はじめて携帯電話を持つ人と
付き合ったのは17年も前の話。
そういえばあの人は
阪神大震災のあと
携帯を持ちはじめた。
彼は芦屋のぼんで
30代も半ばだというのに
予備校の講師をしながら
弁護士を目指していた。
高校のときからの親友の
同僚だった。
彼女は学校の先生を目指していて
予備校の講師を
していた。
同僚だと紹介されて
彼の友達も含めて
カラオケに行った。
たまたま二人になった時
口説かれた。
軽くあしらった。
次の日、彼は私の職場に
電話をかけてきた。
名刺を渡したから。
その夜食事に行って
車で送ってもらったら
押し倒された。
必死で抵抗した。
いっぱい泣いた。
そしたら優しくキスして
抱きしめられた。
そして好きになってしまった。
でもほんとは
彼は
親友と付き合っていた。
彼に抱かれて
しばらくしてから
親友に打ち明けられた。
彼と話をした。
「あいつとは別れるから」
バカな私は彼に言った。
「別れないで。私は二番目で
いいから」
なんであの時
そんなこと言ったんだろう。
結局一年半付き合った。
私はポケベルを持っていて
ベルが鳴るのを
心待ちにしていた。
彼からの電話。
ただ逢いたかった。
終わりは突然だった。
夏、私は親友と
旅行に行った。
彼女は私と彼の関係に
気付いていたらしい。
私がお風呂に入っている間に
私の手帳を盗み見た。
彼女はただただ
泣いていた。
彼は彼女と別れようとして
でもやっぱり別れられなかった。
だから私が彼と
別れた。
しばらくポケベルは
鳴ったけど
私は電話しなかった。
そして彼女とも
親友ではなくなった。
今年、震災のあと
心配して
大阪からも友達が
電話をくれた。
そのうちの一人から
彼女の今を聞いた。
学校の先生には
なれなかったけど
パソコンの
インストラクターになって
今もがんばっているらしい。
今も独身で忙しく
しているらしい。
あの頃の私たちは
なんてばかだったんだろう。
そして今の私は
何をしているんだろう。
今も私は
何も変わらず
バカな女だと思う。
だけど今も昔も変わらず
一生懸命生きている。
ただ不器用に…