外国企業による韓国への昨年の直接投資額は137億ドル(約1兆1250億円)で、韓国企業による海外投資額は445億ドル(約3兆6530億円)だった。海外から韓国への投資より韓国から海外への投資が308億ドル(約2兆5290億円)多かった計算だ。海外投資規模、資本の純流出額は過去最高だった。
外国直接投資(FDI)の収支が大幅な赤字となったのは、韓国企業が海外での工場建設、新規市場開拓、販売網構築、海外資源開発などへの投資を大幅に増やしたためだ。韓国企業が国内の生産基地を海外に移転すれば、国内の雇用が減少する。しかし、海外市場開拓、先端技術を確保するための海外企業買収、エネルギー、鉱物資源の確保に向けた投資は、韓国の経済成長、輸出・雇用にも役立つ。従って、韓国企業による海外投資の急増ぶりは必ずしも否定的に捉えるべきではない。
問題は、韓国への外国人の直接投資が増えないことだ。2000年以降、海外への投資は年平均24%のペースで増えたが、外国企業による韓国への投資は3%の増加にとどまった。2004-06年に平均8億ドル(約660億円)だったFDIの純流出額は、07年以降は200億ドル(約1兆6420億円)を超えた。
外国企業が韓国への直接投資を嫌うのは、韓国の投資環境が悪いためだ。生産性に比べて相対的に高い人件費、ライバル国に比べはるかに高い地価、強硬な労働組合、外国人の居住・教育環境、政府規制などは、以前から指摘を受けながら何も改善していない。ブルームバーグ通信によると、最近発表された「起業しやすい50カ国・地域ランキング」で、韓国は29位にとどまり、香港(1位)、日本(7位)、シンガポール(9位)、中国(19位)などアジアのライバル国に水をあけられた。
改善されない企業投資環境は、外国企業だけでなく、国内企業の投資もためらわせる。その結果、韓国への投資より海外への投資ばかりが増え続け、長期的に韓国の産業基盤が弱まりかねない。それでも与野党は今回の総選挙で、企業の投資環境改善、外国人による直接投資誘致に関する公約を一つも示していない。