stj064 Life Lab

2012-04-01

パワポでもここまでできる!米財務省から学べる美しい資料作りのポイント

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Twitterで紹介されていたこの資料。

実際見てみたらホントに美しい資料だったので、どんな点がよかったのか、また自分の資料作りに生かしていけそうか、ポイントを抽出してまとめてみようと思います。


「ページタイトル」と「メッセージライン」を分ける

レイアウトは以下の画像のように要素が配置されています。

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特徴的なのは、「ページタイトル」と「メッセージライン」を分けていること。これは自分も前々職のコンサルティング会社時代に馴染んだ形ですが、そこから移ったあとは、この区別ができていない例をたくさん見かけました。

ページタイトルを大きなフォントで載せることはスペースの無駄使いになりますし、逆に主張したいことを小さな領域に押し込めてしまうと無視されてしまう恐れもあります。

用途にもよりますが、調査レポートなどはこうした形の方が、要点が読み手に伝わりやすいのではないかと思います。



絶対値より、変化率や差分に注目する

グラフを使用する場合、そのほとんどは「変化の様子」や「項目間の差分」を見せたいはずです。

多くのスライドでは、グラフの中に変化率や差分の数値を示し、そこから言えることをメッセージラインに言葉で表しているパターンが多く見られました。

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縦軸を省略することでスッキリと

前述の理由もあり、絶対値にあまり意味がない場合は、その縦方向の目盛りや補助線を省略してしまっている場合も見受けられます。またどのグラフも共通して、縦軸自体は描かれていませんでした。

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デフォルトのデータラベルや凡例はできるだけ使用しない

折れ線グラフなどでは、グラフ領域の中や線の終わり部分に、同色で系列名が描かれているパターンが多かったです。これだと目を行き来させることがなく、すぐにわかります。

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またデータラベルも、どうしても示しておきたいようなキーになる数値のみ、そばに見やすい大きさで添えられています。

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同色系でまとめる

棒グラフの場合は、同系色でまとめられていることがほとんどです。逆に折れ線グラフの場合は、系列を間違えないように、はっきりと別の色で分けられている場合が多いです。ちなみにこの配色はWindowsデフォルトのようです。

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引き出し線をうまく使う

僕の場合、グラフ内へのコメントは「吹き出し」をよく使ってしまうのですが、あれが散乱するのは美しくありません。代わりに、引き出し線をうまく使うとスッキリした印象がキープできます。

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美しい資料作りのポイントまとめ

これまでに出てきたポイントをまとめると…

  • そのグラフで何を言いたいか、明記している
  • 言いたいことの根拠となる数値(特に変化や差分)は思いっきり強調する
  • 一方で、関係のない数値やデータはひたすら隠す
  • 色数を制限している(棒グラフは同色系統、折れ線は多色)
  • Excelデフォルトのグラフを貼付けて終わり、にはしていない

一方で、我が国日本の財務省が出しているパワーポイント資料から、グラフの掲載されたスライドを抜き出してみました。

財務省 平成24年度予算政府案

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/yosan001.pdf

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見た瞬間、テンションが下がるようなスライドですが、前述のポイントのほとんどが守られていないということがわかります。正直これを使って説明されたら、数分で寝るか携帯いじりだす自信がありますね。

もちろんプレゼン用か配布資料用かなどの違いもあるとは思いますが、スライドとドキュメントが一緒になってしまったもの、いわゆる「スライデュメント」の文化からは日本の公共機関もそろそろ脱却してほしいなとは思います。

通りすがり通りすがり 2012/04/02 15:42 まず、参考になる記事ありがとうございます。

ただ、最後の日本の財務省資料の画像との比較のところは、ちょっと違うんじゃないかと思います。この画像は見やすい部類に入ると思いますよ。少なくとも私はこのぐらいのスライドで、数分で寝るか携帯をいじりだす自信はありません。(日本の財務省のpdfは全体としてみれば見ずらいですが。)

例えば、4条公債と特例公債の棒グラフを同色にすると、逆に意味が分かりにくくなるし、歳入と歳出の変化を表す折れ線グラフも、歳入が青、歳出が赤と直感的に色づけされています。

前半の米財務省の資料のところの分析はなかなか良かっただけに、最後のところは蛇足ではないかと思いますね。もしくはもうちょっときちんと分かりにくいスライドにした方がよかったと思います。結論ありきで適当にとってつけた感が否めません。

それと、何かをおとしめて自分の記事の有意性を高めようというのはあまり感心できませんね。例えば、あなたのブログのデザインやレイアウトだって、海外の洗練されたブログと比較すれば、それこそ「見た瞬間テンションが下がるようなブログ」であるとも言えるんですから。

名も無きリーマン名も無きリーマン 2012/04/02 21:17 スマートな資料作りがなかなかできずに悩んでおりましたので大変参考になりました。
今度のプレゼンで早速実践してみたいと思います。

>通りすがりさん
グラフのご指摘は一理ありますが、私にはこの記事での趣旨と少しずれているように感じられます。
取って付けたと吐き捨てるにはいささか根拠が足りないかと。

比較対照の悪例として既存の資料を名指しで使用するのは褒められた行為でないことには得心がいきますが、
揚げ足をとるような表現には正直不快感を覚えます。

私にはあなたこそ否定的な意見を連ねて他人を貶めんとされているように見えました。

はくとはくと 2012/04/02 23:21 良き例をありがとうございました。

資料として目指す方向の違うものを対比として挙げるのは、
判りやすくて良いと思います。
しかしここまで表現が離れると、
どちらが良い資料かは受け手の望む部分にもよるのかなぁと思います。

