性化しませんでした。
一方、包丁を使い、千切りやかつらむきをした場合には、ワーキングメモリは大きく活性化。
これは包丁を使う場合、常に前の切れ具合を確認しながら、切っているので、ワーキングメモリが働くと考えられます。しかし包丁をふだんよく使う方の場合、器具を使ったときに、ワーキングメモリが働くこともあります。
たまにはふだんと違うやり方で料理をすることがいいようです。
次に「ドレッシング」作り。市販ドレッシングをかけるだけの場合、前頭前野のワーキングメモリはほとんど働きませんでした。一方、サンプルの味見をして、手作りで調味料をあわせドレッシングを作った場合、ワーキングメモリは大きく働きました。特に、味見をした直後に大きく活性化、これはその味の記憶を維持しようとしたためだと考えられます。
また、レシピを見て、手作りでドレッシングを作ってもらったときも、ワーキングメモリは活性化しました。レシピを見るだけでも、その量を覚えておこうと頭が働くので、前頭前野が働いたと考えられます。
(実験協力:日立製作所中央研究所 小泉英明フェロー)
高血圧改善、肥満改善などの効果で「あさイチ」でも取り上げてきた「スロージョギング」。
京都大学名誉教授で、脳科学の権威、久保田競さんによれば、脳、とくに前頭前野をきたえるのにもいいとのこと。久保田教授の実験では、週に1時間走ったグループで、前頭前野の容積が増えたといいます。
番組では、スロージョギングのコツを福岡大学教授の田中宏暁さんに伺いました。
スロージョギングは、時速5キロ程度、歩くのとほぼ同じペースで走ります。ポイントは、背筋を伸ばし、あごを少しあげること。前傾姿勢で、着地はかかとからではなく、足の裏の前の方から着地することを意識して走ります。そして一番のポイントは、「笑顔」で走ることです。
それぐらいのペースが疲れず続けられるということで、できれば仲間とおしゃべりしながら走るとワーキングメモリを鍛えるにもいいといいます。
読書の秋。本を速く読めるという「速読」と、その一方で最近話題になっている「遅読」のノウハウをお伝えしました。速く読めるようになるにはどうすればいいの?本をじっくり楽しむ裏技は?など、あなたの読書スタイルに合わせたスゴ技をご紹介しました。
番組にご出演された速読の達人 渡辺さんは、本の種類や目的に応じて読み方を変えています。
日本人の平均読書スピードは、1分あたり500~700字。渡辺さんは、あらすじをつかむ読み方だと20,000字/分、しっかり理解しながら読む場合は10,000字/分。新書だと、内容を理解しながら10分前後で読破できるペースです。情報量の多い本を記憶させる場合は、速読で何度も繰り返し読み、記憶を定着させるという読み方もしています。
速読術にはさまざまなトレーニング法があり、番組では、速読コンサルタントの呉真由美さんのやり方を中心にご紹介しました。
【注意点】
・目が疲れたらやめること。できればコンタクトレンズを外して行うこと。
・最初は目が慣れないので、頑張り過ぎない。頑張っても上の1~6を1日2セット。3日に1回、週に1回でもかまわないから、自分のペースでトレーニングを続けることが大切。
速読コンサルタントの呉真由美さんの速読講座については
「脳開コンサルタント協会」
ホームページ:http://www.brain-training.net/
電話:072-206-0966
主な著作:『魔法の速読』メディアファクトリー
明確な定義は存在しませんが、1冊の本を速く読みきることを目的とするものではなく、繰り返し読んで理解を深めたり、知識や興味を広げていったりと、1冊の本をゆっくり味わいつくすというものです。皆さんそれぞれの本の味わい方を探してみてはいかがでしょうか。
【明治大学文学部専任講師 伊藤氏貴さんのスローリーディング法】
番組では、複数の本を並行して読む、ペンと付箋を使って感想を記す、あえてしおりを使わずに読むなどという読み方を紹介しました。いずれも、速く読み通すことを目的とせず、前のページに立ち返るなどしながらじっくり味わって読むというものです。その他のテクニックについては下記の本に詳しく書かれています。
『奇跡を起こすスローリーディング』日文新書