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ひきこもり男に鞭を打て

1: 名前:すーち☆2011/11/03(木) 00:46:08 HOST:i121-115-206-17.s05.a005.ap.plala.or.jp
昨夜、先輩と酒を飲んだ所為で頭が痛い。
目を開けば視界がグルグル回って、吐き気まで襲ってくる。
だらしの無い二日酔いに深く溜め息を吐き、顔を横に倒して部屋を見回す。

「せ…んぱい…?」

部屋に先輩の姿はなく、出勤したようだった。
ピラミッド状に積み重ねられた空き缶と辺りに散らかったゴミが昨夜の惨状のままで、まだアルコールの臭いが漂っている。
昨日の記憶が曖昧だ。いつ寝てしまったのだろう。

「…あ、気持ち悪…い」

怠い体をゆっくり起こしてトイレに向かおうとした時、運悪くもベルが鳴った。
吐き気を抑えながら玄関に向かい、扉を開ける。冷たい秋風が吹き込み思わず目を細めた。

「こんにちは」

まだ揺らぐ世界に一人の若い男性が現れる。目を疑いたくなるほどの美青年は僕に向かって笑っていた。
初めて見る顔に戸惑い硬直している僕に青年は箱を差し出してきた。

「隣に引っ越してきた天子です。これ宜しかったら召し上がって下さい」

アマネと名乗る青年が差し出した高級感溢れる箱を慌てて受け取ろうとした時、彼の甘ったるい香水に中てられ耐え切れず嘔吐した。
その場に崩れ落ち咳き込む。
何も考えずに吐いたわけじゃない。なるべく遠くで吐こうとしたのだが、思っていたより距離は変わらない。

「わっ、大丈夫ですか!?」
「ケホッ、ケホッ…ごめ…、ゲホッ、」

随分と汚いものを見せてしまった。どう詫びればいいんだ。
口から垂れた胃液と唾液を拭い、膝に力を入れて体を起こす。すると背中にスッと手を回され、彼は心配そうに顔を覗き込んできた。

「俺片付けますから寝ててください」
「え…や、きた、汚いから嫌、でしょ」
「放っておけませんから」

彼はそう言って室内に上がり込んだ。
なんて人だ。まるで嫌がる素振りを見せない。機敏に動き処理を済ませていく姿を見て不甲斐なくなりベッドに戻った。
初対面の人にゲロ処理して貰ったことなんて無い。こんなこともあるんだな。いや、普通無いだろ。

その時何も気がつかなかったが、どこかで始まりの合図が小さく鳴り響いていた。誰も気付かないくらい小さな音だ。


90: 名前:星影☆2012/01/10(火) 20:36:00 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
今回はあまねくん
視点ですね★★こ
れからあまねくん
は斑鳩くんにアピ
ールがんばったり
するのかな?w

続きがんばってく
ださい(`・ω・´)


91: 名前:鏡介☆2012/01/14(土) 19:28:18 HOST:220-213-119-237.pool.fctv.ne.jp
あ、天子くんはすごい人なんだなぁ…
ショックと言うか、驚いたというか…w
斑鳩くんはどう思うんだろう?
気になります!

玖珂くん×先輩とかやばいですね!!!かなり萌えると思います←
すっごいニヤニヤしちゃいましたw
頑張ってください!


92: 名前:@まふまふ (dJaCOCbtrY)☆2012/01/15(日) 00:16:33 HOST:flh1aah118.aom.mesh.ad.jp
あげー

93: 名前:ゆん☆2012/01/15(日) 18:47:17 HOST:softbank221084197175.bbtec.net

 天子くん…
 まさか彼がそんな人だったとは…
 でもそんな天子くんもいいですね♪

 斑鳩くん大丈夫かしら(´Д`)わら

 頑張って下さいっ!

 

 


94: 名前:鏡介☆2012/01/20(金) 20:02:10 HOST:220-213-098-033.pool.fctv.ne.jp
あげます!

95: 名前:星影☆2012/01/22(日) 22:51:06 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
私もあげます★★

96: 名前:すーち☆2012/01/29(日) 01:18:12 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○星影様○
コメントありがとうございます!
そろそろ天子のダメっぷりを書かないといけなくなりました…。
もっと純粋なアピールが出来ればよかったんですが…(苦笑
あげありがとうございました!

○鏡介様○
コメントありがとうございます!
天子はダメ人間でした(笑)
何となくそんな気してたらすみません。主はかなり単純なのです。
玖珂×蘇芳はイメージすると結構際どい感じになりそうですね…(^ω^;)
あげありがとうございました!

○@まふまふ様○
あげありがとうございます!

○ゆん様○
コメントありがとうございます!
化けの皮を剥いでみるとダメ人間でした。こんな天子ですみません。
斑鳩も簡単に天子のことを知りたいとか言わなきゃ良かったんですけどね…(苦笑


○追記○
更新停滞してすみません。
最近あまり更新できませんがそれでも読んで下さる心お優しい方がいらしたら、今後ともよろしくおねがいします。


97: 名前:すーち☆2012/01/29(日) 01:23:22 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
赤に塗られた爪をチラつかせ帰る彼女に手を振り返した。まだ外は薄暗く、寒い。
もうすぐ出勤しなくてはいけない時間になるというのに倦怠感に負けてベッドの上で蹲る。
こんなところ渉さんには見せられないな。
自分で本性を隠しているのに気づき、渉さんが俺を優しい人だと勘違いしているのではなく、自分がそうさせていたのだと理解する。
どうやら俺は必死らしい。

「あー…本性見せるの怖いな」

瞼に手の甲を当てて深い溜め息を一つ吐く。
嫌われたくない、失望させたくない、気を遣わせたくない、渉さんと離れたくない。
相手の意思を無視した自分の欲望で満たされていくことに罪悪感を感じながらも、本性を出すことは出来ないでいる。
切に願う。このまま優しい人を演じさせて欲しいと。

シワになったシーツを手繰り寄せて、洗面台に向かう。渉さんが俺のこと好きになってくれるならそれでも良いような気もしたんだ。
しかしその考えとは裏腹にこの淫らで猥りがわしい体は、最悪なことに渉さんと寝ることを望んでいる。

シーツを洗濯機の中に放り込むと玄関のベルが鳴る。彼女が忘れ物でもしただろうか。
玄関の戸を開けると、そこには渉さんが立っていた。

「あ…あ、まねくん…?」

俺を見て勝手に動揺している渉さんは、キョロキョロ周りを見て一歩後ろに下がる。
彼の顔が見る見る赤くなっていくのに気づき、自分が裸に近い格好をしているのを思い出した。

