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自然の猛威 被災地再び 春の嵐、仮設や漁業直撃
 | 強風で6世帯が入居する仮設住宅の屋根が飛ばされた=4日午前10時45分ごろ、釜石市栗林町 |
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猛烈に発達した低気圧が東北地方を通過した4日、各地で暴風が吹き荒れ、深い爪痕を残した。広い範囲で住宅や農業施設などへの被害が相次いだ。JR各線をはじめとする交通機関も大幅に乱れた。東日本大震災の被災地は、再び自然の猛威にさらされた。
震災発生から2度目の春を迎えた被災地。台風を思わせる猛烈な風が仮設住宅を襲い、復旧を遂げつつある沿岸の漁業を直撃した。 最大瞬間風速28.3メートルを観測した岩手県釜石市。市内の栗林第3仮設住宅団地では4日午前7時ごろ、6世帯が入居する住宅のトタン屋根が約50メートル先まで吹き飛ばされた。入居者は全員避難して無事だった。 会社員前川伸人さん(31)は「出勤しようとしたら、バリバリと音がした。妻と子どもを連れて外に出たら、屋根がなくなっていた」と語った。前川さんは仮設住宅を出て、隣の大槌町の実家に身を寄せるという。 岩手県内では釜石市のほか、大槌町の仮設住宅でも窓ガラスが割れるなどの被害が6件あり、入居者の女性(67)が風にあおられて転倒し、軽いけがをした。 イサダなどの春漁が盛期となった被災地の漁港では、多くの漁船が出漁できず、港に係留されたまま。津波被害から一部が復旧した石巻市魚市場に水揚げした漁船は4隻。魚市場職員は「明日も水揚げは期待できない」とため息をついた。 養殖漁業者は再開したばかりの養殖施設への影響を心配したが、荒天で施設に近づけなかった。宮城県女川町針浜のカキ養殖業木村好伸さん(41)は「カキを下げているロープが荒波で絡まったり、切れたりしていないか気掛かりだ」と表情を曇らせた。 宮城県内では、石巻市の大原湾で4日午前3時半ごろ、中米ベリーズ船籍の貨物船「HONGSHENG」(1983トン)がワカメ養殖施設に乗り上げるなどの被害も出た。 同市鮎川浜の鮎川港では、無人の小型船舶「第11住吉丸」(6.6トン)が転覆。鮎川港内に重油が流出し、一時、長さ約200メートル、幅約60メートルの範囲に広がった。
◎住宅損壊350棟超、停電35万戸/新幹線・在来線は終日混乱
<建物> 東北各県のまとめによると、住宅の被害は4日、6県で350棟を超えた。宮城県では午後5時現在、登米市の住宅1棟が半壊し、角田市など県内10市町の住宅86棟(仙台市を除く)が一部損壊した。 屋根がはがれるなどした被害は、青森が92棟、秋田は66棟、岩手は48棟、山形は43棟、福島は32棟に上った。酒田市港南小では体育館屋根の4分の1がはぎ取られるなど、多くの学校や施設でも被害が出ている。 農業施設では、パイプハウスの倒壊や損害が秋田県で4386棟、山形県で61棟など日本海側で被害が大きかった。
<停電> 東北電力によると、強風で電線が切れるなどして停電した戸数は4日午後8時現在、復旧済みも含め、東北6県で延べ35万237戸に上った。 同日午後8時現在、停電が続いているのは6万8806戸。県別では秋田の6万2522戸が最多。宮城県内で仙台市若林区、大崎市などの4692戸で停電が続いた。
<交通> JR東日本によると、東北新幹線は4日、停電や倒木により白石蔵王−仙台間などで運転を見合わせ、最終的に上下16本が運休した。秋田、山形の各新幹線でも運休が相次いだ。在来線は宮城県内の全線が始発から運転を見合わせた。順次、運転を再開したが、ダイヤは終日乱れた。 国土交通省によると、仙台空港は札幌、大阪(伊丹)行きが各2便、到着便も札幌、大阪からの各1便が欠航した。 太平洋フェリーによると、仙台港発のフェリーは名古屋行きが欠航し、苫小牧行きは出港時間を大幅に遅らせた。
<通信> 携帯各社によると、4日、強風による停電と通信回線の故障などが原因で、通話とパケット通信が利用しづらくなるトラブルが相次いだ。 トラブルはNTTドコモとKDDI(au)がともに東北6県と新潟県の一部で、ソフトバンクモバイルは岩手、宮城、秋田、福島の一部で起きた。
2012年04月05日木曜日
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