【茨城】2050年までに8割達成可能 自然エネルギーで電力を賄えるか原発に対する拒否感が強まる中、自然エネルギーの普及に向けて情報交換や勉強会を行う「いばらき自然エネルギーネットワーク」が先月、発足した。代表に就いた茨城大農学部の小林久教授(57)は、「日本にまだ余力のある今が転換への最後のチャンス」と訴える。小林氏に聞いた。(井上靖史) −発足のきっかけは 震災も落ち着いてきた昨年夏、周りを見てもエネルギーについて考える組織がなかった。関心のある自治体や企業の知人に集まってもらったが互いの取り組みを知らない。横のつながりが必要だと。 −そもそも自然エネルギーで電力を賄えるのかという声がある 日本の使用電力総量は一兆キロワット時。将来的に省エネ技術が進んで七、八千億キロワット時になるとされるが、電気自動車の普及も考えて一兆キロワット時と見る。それでも二〇五〇年までに自然エネで八割を賄う目標は十分に達成の可能性がある。 既に全体の約一割を賄っている水力は、小水力の普及などで5〜10%増が見込まれ、千五百億〜二千億キロワット時になる。太陽光は(パネルの)置き場の問題はあるが、少なくとも千億、頑張れば二千億キロワット時。風力は自在だ。洋上に増やすことができ、二千億〜三千億キロワット時は可能だろう。地熱は約五百億〜千五百億キロワット時が見込まれる。バイオマスも加えれば十分に八割に届く。最初から反対の人は別だが、多くの学者が現実味を認めている試算だ。 −設備不足やコスト高、供給が不安定といった問題がある たとえば北海道の風力。潜在能力に送電の容量が追いついていない。変電所も含め、システム構築の議論を早急に始めなければならない。インフラ整備には二十年かかる。二〇五〇年に間に合わせるためには、三〇年までに「これで行く」というデザインが必要だ。 設備投資に多額な費用は掛かる。でも、孫の世代まで燃料代を払い続けるのか。どこに金を掛けるかの議論だと思う。この冬も燃料費の高騰と厳寒が重なって、農家のハウスの燃料代が数千万円になったと聞く。将来的に燃料費が掛からないのだから、ビジネスとして成り立つはずだ。 不安定さに備えた緻密な議論は欠かせない。欧州では地域全体で自然エネルギーを考える議論がきっちりしており、太陽光は地中海側の南部、風力は(バルト海などがある)北部に置くなどバランスを考慮している。日本も四季などを考える必要がある。 −自然エネルギーでやっていくことは十分可能と思える話だが、普及を阻むものは 原子力を動かさないと成り立たないとか、産業が逃げてしまうという固定観念だろう。原子力の是非で先鋭化したくないので反原発とは言わないが、われわれとしては「こうすれば自然エネルギーでやっていける」ということをしっかり示したい。(人口の大幅減で先細りが見込まれる)日本にまだ余力がある今が、持続可能な社会へと変えていく最後のチャンスではないか。 −今後の具体的な取り組みは まずは横のつながりを広げたい。勉強会や視察を行い、水力でもうかっている自治体もあることなどを知ってもらう。大事なのは足元にある資源を活用する発想。県南や県西部で一年を通じて地下水が一五度に保たれる地中熱などに注目している。夏は十分に冷たく、冬は暖かい。温度差のエネルギーとして使えると考えている。 茨城県は三百万人と活動量が大きく、首都圏にも近い。こういう地域で、ごく普通に自然エネルギーを活用しているモデルを示せれば、将来を変える大きな芽になるだろう。 ◇小林久氏 1955年2月生まれ。長野県佐久市出身。新潟大理学部、東京農工大院卒。農村開発コンサルタントの民間会社を経て1997年から公募があった茨城大へ。地域環境科専攻。 【2050年の自然エネルギー試算】 (小林氏作成) 水 力 1500〜2000 太陽光 1000〜2000 風 力 2000〜3000 地 熱 500〜1500 ほかにバイオマスなど (単位:億キロワット時、2010年度までの日本の年間電力使用総量はおおむね1兆キロワット時) <いばらき自然エネルギーネットワーク> 今年3月、県や水戸市などの自治体、関彰商事など自然エネルギーに取り組む民間会社、個人などで発足。現在、法人会員は約80、個人会員30。原則として会費は徴収せず、活動費は茨城大研究費や賛助会員の寄付でまかなっている。詳しくはホームページhttp://www.ren‐ibaraki.jp/ PR情報
|