「服着てなくてごめんなさい。吃驚させてしまいましたね」
「う、ううん…大丈夫」

目が泳いでいる渉さんを見ていると嫌な予感が過ぎる。…もしかして、何か気づいたか?
渉さんが妙な距離を保つものだから少し手を伸ばしてみると避けられた。

「ご、ごめんなさい…、勘違い…して」
「…なんで逃げるんですか」

逃げ出そうとする渉さんの腕を掴んで引き寄せた。逃げるなんて酷い。傷ついたではないか。
相変わらず俺に視点は合わせてくれないし、さらに傷つく。
彼が今の俺の格好を見てどの範囲まで理解したか知らないが、自分の中ではもう俺の本性が全てバレてしまったような感覚に陥っていた。

「さ、さっきの人…か、彼女さんだったの?」
「どうしてそう思うんですか?」
「…なんとなく」

俺は渉さんが好きだと言っているのに、どうして彼女なんか作る必要があるんだ。
残念なことに俺の想いは渉さんにちゃんと届いていなかったらしい。

「彼女なんかじゃないですよ」

自分でも驚くほど冷めた声に視線を上げる渉さん。ようやくこちらを見てくれた。
すぐにでもキスできそうなほど無防備な渉さんを見ていると理性なんか飛んでしまう。ただ頭の中に浮かぶ欲は『渉さんを壊してしまいたい』。
突発的な衝動を抑えることも出来ず、気づけば右手は渉さんの背中に回っていた。ギュッと抱きしめ、その細い体に儚さなんかを感じる。

「あ、…天子くん。ど、どうしたの」
「前に言ってましたよね、俺のこと知りたいって。それって今でもですか」
「…う、うん。僕、天子くんのこと全然知らないから…」
「もし後悔してでも俺のこと知りたいって思ってくれますか?」

きっと渉さんはよくわかってない。当たり前だ。大切な部分はいつも隠してきたんだ。分かるわけがない。
自分の都合のいいように渉さんを誘導しているに過ぎない。
案の定彼は頷いた。何をされるかも知らないで。

犯したら絶対もう元には戻れないのに自分の手は渉さんをベッドの上に押し倒していた。


98: 名前:星影☆2012/01/29(日) 18:51:56 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
斑鳩くーんっっ//
ド天然可愛すぎます
★★天子くんもとう
とう理性吹っ飛びま
したねw←
そんな天子君も好き
ですy((ryw

続き頑張って下さい
応援してます**/
あげもたくさんしち
ゃいます★★


99: 名前:鏡介☆2012/01/29(日) 20:35:39 HOST:124-241-036-008.pool.fctv.ne.jp
押し倒してどうなった!!!←
すっごく気になるじゃないですか…w
お久しぶりです!嬉しいです!
天子くんの本性を知って、斑鳩くんはどう思うんでしょうかね…

頑張ってください!
いくらでも待ちますよ!(^ω^)


100: 名前:鏡介☆2012/02/03(金) 22:13:46 HOST:220-213-113-071.pool.fctv.ne.jp
あげます(^ω^)

101: 名前:星影☆2012/02/03(金) 23:48:25 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
おぉ、100おめでと
うございます★★

と、あげです**w


102: 名前:星影☆2012/02/06(月) 19:58:10 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
あげます^^

103: 名前:☆2012/02/06(月) 22:20:21 HOST:ser353155034637525_docomo.ne.jp
もう更新しないんですか?

104: 名前:すーち HP☆2012/02/06(月) 23:26:10 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○星影様○
たくさん上げてもらってありがとうございます!更新遅くて申し訳ないです。
斑鳩のド天然を気に入ってくださって光栄です!
理性飛んだら誰だって怖いでしょうねぇ…(笑)
応援ありがとうございます…!恐縮です!

○鏡介様○
あげていただき感謝します!更新遅くてすみません。
ついに押し倒しました(笑)
天子の本性を知りたがってたわけなので、斑鳩に嫌ってほど見せ付けたいですね←

○あ様○
更新停滞してしまって申し訳ございません。

○お知らせ○
私情で更新が遅れて申し訳ございません。
突然なんですが、前作の【よくしゃべる男を黙らせる】のリメイク版をモバスペ・Book様で上げました。
相変わらずの駄作ですが、もしよければどうぞ。上手く貼れてなかったらすみません(汗


105: 名前:すーち☆2012/02/06(月) 23:27:59 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
ベッドに落ちた渉さんの手首を抑えつけ、無理矢理キスをした。
前みたいな触れるだけの優しいキスなんか出来ない。隙があれば口内に舌を入れて、渉さんの舌を挟んだ。

「んっ…、」

苦しげな渉さんの声が可愛くてもっと聞いてみたくなる。
どちらの唾液か分からないほど中で乱れ、ついに渉さんは喉を動かした。ゴクッと喉が鳴り、口を離す。
頬の赤い渉さんは口を半開きのまま乱れた呼吸を整えようとしていた。

「は…、はぁっ…」

好き勝手して反応してくれる好きな人の前で止まることなんかできず、首筋に吸い付いた。
雪肌に赤い痕を何箇所も残し、全てを自分のものにしたい独占欲が湧き出す。

「や、…天子くん、ちょっと待って」
「無理っぽいです」

最低な自分を全て晒して、いっそ恋愛感情も消えるくらい自分を責めてやりたくなった。
不安と恐怖の色を見せる渉さんに自嘲の笑みをもたらし、服の下から素肌を撫でる。
身をよじってその感覚に耐える渉さんに、俺は口を僅かに開いた。

「逃げないんですか?今ならまだ逃げれますよ」

手首を掴んでいた力を緩め、彼の表情を窺う。しかし、そこには予想していた表情と違う渉さんがいた。

「逃げない…、逃げたりしないよ」

目を細めて微笑む渉さんは、まるで俺を安心させるかのように見えた。
こんな気が狂ってる俺を前にしてそんなこと言える渉さんはもしかしてただ者じゃない?

