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「アムロちゃん、大好きです～」

テレながらも笑顔で話す和田唯さんは、アイドル！　ではなく、沖縄県在住のフリーダイバー。しかも、このたび、日本代表選手に選ばれ、9月15日（木）からギリシャで開催される世界選手権大会「AIDA Depth World Championship 2011」に出場する。その大会のためにギリシャに旅立つ直前、インタビューを敢行した。

和田さんは、北海道斜里町出身の25歳。「小学生の頃、元シンクロナイスドスイミング選手・小谷実可子さんがイルカと泳いでいる姿をテレビで見て、それがすごく楽しそうで…」と、早くもダイビングに興味を持つ。それからは週に3、4回のペースで海に潜り、高校卒業時に進路に迷っている際、ダイビングで生きて行くことを決意した。その後4年間はそのための資金を集めるために働き、22歳の時に篠宮龍三（しのみや・りゅうぞう）さんが沖縄で開いているスクールに通うために沖縄に移住を決める。ちなみに、篠宮さんも今回日本代表に選ばれており、「コンスタント・ウェイト・ウィズ・フィン」「フリー・イマージョン」の2種目に出場する。

移住から3年、和田さんは今年初めて日本代表の切符を手にした。世界選手権大会で行われるのは「コンスタント・ウェイト・ウィズ・フィン」「コンスタント・ウェイト・ウィズアウト・フィン」「フリー・イマージョン」の3種目。和田さんは「フリー・イマージョン」に出場する。「フリー・イマージョン」は、フィンを着けずに腕の力だけで海中に張られたロープをつたって潜行、浮上する競技。勝敗を決するのは、ずばり、いかに深く潜り、さらに浮上してこれるかという点。和田さんのベストは水深距離で53m。世界選手権では、まずは50mを目指すという。「競技は事前に自分が何mに挑戦するかを申告するんです。申告した水深ポイントに“タグ”と呼ばれる布状の札が設置されているので、それを取り、浮上後にマスクを外し、OKサインを出して、“I'm OK”という3つの動作を正確にこなすと、OKを意味する“ホワイトカード”を受け取ることができます」と、サラッと話す。簡単に話しているが、時には“ブラックアウト”と言って、意識を失ってしまうこともあるという。「一番の敵は不安になってしまう心。不安になると脳が酸素を必要として酸欠状態になってしまいます。なので、潜る前は不安材料を払拭します」と、肺活量とともに精神力も必要とされるシビアな競技だ。それだけに、海やプールでの実践トレーニングとは別に肺や横隔膜を鍛えるストレッチも大事な練習メニューとなる。そんな和田さんが目標とする選手は、今回も同じく日本代表に選ばれている平井美鈴（ひらい・みすず）選手。平井選手は世界選手権では3種目すべてに出場する。「平井選手は普段から親交を深めさせていただいていて、選手だけでなく、人間としても尊敬しています」と、目を輝かせる。

真摯に、ストイックにダイビングに向き合っている和田さんだが、ひとたび海を離れれば、25歳の女性。好きなミュージシャンを聞けば明るい表情で冒頭のコメントが飛び出した。しっかりと沖縄出身の安室奈美恵をフォロー。さらに趣味を聞いてみると、「今は海外ドラマにハマッてます。韓国ドラマの『チャングムの誓い』『王と私』とか、アメリカドラマの『ゴシップガール』とか（笑）。1週間待てないので、日本の連続ドラマはあまり見れないんです…（笑）」と明かす。もう少しツッコんでみると、「好きなお笑いタレントは響さん！　かわいいから」と、さらにテンションが上がる。

和田さんはフリーのダイバー以外にもう1つ別の顔を持つ。東日本大震災の被災地・福島県相馬市の支援活動を行っている。支援団体「ハチドリ」の沖縄事務局長として、支援物資の管理、問い合わせ対応、ブログ更新、チャリティーイベントでの出展など、練習の合間を縫ってこなしているのだ。「沖縄・北谷にあるダイビングショップのオーナーのつながりで、この活動を引き受けることになりました。緊急で必要な物資も目標以上に集まったりと、沖縄の人たちの心の温かさを感じます」と感謝の言葉を口にする。ダイビングの選手として、ボランティア活動の事務局長として、その語り口と表情から、今現在、本当に充実した生活を送っていることをうかがわせる。

最後に世界選手権への意気込みを聞いた。「初めての代表ですが、緊張感はないですね。緊張というよりも、チャレンジしてやる！　って気持ちです（笑）。本大会の前にプレ大会があって、そちらで3回潜れると思うので、目標は本大会と合わせて4回とも“ホワイトカード”をもらうことです」と、言葉は控えめながらも力強い意志を感じさせる。

和田さんは9月5日（月）にギリシャに立つ。沖縄から世界へ、沖縄県民としては、期待せずにはいられない。