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脱法ハーブ健康被害で対策強化へ
4月5日 21時05分
「脱法ハーブ」ということばをご存じでしょうか?ハーブと言っても規制の対象となっている薬物とよく似た成分を含み、吸引すると幻覚などの症状を引き起こすことが報告されています。
若者によるこの脱法ハーブの乱用が問題となっていることから、警察庁は販売の実態把握を進めるとともに、業者の取り締まりを徹底するよう全国の警察に指示しました。
まん延する脱法ハーブの実態について、社会部の清水將裕記者が解説します。
脱法ハーブとは
脱法ハーブは、見た目は乾燥した植物の粉末ですが、火を付けてタバコのように煙を吸うと中枢神経に影響して興奮作用があるほか、幻覚や幻聴の症状が出ることもあり、「簡単に気持ちよくなれる」として、ここ数年で若者を中心に急速に広まりました。
しかし、実際には大麻や合成麻薬などとほぼ同じ成分の化学物質が混ぜられているため、使った若者が意識障害を起こすなど、乱用による健康被害が相次いでいます。
ことし1月には、東京・渋谷で高校生ら3人がハーブを吸引したあとに吐き気などを訴えて病院に搬送されたほか、中には吸った人が死亡したケースも報告されているということです。
なぜ、まん延
なぜ、脱法ハーブがこれほどまん延しているのか。
インターネットなどの広告では、「今までにない刺激」「安全で問題ない」といった説明がされているものも多くあり、警察によりますと、体に悪い影響を及ぼすことをよく認識せずに、いわばファッション感覚や興味本位で購入する人も多くいるということです。
価格も3グラムで3000円から4000円ほどのため、未成年者などにも広まっています。
しかし、最初は軽い気持ちで始めたものの、次第に何度も使うようになる人も少なくないということです。
脱法ハーブを吸引したことのある30代の男性は「初めは友人に勧められて吸ってみたが、3時間ほど興奮状態が続いて気持ちよくなり自分でも買うようになった。使ったあとに吐き気や頭痛がすることもあり、怖いという気持ちもある」と話しています。
難しい実態の把握
こうした脱法ハーブ。
販売については実態が不透明で、事実上、野放しになっています。
店頭やインターネットで販売する業者は数百に上るとみられていますが、その詳しい数すら分かっていません。
国内や海外の卸業者から商品を購入すれば販売することができ、新規の業者も増えているということです。
それでは店での販売自体を取り締まることはできないのか? 規制の対象となっている薬物が成分に含まれている場合には、他人に売ったり譲り渡したりすると薬事法に違反します。
このため厚生労働省は、規制の対象となる薬物の種類を増やして対策を強化してきていますが、規制の網がまだ掛かっていない少し成分を変えた商品が次々と出回っているため追いつかないのです。
また、規制対象の薬物が含まれていなくても、脱法ハーブを吸引する目的で販売することは、法律で禁止されています。
しかし、ほとんどの場合、店では「観賞用」「お香」などという名目で販売されています。
中には、「吸引するかどうかは個人の責任で店としては関知しない」と話す業者もあり、販売しているというだけで行政や警察がただちに踏み込めない事情があります。
また、例え商品に規制された薬物が含まれていた場合でも、店側は「成分を知らなかった」「薬物が入っていることは分からなかった」と説明するケースがほとんどで、販売業者を取り締まるのは難しいのが現状です。
対策強化
このため警察庁は、脱法ハーブを扱う業者への対策を強化するよう全国の警察に指示しました。
具体的には、自治体などと連携して業者の数や所在地などの実態把握を進めます。
そして、販売する商品に少なくとも規制の対象の成分が含まれていないかを確認するよう指導し、含まれると分かっていながら販売していた場合は、積極的に取り締まるとしています。
これまでは明確な法律違反がないと取り締まってきませんでしたが、事前にもっと踏み込んだ対策を取って、脱法ハーブを一掃したい考えです。
脱法ハーブを巡っては、厚生労働省も、規制の対象の薬物と成分の構造が似ていれば、新たに一括して取り締まりの対象に指定することを検討しています。
覚せい剤などに手を出す入り口にもなりかねないとされる脱法ハーブ。
いたちごっこの状態を打開するために、警察と行政による、より踏み込んだ対策が必要になっています。