「俺、渉さんのこと泣かせるつもりですよ」

服をめくり上げ、赤い乳首に舌を這わせ、乳輪をクルリと輪を描いて舐めた。
ビクッと小さく肩を震わせる渉さんはどうやら感度がいいらしい。
もう一方の手を腹部から股へ這わせ、濡れていたモノに触れた。

「結構感じやすいんですね」
「ご、ごめんなさい」

渉さんは顔を赤くして恥ずかしそうに言った。
こういう自分だけを責める人を目の前にするとどうも意地悪してやりたくなるのは俺が悪い人間だからであろうか。
下着の上から撫で、腿からゆっくり手を這わせて温かい渉さんのモノに触れる。
既に固くなっていて、俺が笑みを零せば渉さんは下唇を噛んで目を閉じた。

「渉さん可愛い」
「そ、そんなこと…ないよ」

額に掛かる前髪を撫で、耳元にキスする。亀頭を微弱な力加減で摩り、口をつけて唾液を垂らした。
赤く腫れ上がるモノを触れば渉さんの艶やかな上擦り声が聞こえ、体が熱くなる。

「気持ちいいですか?」
「う、ん」

嘘でも嬉しい言葉に気分をよくしてモノを口に含んだ。
裏筋を舐めると彼の腰が浮き、ビクンッと体が跳ね上がる。下に敷いたタオルケットを握り締め手に力が入っていた。
摩擦で体温が上昇し、いつの間にか渉さんの額には汗が浮かんでいる。


106: 名前:すーち☆2012/02/06(月) 23:28:26 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
渉さんの足を自分の肩に掛け、露になる穴に人差し指をそっと触れさせた。

「っや、…な、なに」
「え、何って…」

これまで拒絶をほとんど見せなかった渉さんは急に焦り出す。タオルケットを握り締めていた手は俺の腕を掴み、首を何度もプルプルと振っていた。
昨日だって蘇芳さんとやっていたじゃないか。それで泣いていたんだろ?

「蘇芳さんとだってやってたんですよね?気持ち良かったですか…?」
「や、やってない」
「嘘はいけないですよ。あの時、俺がどんな気持ちだったか分かります?」

人差し指と中指を穴の中に挿れ、熱を持った中で開いた。
苦痛の表情を見せ、首を必死に横に振る渉さんを横目にただ冷静に深くまで挿し込む。

「っち、違うんだよ、僕は…先輩とはやってない、…ただ、」
「ただ…?」

そこから渉さんは話すのを躊躇い、赤面した。そんな何とでも捉えられる表情をされたら渉さんを信じ難くなる。
膜を爪で引っかき、性感帯を探した。しかしどこを触っても渉さんは敏感に反応するのだから、どんな体をしてるのか不思議に思う。

「別にいいんですよ、渉さんが蘇芳さんにも俺にもいい顔する人だって。俺はそんな渉さんも好きですから」
「んっ…!あ、やめて、動かさ、ないで、お願いだからっ」

内心、渉さんと蘇芳さんが寝ているのを想像しただけで焦燥感に駆られていた。
中に挿れる指を激しく動かし、穴から溢れる体液を掌で弄ぶ。俺の腕をギュッと掴む渉さんの目に薄っすら涙が浮かんでいた。
指を抜き、中を解すと自分のモノをゆっくりと挿れようと渉さんの腰を掴む。

「だ、め…こんなことしちゃだめ…だってっ」

ついに目尻から涙が零れ、渉さんは完全に拒絶し始めた。
先ほどの余裕の笑みはもう消えて、多分残ってるのは俺に対する失望感と恐怖感だけだろう。

「天子、くん…お願いだからやめてよっ!僕、…君のこと」

渉さんの必死の叫びは痛いほど分かってる。
口を手のひらで塞ぎ彼を真っ直ぐ見つめた。こんなに目を赤くして泣いても俺はもうなんとも思わない。

「嫌いになっていいですよ、渉さん。きっと、その方が楽になれますから」

悲しげな渉さんに微笑んで、深くまで挿し込んだ。


107: 名前:星影☆2012/02/09(木) 21:19:22 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
斑鳩くーん///
もう大変です、斑
鳩君好きすぎて天
子くんから奪って
やりt((ry←w
というかすーちさ
ん神すぎます、小
説面白すぎます、
尊敬しますっ★w

続きもがんばって
ください!!


108: 名前:はるか☆2012/02/10(金) 01:03:48 HOST:ttn202-127-93-143.ttn.ne.jp


がんばってください!
応援してますよ!




109: 名前:鏡介☆2012/02/12(日) 21:24:48 HOST:220-213-119-037.pool.fctv.ne.jp
うわはっ天子くん大胆!←
斑鳩くん可愛いです(*´∀`*)

次がとても楽しみです!
頑張ってください!


110: 名前:星影☆2012/02/16(木) 16:12:20 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
あげます^^b

111: 名前:すーち☆2012/02/19(日) 23:55:20 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○星影様○
斑鳩を好きになってくれるんですか!嬉しいです///
楽しんでいただけているようで何よりです。
キャラの心情をいちいち考えてたら書く気失せてたのですが、心温かいコメントのおかげで何とか執筆できてます(笑)
あげ、ありがとうございます!感謝いたします。

○はるか様○
コメントありがとうございます。
頑張ります!

○鏡介様○
慣れって怖いですよねー(笑)
斑鳩が可愛いと言われる時代が来たんですね←
ありがとうございます。


112: 名前:すーち☆2012/02/19(日) 23:56:15 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
悲痛な喘ぎ声を出した渉さんの手が空で掴むものを探している。
俺の背中に手を回させると意外にもギュッと抱きついてきた。
痛みに堪えるように顔を顰め、切なく浅い呼吸を半開きの口から絶えず漏らす。
いつの間にか拒絶の言葉は消えていた。いつからだろうか。
この人は、俺とのセックスを望んでいるのか?

「…痛、い…っ」
「ごめんなさい、こういうセックスしかして来なかったわけじゃないんですけど」

痛いのが好きな子が多いものだったから、加減の仕方を忘れてしまった。
熱を帯びたモノが出し入れを繰り返し、そのたび快感は波打つように襲ってくる。
快感を望む俺は貪欲で、もっともっと欲しがった。渉さんの気持ちは考えられないほど夢中で、時々たまに彼の涙を見てキスするぐらいだ。

「渉さんって、すごくいい顔しますね」
「はっ…あ、見ないで…」

薄っすら開いた目から涙が零れ、顔を腕で隠そうとしている。
何でこの人はこんなにも可愛いのだろうか。
腕を掴んで無理やりキスをした。舌を口内に入れ、絡めるように動かすと口端から唾液が漏れ渉さんは慌てる。

「っ、あ!…あ、天子くん…放して、お願い、放して」
「何故ですか」

そう尋ねると同時に白い液体が渉さんの顔を汚した。
一瞬驚いて目を見開くが、すぐに視界が真っ暗になる。どうやら渉さんの手が俺の目を覆っているらしい。

「ごめんなさい、汚かった、よね…ごめんなさい」
「なんで謝るんですか。汚くなんかないですよ。手、外してもらって良いですか?」
「だ、だめ…!きっと、僕のこと…嫌いになる」

涙声の渉さんに抑え難い感情が爆発する。

もうダメだ。誰にも渡したくない。蘇芳さんにも、他の女にも誰にも。

覆われていた手を自ら外し、その手をベッドに押し付けた。
身動きの取れない渉さんは精液まみれの顔を俺に見られてさぞかし恥ずかしい様子。
そんな顔も可愛らしい。

「誰が嫌いになるって?ねぇ、渉さん…俺のこと、好きになって。俺のこと愛してくださいよ」

嫌いになっていいと15分くらい前に言っただろうか。
最悪、嫌われても渉さんとセックスできるならなんでもいいと思っていたのだ。
しかし、こんな酷いことをされても俺に嫌われるのを怖がる渉さんに、嫌われるなんて嫌だ。

「もう痛くしないから、優しい人になるから、俺のこと愛してくださいよ」

苦しすぎて俺まで泣きたい気分だ。


113: 名前:なべ☆2012/02/20(月) 00:46:04 HOST:z12.124-44-174.ppp.wakwak.ne.jp
切なくって、でも気持ちもわかるような気もして、こう、なんていうか、素敵です…!!!
みんなの気持ちが難しく交差してて、この甘酸っぱさ大好きです(´ω`* )!


