◇WBAバンタム級タイトル戦
リングの中央で愛は叫べなかった−。新婚初戦となったWBA世界バンタム級王者亀田興毅(25)=亀田=は、同級11位のノルディー・マナカネ(26)=インドネシア=の粘り強いボクシングに大苦戦。2回に左拳を痛めた影響で前に出られず、3−0で判定勝ちしたとはいえ、消化不良の試合になった。興毅は4度目の防衛に成功。WBA世界スーパーフライ級王座決定戦は休養王者清水智信(30)=金子=は正規王者テーパリット・ゴーキャットジム(23)=タイに9回2分15秒のレフェリーストップ負けした。
興毅が判定で勝ち名乗りを受けると、会場から「エーッ!?」の声が上がった。格下に大苦戦。スピードもなく、右の大振りが目立つマナカネのねちっこさにてこずった。2回に左拳を痛め、踏み込んだパンチが打てなくなった。4回に左フックと右フックで2度もグラリときた。
試合後の興毅に笑顔はなかった。先月3日に中学時代の同級生と婚姻届を出した。「ずっと支えてきた彼女に感謝の気持ちを伝えたい。リングの中心で愛を叫ぶ」と宣言していたが「思ったより相手がしぶとかった。長年一緒にいてくれた彼女に感謝したい。秋にお父ちゃんにもなるから、もっとしっかりせな。まだ弱いお父ちゃん。強いお父ちゃんにならな」と自戒を込めたマイクアピールとなった。
「男ならボクシング? うーん、それもどうかなあ。競艇の選手もいいかな」と、今ひとつ煮え切らない興毅の最も興味のあることは、意外にも語学教育。「自分の子供には英語をしゃべらせるようにしたい。これからは海外に出て行かんと。アメリカンスクールもエエな」。三男の和毅(20)が15歳からメキシコに単身で渡り、スペイン語がペラペラなのがうらやましいよう。「和毅を見てて思うもん。芸は身を助く。オレはボクシングやめたら、何もあらへん。子供にはぜいたくはさせへんけど、教育には金を使いたい」と語る。いっぱしの教育パパなのだ。
将来の保証のないボクサー稼業。稼げるうちに稼ぎたい。報道陣にめったにお金の話をしないが、世界戦を前にしたある日、「去年のオレの年俸は1億円いってない。年間9000万や。引退したらどうすんの? プロ野球選手に比べたら、全然や。今年は1億円の大台に乗せたいな。夢は年間5億円やな」とまくし立てたのだった。
それだけに、交渉難航で一度は見送られた暫定王者ウーゴ・ルイス(メキシコ)との指名試合や、メキシコのスーパースターでWBO世界同級王者ホルヘ・アルセとのビッグマッチなどを今後実現させたい。父ちゃんは、ここでへこたれてなんかいられない。 (竹下陽二)
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