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本の紹介

新刊 中国関連書籍
岐路に立つ中国 超大国を待つ7つの壁
岐路に立つ中国 超大国を待つ7つの壁
津上俊哉 著
日本経済新聞出版社
【1900円(税別)】

■書評

 中国はどこまで強大になるのか? よく言えば成熟社会、悪く言えば「落ち目」の国に住む我々は隣国の台頭をため息まじりに見守っているというのが今の日本の姿ではないだろうか。本書はこれに一つの答えを用意した。
 著者は中国が今後解決しなければならない課題を7つ提示し、中国が米国に代わって「チャイナ・アズ・ナンバーワン」になれるかどうかは、優れてこれらの課題をうまくこなせるかどうかにかかっているという。
 よく言われることだが、農民と都市住民との間の目のくらむような格差を解消し、人口の3分の2を占める「二等公民」たる農民を社会保障制度に組み込まない限り、中国は一流国にはなれない。これを実現するためには莫大な財源が必要で、それを賄うために農民は虎の子の土地を政府に差し出し、代わりに都市戸籍を入手するという選択もやむを得ない、と著者はいう。農村が都市化する過程で生ずる巨大な開発差益の仕組みを分かり易く説き明かしてくれ参考になる。
  高齢化の問題を「未富先老」(豊かになる前に老い始める)という言葉で語り、「一人っ子政策」の影響は従来考えられてきた以上に深刻、かつ早くやってくるという。著者は米国在住学者の論文などを引用し、中国の人口は13・5億人をピークに2016年から減少を始め、近い将来、年々1000万人以上の人口急減期を迎えると指摘する。 
 この結果、高度成長は2020年までにはピークアウトして成長率が低下していくが、この趨勢を変える手段はなく、解決には半世紀の時間がかかるという。それゆえに、中国がGDPで米国を抜き、世界の盟主の座に就く可能性は近未来にはなく、勝負は中国が高齢化の衝撃をくぐり抜ける21世紀後半に持ち越される、というのが著者の結論である。
  中国関係の書籍は多いが、読んで得をしたと思える本に久しぶりに出会った気がする。   (高橋茂男)

(「日本と中国」2011年4月5日号掲載)



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