114: 名前:星影☆2012/02/20(月) 22:08:08 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
斑鳩くーーん♡////
もうきゅん死にし
そうですww
読みながらてんし
ょんあげりまくっ
てます←
あとすーちさんも
大好きです///ww
応援めっちゃして
ますがんばってく
ださい!!


115: 名前:すーち☆2012/02/22(水) 00:56:42 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○なべ様○
コメントありがとうございます。
複雑すぎて書いてるこっちの手が動かないです(笑)
でも一応恋愛小説なので、バッドエンドだけは無しで頑張りたいです。

○星影様○
コメントありがとうございます。
斑鳩は攻められまくってますが、そろそろ酷な判断をさせなければいけませんねぇ…(´・ω・`)
さりげなく主に告白しなさるなんて、星影様はなんてあざといんだ!←
主のモテ期が来たようで(黙って土に帰ります


116: 名前:すーち☆2012/02/22(水) 01:00:26 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
自分から愛されたいだなんて恥ずかしいことを思ったのは多分初めてだ。
少し女好みの容姿に生まれ、軽く話しかければ簡単に満たされる。
しかし幼い頃から恋愛対象は異性でなく同性であって、所詮女一時的な補充道具だった。
手に入れられないもどかしさをこれほどまでに感じたことはあるだろうか?

「愛して欲しいんです、俺の恋人になって欲しい…」
「…なんで、僕?」

息を切らしている渉さんはポツリと呟く。
それはあまりにも初期段階の話だった。何故好きなのか、考えてみれば最初に会った時気になっていた気がする。

「渉さんが今にも死にそうな人だったから。守ってあげたくなったんです。…それから」

その続きを言おうとした時、渉さんは急にクスクスと笑い出した。
いつもと雰囲気の違う含み笑い。嘲笑のようにも見えた。

「僕なんか守ってどうするの。…蘇芳さんも天子くんも変なこと言うよ。僕のことなんて好きになってどうするの」

力なくベッドに横たわる渉さんは目を細めて遠くの一点だけを見つめる。相変わらず視線を合わせてはくれない。

「…バカみたいだ」

渉さんの吐いた言葉に目の前の色が褪せていく。何を考えているのか分からないその表情と、冷たい声。
何故か胸が苦しくなって、現実から目を背きたくなった。

「気分を害されていたら謝ります。ごめんなさい」
「最悪だよ」

突き刺さる言葉が痛い。
彼を押さえ付けていた手を放し、解放した。起き上がる渉さんは一度溜め息を吐く。
その溜め息にでさえ胸が痛んだ。

「…よく考えて?天子くんが好きなのは僕じゃなくて、僕みたいな頭の悪い男の容器だったんじゃないのかな」
「っ、そんなことないです…!」
「本当に?…嫌いになってもいいって言ったじゃないか。嫌われてもいいのに性交はできるの?…そんなの、おかしいよ」

服を着た彼は乾いた笑みを零し、口を手の甲で荒く擦る。

「…あとね、自分を責めることはないよ。僕に手を出さなかったらこうならなかったとか、考えなくていいから」
「どういう、ことですか?」

上着のファスナーを上げた渉さんはスッと息を吸うと、まだ涙で赤い目をこちらに向けて言った。

「僕はただこうやって、人が絶望する顔を見るのが好きな人間だからさ。ごめんね、歪んでる人間で」

それだけ言うと渉さんは部屋を出て行った。
バタンッと静かな部屋に鳴り響く音に一瞬、視界が眩む。どうやら自分は酔って溺れてしまったらしい。


117: 名前:すーち☆2012/02/22(水) 01:23:21 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp

預金の残金は何桁だったろうか。
あと何年ほど生きれるだろうか。
もう動きたくない。部屋の外は苦しい。僕はもう二度と部屋から出ない。

「…天子、くん…ごめんなさい、ごめんなさい…」

布団の中で何度も繰り返す謝罪の言葉。聞こえるわけないのに何度だって謝った。
酷いこと言ってごめんなさい。嘘ついてごめんなさい。否定してごめんなさい。

考えれば考えるほど自分が情けなくなる。もっといい方法はなかったのか。
自ら嫌われることに尽くすなんて本当にアホらしい。しかし、頭の悪い僕にはそれしか考えられないんだ。
あんな男に本気にならなくて良かった、とそう思って僕を消してくれればいいと思った。

先輩も恐らく僕のことを忘れて、天子くんも僕を忘れて、僕はこの部屋でひっそりと死んだらそれでいいじゃないか。

「…ははっ、元通りか」

自分の笑い声が空しくて涙が出る。古本屋にはもう行けない。
目を閉じて眠りにつく。

頭のどこかで思った。

目が覚めた時、何もかも全て最初に戻っていればいいのに…。


118: 名前:星影☆2012/02/25(土) 12:06:52 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
きゃああああ((黙←
斑鳩君がっっ
ちょっと黒いw
でも大好きです♡ww

私からの告白が
すーちさんに届いたようで
なによりでs(ry♡ww

これからがすごく気になります!
がんばってくださいb**!


119: 名前:鏡介☆2012/02/25(土) 13:10:44 HOST:124-241-044-145.pool.fctv.ne.jp
斑鳩くん…(´・ω・`)
斑鳩くん悪い人かと思っちゃったよ…びっくりw
斑鳩くんも可哀相だけど、天子くんも…
天子くんはどうなるんだろう…

本当に次が楽しみです!
頑張ってください!!


120: 名前:すーち☆2012/02/25(土) 21:33:05 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○星影様○
コメントありがとうございます!
頑張って嫌われようとしてる斑鳩ですが、なんとまぁ下手なんでしょうね///お恥ずかしい限りです。
もうそろそろ小説終わるので、最後まで宜しかったらお付き合いください!

○鏡介様○
コメントありがとうございます!
ちょっと悪い人を演じてみたんですが、やっぱり違和感ありますね(笑)
斑鳩が人生二度目のひきこもりなので、そろそろ先輩に動いてもらいます。
最後まで、宜しければお付き合い願います!


121: 名前:すーち☆2012/02/25(土) 21:37:44 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp

斑鳩の携帯に電話をかける蘇芳には後ろめたさがあった。
自分が遣らかした失態を思い出しては後悔の念に苛まれる。
しかし、ここで斑鳩の言われた通り忘れるわけにはいかなかった。忘れられもしない。

「…あ。着信拒否か…?」

一向に電話に出る気配の無い延々と続く呼び出し音。メッセージも吹き込めない。
完全に着信拒否だと決め付けた蘇芳は電話を切って、髪をグシャグシャと掻いた。

「あーくそ、着信拒否とは生意気だ」

以前にも着信拒否されたことがあった。ちょうど一年前。斑鳩が会社を辞めてひきこもった頃の話。
その時も電話が繋がらず、家まで何度も押しかけてやっと開けて貰っていた。

…待てよ?

昔のことを思い出していると蘇芳の頭には嫌な予感が過ぎった。

「おいおい…、まさか、またひきこもったりしてねぇだろうな…」

確信は持てないが何となくそんな気がした。
顔が青ざめて自室から飛び出す。行き先はもちろん斑鳩の部屋だ。
一年かけて部屋から出して、またひきこもられたら元も子もない。その原因がまた自分だったら最悪だ。

車を飛ばし、アパートに着く。急いで階段を上り、部屋の前に来るとドアノブを掴んだ。
いつもなら無用心に開いているのだが今日は鍵が掛かっていた。インターホンを何度鳴らしても出てくる気配は無い。

仕方なく右ポケットから合鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。
以前、斑鳩の承諾を得て合鍵を貰ったのだ。

いつも軽快に開けられるはずの扉は何故か重く感じる。
扉を開けて、気味悪いほど寒い部屋に眉を顰めた。まるでここ何日かストーブを付けていないかのような…。

冷蔵庫の中は相変わらず空っぽだが、前に買って来た酒だけは入っていた。
他には何も無い。もちろん斑鳩も。


「…斑鳩…?」


122: 名前:すーち☆2012/02/25(土) 21:47:07 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
部屋から出る蘇芳は隣の部屋のインターホンを鳴らしてみた。
在宅してるかどうかは知らなかったが勝手に押していたのだ。『天子』と書かれた表札を見つめ、中から音がするのに集中する。

「はい」

部屋から出てきた天子は蘇芳を見て「あ」と驚いたような素振りを見せた。

「お前、天子だよな」
「…えっと、蘇芳…さん?」
「へぇ、俺のこと知ってんだ?斑鳩から聞いたか」

天子の目から視線を逸らさない蘇芳の口元に微笑が浮かぶ。しかし天子の表情は曇るばかりだ。
互いに何を考えているのか探り合い出す。

「えぇ、…渉さんのお世話係みたいなイメージで」
「まぁ、そうだな。お世話係だ。それで、お前に聞きたいんだが。…斑鳩はどこに行った?」

天子が少しでも斑鳩の情報を持っていればと思って尋ねたが、天子の反応を見る限り知らないようだ。
しかし斑鳩の名前を聞いた途端、天子は不愉快そうな表情になるのを蘇芳は見逃さなかった。

「何、ケンカ?」
「…え?」
「あいつとケンカしたのか?」

蘇芳の言葉に天子は一瞬キョトンと呆けたが、間もなく切なく笑みを零す。

「ただのケンカだったら良かったんですけどね…」

溜め息交じりの言葉に蘇芳は首を傾げ、核心を突こうと話を進めた。
そこでようやく斑鳩と天子の関係を疑り始める。今まで二人の関係を考えたことも無かった。

「何した」
「…言えないですよ。でも、蘇芳さんが気づいてないなら一言いいですか?」

目に掛かる前髪を手で払う天子は微笑を浮かべ、蘇芳を見つめた。
瞳の色が深く、ゾッとする空気を感じた蘇芳は警戒する。天子がただの優男と違うと判断したためだ。

「俺、渉さんのこと好きなんですよ。多分、貴方以上に」
「……は?」
「好きなんです。渉さんを好きな人が自分以外にいるなんて考えてませんでしたか?」

口を噤んだ蘇芳は目を丸くして天子を見つめた。嘘か本当か見極めているようだが、天子は「本当ですよ」と察して言う。
無理に平静を装うとする蘇芳は咳払いし、額を手で押さえた。急展開に頭が付いていけないようだ。

「…それで?」
「その後は言えません。…ただ、悪いことしたら怒られた感じですよね」
「…初対面の奴に言うのも難なんだが、その曖昧にはぐらかすのやめてくれないか。核心吐けよ」

いつも大切な部分を言わず、遠回りに伝えようとする天子にとってこの言葉は胸にチクリと刺さる。
今までそうやって生きてきたのだ。急に自分の癖を見破られて、否定されたら不快感になる。

「斑鳩に触ったのか」
「…貴方もでしょう?」

すっかり目の色が変わった蘇芳は低い声で天子に攻め寄る。
誰でもなのだろうか。蘇芳に睨まれると動けなくなるらしい。しかし天子の表情は強張らず、蘇芳を睨み返した。

「蘇芳さんはずるいですよ。どうして、今更になって渉さんに手を出したんですか。もっと、長い付き合いなんでしょう?」
「…お前はまともな斑鳩しか知らないようだな」

天子は斑鳩のほんの一部しか知らない。ひきこもっていた頃の斑鳩も、鬱病の頃の斑鳩も知らない。
知っているのは、出会ってたった『一ヶ月程度の斑鳩』だった。
その一ヶ月分の斑鳩は蘇芳が一年間彼に捧げた斑鳩なのである。

「お前に説教するつもりはないが、体を交わすより大事なことあるんじゃないのか?」

蘇芳の言葉に衝撃を受けた天子は下唇を噛んだ。少し泣きそうな顔で。

…この人、わざと気づかせないようにしてきたのか…?

「何だか、蘇芳さんって先生みたいですね」
「先生やってたからな。…とにかく、お前も斑鳩を探せ。アイツ、放っておくと死ぬから」

先ほどまでの殺気は消え、蘇芳は天子に協力を仰いだ。
せっかくの休みだが、斑鳩のためなら捧げてもいいと快く協力する天子はコートを羽織り、外へ出る。

斑鳩の過去は知らないが、蘇芳に勝つことが出来ないと天子は気づいた。
心残りはあるが、諦めきれない部分もあるが、それほど未練は残さないだろう。
蘇芳と話してそう思った天子は彼に対して尊敬の目を向ける。彼も蘇芳を慕ってしまったと言っても過言ではない。


どんな精神してるんだろう。渉さんに対する想いを押し殺してずっと接していたんだろ?
…俺にはそんなの辛くて出来ないよ。

「じゃぁ、見つけたら教えて。電話番号これな」
「はい」

名刺を受け渡し、蘇芳は風のように去って行った。

斑鳩の居場所は分からない。ただ、無事でいることを願う。


123: 名前:はるか☆2012/02/26(日) 13:30:51 HOST:ttn202-127-93-143.ttn.ne.jp


おおおお!すばらしい展開!
これからも更新がんばってくださいね(*´ω`*)


124: 名前:星影☆2012/02/26(日) 20:55:01 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
斑鳩くんッッ
私の第一声は基本的に
「斑鳩くん」ですね^^←

そろそろ終わっちゃうんですか
なんだか寂しいです←

というか先輩がかっこよすぎですw
結末がすごくきになりますっ
あとすこし、がんばってください!


125: 名前:星影☆2012/02/26(日) 20:55:01 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
斑鳩くんッッ
私の第一声は基本的に
「斑鳩くん」ですね^^←

そろそろ終わっちゃうんですか
なんだか寂しいです←

というか先輩がかっこよすぎですw
結末がすごくきになりますっ
あとすこし、がんばってください!


126: 名前:星影☆2012/02/26(日) 20:55:58 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
>>124-125
連レスすみませんでしたm(__)m←


127: 名前:すーち☆2012/02/27(月) 21:46:35 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○はるか様○
コメントありがとうございます!
ベタな展開好きなので、こういうお恥ずかしい感じになってしまいした///
楽しんでいただけてるようで安心しましたー
更新頑張ります!

○星影様○
コメントありがとうございます!
確かに「斑鳩くん」で始まってますね(笑)
斑鳩を愛でてくれて嬉しいです///
先輩はみんなより年上ですから、年長は年長らしくかっこよくいきますよ!
ハッピーエンドなので、安心して読んでくださいね(笑)


128: 名前:すーち☆2012/02/27(月) 21:47:10 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
車を走らせ、斑鳩の行きそうなところを片っ端から虱潰しに探し回る蘇芳。
始めはすぐに見つけられると過信していたが、徐々に焦燥感に変わる。
頭の中に過ぎる斑鳩の死を掻き消しては次の場所へ走った。

蘇芳は斑鳩の以前ひきこもった時のことを思い出していた。
脱水症状を起こして床にグッタリと倒れ、体温は高いのに汗一つかいていない。
玄関に向かって伸びた細い腕が、ほんの数分まで扉を開けようとしていたのを思わせた。

「   」

自分はあの時、斑鳩になんと言っただろうか。

蘇芳は斑鳩のことを鮮明に思い出せても、自分のことは大概忘れてしまう。
もちろん、斑鳩のことで頭がいっぱいというのもある。

「キリねぇな…」

斑鳩がひきこもるために必要な小さくて静かな部屋を転々と探し回るが中々当たらない。
仕方なく携帯電話を取り出し、万能な部下に電話をかけた。

『はい、玖珂です』
「あーもしもし、俺なんだが…」

蘇芳からの電話に少し玖珂の声は高くなる。普通の人では分からない程度に。
玖珂は蘇芳を完全に諦めたわけではなく、ただ彼が傷ついたら慰めてあげられる位置に立っていた。まだその位置でも我慢できるのだ。

「ここら辺一体の狭くて静かな部屋のあるホテルに斑鳩の名前が無いか調べてくれ」
『…狭い部屋と言いますと、…アイツの部屋ぐらいですか?』
「そうだな」
『了解しました。5分で割り出します』

玖珂はそう断言して電話を切った。ちなみに蘇芳が電話を切るのを待つ玖珂だが、珍しく自ら早々と切る。
斑鳩の居場所を探すことは不愉快だが、蘇芳の頼みならば仕方が無い。
玖珂はそんな可哀想な人間なのだ。


129: 名前:すーち☆2012/02/27(月) 22:31:39 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
一方、天子は駅周辺で斑鳩の目撃情報を探していた。
写真などは手元に無いが、特徴を挙げて尋ねる。数十人聞いて回ってみたが当たらない。
電話を掛けてみても出る気配はなく、当然だと自嘲していた。そんな矢先。

「あれ、晴陽?」

どこからとも無く若い女性の声がした。自分を『晴陽』と呼ぶ女性は少ない。自分の性欲を満たすためだけの女性。

「超久しぶり。てか、電話番号変えたでしょ」
「…あぁ、ごめん。連絡してなかったね」

顔を薄っすら覚えているこの女性。しかし名前は出てこない。
酷い男だと自嘲する。気も無いのに甘い言葉を吐く癖は抜けないな。

「ねぇねぇ、今、暇なんだけど」
「うん?」
「はっ、やだ。うん?じゃないよ。ホテル行かない?それぐらい察してよ」

女性は上目で天子を見つめ、そっと腕を撫でてきた。
ここ数日自慰もしなければ女とも寝ていない天子にとって、その少しの触れ合いでも背筋がブルッと震える。
性欲があらん限り溜まっていた。

「……でも、怒られたしな」
「は?誰に」
「先生みたいな人に。体を交わすより大事なことがあるんだって。当たり前だよね」

クスクスと子供のように笑う天子は、蘇芳の言った言葉を当たり前だと感じながらも出来ない自分を情けなく思った。
散々聞き飽きた常識や道徳に、うんざりしていた中、何故か蘇芳の言葉だけには反応する。
彼が自分の好きな相手を想っているからだろうか。

「だから、もうやめるね。やっぱり、女の子に興味ないし」

ふっと微笑んで手を振る天子は女性を置いて、人ごみの中へ消えた。

誰かに触りたい。一緒に寝たい。体温が欲しい。
頭が欲望で溢れ返るがグッと堪える天子は、今すぐ斑鳩に会いたくなった。
例え蘇芳と一緒にいたとしても、もう一度この手で斑鳩を抱きしめてみたいと純粋に思う。


130: 名前:すーち☆2012/02/27(月) 23:07:39 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
信号待ちの蘇芳に一本の電話。ジャスト五分で玖珂からの電話だ。
こいつ、本当に万能だな。ロボットかよ。どんな神経してんだよ。
突っ込みたいところは多数あったが、黙って電話に出る。

『蘇芳さん、見つけましたよ。ちなみに権利の濫用はしてません』
「ははっ、分かってるよ。場所を教えてくれ」
『今、情報送りました。…あの、本当にどうでもいいんですが、今日の晩飯より興味ないことなんですが、…斑鳩ってどうかしたんですか?』

どれほど興味がないのかと笑う蘇芳は、玖珂から送られてきたメールを開き、ホテルの名前を見た。案外近い。
玖珂も斑鳩を相当嫌っているが、やはり気になるのだ。まして、蘇芳が絡もうものなら、自分も知っていたい。

「んー、失踪したんだよ。どうせ、またひきこもってんだ」
『迷惑な野郎ですね。どんだけ根性なしなんですか。大嫌い』
「今回も俺が悪いんだよ。斑鳩をあまり悪く言ってやるな。確かに貧弱なんだけどさ」

一般の人より肝が小さく何事にも怯えて、見ててイライラするが、どうしようもなく愛おしい。
蘇芳は斑鳩のことをそんな風に考える。一つの対象に明暗の気持ちを抱くなんて不思議なことだ。
暗いほうが多いというのに、それでも好きだと言えるのが自分でもおかしいくらい。

「ありがとな、玖珂」
『礼には及びませんよ。大好きな蘇芳さんの頼みですもん』
「はは、気持ち悪いな」

電話を切る蘇芳はハンドルを右に切り、右折すると斑鳩がいるであろうホテルへ車を走らせた。
生きていればそれでいい。自分のことが好きじゃなくても、ただこの世に存在していればそれでいいと強く願う。
最後にもう一度だけ斑鳩に電話をかけた。出ないと知っていても、かけていないと気が済まない。
神経質になったものだ。

呼び出し音が十回を回った頃、その音は止まる。

「…斑鳩?」
『…先輩、』

「現在お掛けになった電話は…」というアナウンスではなく、斑鳩の肉声が鼓膜を震わせた。蘇芳の望んでいた声に彼自身も少し動揺する。
斑鳩の掠れた声が途切れ途切れ呟いた。

『先輩…、ごめんなさい。僕、先輩に…酷いこと言ってました』
「は?んなのどうでもいい。お前、生きてるな!?飯食ったか?風呂入ってるか!?」

こんな時になって蘇芳の口から出るのはいつも斑鳩に口うるさく言っている言葉と同じ。
しかしそれは決してつまらない内容ではない。

『僕、謝りたくて…。それだけが、心残りだったから…』
「約束破るなよ。今、行くから」

車を駐車場に止め、外に飛び出した蘇芳はホテルに入った。


131: 名前:すーち☆2012/02/27(月) 23:52:48 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
「死ぬな」というより「約束を破るな」と言う方が現実味があって蘇芳は気に入っていた。

もう自分を殺すようなことはしない、もし、そのようなことがあったら俺も死ぬ。

そんな約束を以前していた。自分の死が他人にどんな影響を与えるか知らしめてやりたかったのだ。
意外にも斑鳩はその約束をなんとか今の今まで守り続けている。
それは一種の束縛であることも気が付いていたが、あの時の斑鳩にはそれぐらいの誓約が必要だったのだ。

エレベーターから降り、斑鳩のいる部屋へ直行する。今更間違うわけには行かない。
インターホンを押し、ドアをノックする。

「斑鳩、開けろ」
『…え?先輩…いるんですか?』

まだ繋がっている電話。ドア越しに蘇芳は話した。

「玖珂が一生懸命お前のこと探してくれたんだよ。悪いな、一人にしてやれなくて」
『放っておいて構いません。僕、ここから出るつもりありませんから』

ひきこもりの意思とはどうしてこんなにも固いものだろうかと蘇芳はいつも思う。
プライドか?自分を裏切らないためか?それとも恐怖が打ち勝っているのか?

「俺のこと放っておくなよ。これ以上お前に放っておかれたら涙涸れるまで泣いて、仕事も辞めて、水もご飯も何も食べないし、海に身を投げてたったひとりで死ぬ」

一気に喋った蘇芳はそこで一つ息を吸い、静かに呟いた。

「それでも、俺のこと放っておくか」

瞼を閉じ、目元に手を宛がう。不思議と涙が溢れるのだ。
こんな姿を見られたくは無いが、この扉を開けて欲しい。

「俺のこと、放っておくなよ、ばか…っ」

ガチャッと音を立てて開いた扉の傍に斑鳩が立っていて、その顔を見た途端、蘇芳は斑鳩の細い体を抱きしめた。
振りほどけないほど強く、息が詰まるほど強く抱きしめる。
足元に落ちた携帯電話はもう必要ない。

「あぁ、よかった…生きてた」
「先輩…、何で泣いてるんですか」

抱きしめたまま離さない蘇芳は斑鳩の質問には答えず、ただ黙って抱いていた。
前より細くなり、抱きしめられた反動で折れてしまいそうな斑鳩は、蘇芳の背中を二、三度軽く叩く。

「せんぱい、…泣かないでくださいよ、ねぇ…?どうしたらいいか分かんなくなるじゃないですか…」
「今、放す。もうちょっと待て」

鼻声でそう言った蘇芳に調子が狂う斑鳩はしばらく抱きしめられ、蘇芳が放すのを待った。


132: 名前:すーち☆2012/02/28(火) 00:40:40 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp

先輩が泣いている。この人も泣いたりするんだな、と頭の隅で思った。
息苦しいほど強く抱きしめるこの腕が何故、僕に向けられているのか未だに分からない。

どうして先輩は僕を選ぶんだ。僕は先輩のこと好きにはなれないのに。

ようやく離れた先輩は、目元の涙を手で拭い小さな声で「悪い」と謝った。
こちらこそ、わざわざここまで申し訳ない。

「…先輩、大丈夫ですか?ティッシュありますよ」
「んだよ。お前、めっちゃ冷静だな。もっと驚けよ!」

急に怒られた。僕だって先輩のこと考えて平静を装っているというのに。
箱ティッシュを取り、先輩に押し付ける。

「いきなり押しかけられて、放っておくなよ、とか何とか言われて、泣かれてるんですよ?処理が追いつきません…」
「あぁ、そうか。俺が、悪いんだな」

鼻をかむ先輩に目を向けてふっと息を吐いた。

「そうです。先輩が悪いんです。先輩が僕のこと困らせるんです」

この答えには驚いただろうか。今まで口答えしてこなかった僕の反逆は異例だろう。
一瞬戸惑う表情を見せる先輩だが、すぐに笑う。顔に満面の幸せそうな笑みを浮かべて。

「そうだな」

あまりにもあっさりと妥協した先輩に今度は僕が動揺した。
また抑え付けられるような言葉だと思っていたが、予想とは裏腹に先輩は何度も頷く。

…どうして、そんな優しい顔で頷くんだよ。

「…っ、違う…」

堪らず首を大きく横に振った。
違う。違う。こんなの違う。僕はどうして先輩を責めているんだ。

違う。違うだろ、責められるのは僕だろう?


「違う、僕が…自分にも嘘をついたから、…僕も、先輩も…苦しいんだ…」

先輩の涙が移ったのか、涙腺が緩み、目頭が熱くなる。顔を手で覆って床にしゃがみこんだ。
あの時、先輩を部屋から追い出した時に流した涙の意味をずっと考えていた。
何故僕は泣いたのか、泣く必要はあったのか。どうしてあの時、胸があんなにも苦しくなったのか。

「先輩…、ごめんなさい…。僕、」

本当は先輩に対する自分の気持ちにずっとずっと前から気づいていた。ちょうど、一年前に仕事を辞めてひきこもり、先輩が僕の中に入ってきた頃からずっと。
しかし、その感情は自分でも忘れるくらい奥深くに仕舞い込んでいた。
恐らく先輩の気持ちに気づくどころか、自分の気持ちもろくに吐き出せなかったから。精神に異常をきたしている時にこの感情を閉じ込めるのにはちょうど良かった。


やらしくて醜くて自分が嫌いになるほど、僕は、先輩のことが好き。


133: 名前:すーち☆2012/02/28(火) 01:48:36 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
床に蹲ったまま声を絞り出すようにして僕は、先輩に後悔にまみれた告白をする。

「僕は、先輩のことが好きです。ごめんなさい、好きで、…ごめんなさい」
「…は、ちょっと待て。…何言って」

信じてもらえなくてもいい。無意識に僕は先輩のことが嫌いだと刷り込んできたんだ。
それにこんな恋愛感情、今更取り出しても現実味は無い。

「先輩のこと、好きっ…。好きなんです、どうしたら…いいの」

誰に尋ねるわけでもなく、僕は頭を抱えて床に蹲る。
ただ先輩のことが好きで好きでしかたない。この感情を思い出させてくれたのは先輩と天子くんだ。

「斑鳩、そんなところで泣くなよ。俺のこと好きなんだろ?だったら、抱きついて好きなだけ泣き喚けばいいじゃんか」

先輩の優しい声が上からしてそっと顔を上げる。猫みたいな目が少し赤らんで、涙の跡を残していた。
しゃがんだ先輩に手を伸ばし、背中に両腕を回した。先輩の広い背中に手を置き、胸元に顔を埋める。
温かい、落ち着く、先輩の胸が心地よい。

「ははっ、お前子供みたい」

僕の泣き方がそうだったのだろうか、先輩は笑って僕の頭部に額を当てた。

「先輩も十分子どもみたいだ…」
「うっせ、お前の前だけじゃん。他じゃこんなことしないし」

…それは少しばかり嬉しいではないか。

左手で髪の毛を梳かれ、右手で顎を掴まれる。
傾けられた顔に近づく先輩は唇を重ねる寸前でふっと甘く微笑み、囁くのだ。

「キスするぞ」

うんともすんとも言わぬうちに先輩と唇を重ね、瞼を閉じた。
控えめなキスに僕はもっと、と欲しがり、先輩の背中を抱く。泣いて頭がぼんやりし、先輩とのキスが心地よく感じた。
先輩の指がそっと髪を撫で、見つめてくると僕に鞭を打つ。

「次、こんなことしたらただじゃ済まないからな。お前はまだ生きないといけないんだから」

前も「生きろ」と言われたのを思い出した。

僕はまだ生きないといけない存在らしい。
自分が生きてることで、誰かに影響を与えられるものだろうか…。まだ、おこがましいかな。

「さ、天子もお前のこと探してる。帰るか。…嫌だけどさ」

先輩の手に引かれて立ち上がる。
天子くんにありったけのお礼をしなくてはいけない。
「僕を好きになってくれてありがとう」って。

******************************************************
So you please enjoy now.


【ひきこもり男に鞭を打て】終わり


134: 名前:すーち☆2012/02/28(火) 01:58:07 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○あとがき
ここまで読んでくださった方、お疲れ様でした。
これにて【ひきこもり男に鞭を打て】は完結です。
今更思うんですが、タイトル変な名前(笑)
最後は超絶甘い感じになって、あとで読み返せば抱腹絶倒して笑ってるんだろうなー…(白目
斑鳩くんと先輩は無事くっつきました。よかったね。
天子くんは我慢を覚えようと精進していきますし、玖珂くんも先輩一途で突き進んで行く事でしょう。(^ω^)可哀想な子玖珂くん…
以上です。本当にお疲れ様でした!また、お会いできる日を楽しみにしております。
では、おやすみなさい。


135: 名前:なべ☆2012/02/28(火) 17:40:32 HOST:z12.124-44-174.ppp.wakwak.ne.jp
終わってしまった…!
でも良いエンディングでした!!ブワッ
最初のコメントをうちこんでからずっと読ませていただいてありがとうございます、そして完結おめでとうございます!!
素敵な作品をありがとうございました!


136: 名前:星影☆2012/02/28(火) 20:41:24 HOST:cmu01e110.cncm.ne.jp
斑鳩くーんっw←
あぁ可愛い♡w
先輩とくっついてくれてよかったです^^

天子くんと玖珂くんは失恋ですね(´・ω・`)←
ふたりともいいきゃらしてましt(ry m(__)m

とても素敵な小説、楽しみながら読ませていただきました。
またすーちさんがあたらしい小説を
かくことがあれば、私は飛んできますww
これからもすーちさんと斑鳩君の大ファンです♡w←


137: 名前:鏡介☆2012/03/02(金) 20:05:45 HOST:220-213-104-154.pool.fctv.ne.jp
うわあっ!!終わってしまったのか…!でもすっごくよかったです!!
斑鳩くん可愛いです(´∀`)先輩も…♡
斑鳩くんも先輩も天子くんも玖珂くんもみんな好きです!!!
完結おめでとうございます!!楽しかったです!!


138: 名前:すーち☆2012/03/04(日) 16:49:41 HOST:i121-119-55-107.s05.a005.ap.plala.or.jp
○なべ様○
コメントありがとうございます。
無事完結しました。
ずっと読んでくださってありがとうございます。本当に嬉しいです。
なべさんのコメントにはいつも考えさせられるものがあって凄く為になりました。ありがとうございます。

○星影様○
斑鳩愛されてるなー///
コメントありがとうございます。
先輩と無事くっついて完結しました。天子と玖珂はどこかで幸せになれるよう頑張って欲しいです(^ω^)
新しい小説書きますよ!懲りずに書きますよ!お付き合い願います。

○鏡介様○
コメントありがとうございます。
無事完結しました!初期設定だと斑鳩は天子と付き合う予定だったんですが、いつのまにか先輩と…。
まぁ、こんなかんじも良いですよね(^ω^)
最初から最後まで付き合ってくれてありがとうございます!感謝ー!!

○追記○
しばらくしたらまたスレ立てますね。見つけたら絡んでやってください!


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