この流れで見ると、最後の資料がとても見づらい、
というのは私にとっては素直な感想です。
記事として流れに感心しましたのでコメントさせて頂きました。

LiliaLilia 2012/04/03 02:46 いい記事ですね!日本の財務省のは、発表資料としてはいまいちまもしれないけれど、参考資料としてみるには細かくていいと思うけれどね。

motesakumotesaku 2012/04/03 09:45 素晴らしい解説でとてもスッキリしました。
ガーレイノルズ氏の「プレゼンテーションZenデザイン」で理論的に解説されていたことが実例に沿ってピックアップされている感じがしました。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3zen%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3-%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%82%BA/dp/4894713993/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1305632315&sr=8-1

全体の構成も、緑・青・橙と三部構成になっていて、これも見通しが良くなる形だと思いました。

日本財務省の資料は、別に日本に限らず、アメリカでもヨーロッパでもどこにでもある「何が一番伝えたいのか、見て欲しいのか、情報が多すぎてよく分からない」資料の単なる一例なんだと思います(寝るか、寝ないかは、その日のやる気と体調次第ですね)。

日本財務省をおとす、と言うより、普通はどこでもそんなもんなのに、聞き手に対してここまで「おもてなし」を考えたスライドデザインが素晴らしい、そういうことなんだと思います。

とにおとにお 2012/04/03 09:49 参考にさせて頂きます。

日米の違いについては、資料の目的の違いが大きいのではないでしょうか。

おそらく、日本の財務省の資料はプレゼンテーション用の資料ではなく、所謂「ドキュメントが語ってくれる」資料。
この資料が語っているんだから、詳細は語らなくていいだろう?というスタンスに思えます。

最近は音声や動画も流行っているのだから、そろそろ「プレゼンテーションには音声による説明を付加して、資料は簡素化する」という流れになってもいいような気もしますが、まだ時間がかかるでしょうか。

実践させて頂きます。これからもおじゃまさせて頂きます。

yakasukoyakasuko 2012/04/03 15:36 興味深い記事ですね、すごくになりました。私は海外で働いてます。日本の取引先の資料と社内で作製された資料を比べ日本の資料は情報量は多いが、何がメインメッセージなのか、会議が終わった2時間後には思い出せないような資料が多いです。プレゼン資料には2種類タイプがあると個人的に思います。1 情報のみを提供して相手に判断させる物と、2 情報と共にこちらの狙い、
推奨案を提案する物です。日本の取引先からの資料の制作意図は後者2を狙っていますがよく意図が伝わってきません。stj064さんご指摘の通り、資料が一言で言って醜いのです。デザインも、日本語フォントを使った汚い英数字も、表現文言もすべてに制作者の素人っぽさが伝わってきます。事前の打ち合わせでよく上司から苦情が出ないのが不思議なのですが、上司も上手なプレゼン方法を他に知らないのだと思います。
なので私は、人の関心を引くにはまずは見た目から(人の面接も同じですよね)しっかり作り込み、自分が伝えたいメッセージをできるだけ相手に理解して頂く思いで資料を作る事にしています。昔、海外の雑誌記事に使われている配色をまねてプレゼンのグラフを作っていた事をこの記事を読んで思い出しました。記事に書いて頂いた
項目も参考にさせて頂きます。

データよみデータよみ 2012/04/03 16:33 アメリカの方は見易さ重視でとても良いのですが、縦軸が無いなどのために、データをミスリードさせやすい表記だと思います。

実数値と増減率を同じように扱ったり、目盛りが大きく異なるものを並置したりしても、すぐには分からなくなります。

それが狙いの人には特に有用ですが、グラフ表示の仕方をきちんと分かってない人がやると、とんでもないことになりそうです。


日本の方は、非常にマジメな作りでデータの把握の仕方に間違いようがありません。

元データもすべて書かれてるので、再加工も容易です。
日本の財務省がアメリカのスタイルを真似されると、困る人も少なく無いでしょう。
(元データへのアクセスは割と大変です)

そんなわけで、見易さではアメリカが上、有用性では日本が上のように思います。
なので、日米のデータの出し方はちょっと比べられないかな。

個人的には、アメリカ財務省のデータの見せ方をされると、どこかでダマされてないかと思いっきり警戒してしまいます。

plus927plus927 2012/04/03 18:01 興味深い記事です。
情報を整理し、シンプルにすることで、印象の残り方が全然違ってきます。
財務省の資料。意見としてありましたが、確かに変えられると困る人も多いかも。
この資料だけじゃなく製品等、シンプルさでは見習うところは多いですね。
今回の記事、参考になりました。

感想です感想です 2012/04/03 21:44 アメリカの資料は、口頭説明を前提としたプレゼン資料の大変良い例だと思います。

一方、日本財務省の資料はWEB掲載物であり口頭説明ができないので、これ位の情報量は必要だと思います。

両者を比較する意味は薄いと思います。

periodperiod 2012/04/04 12:05 これはアメリカと日本のスタンスの違いでもあると思います。

アメリカのプレゼンは「何を伝えたいか」を第一に掲げているためなるべく相手に意図が伝わるように見やすく簡素な記述を心がけているのでしょう。対して日本では詳細に書くことで、伝えたい意図よりデータとしての形式や努力を評価してもらいたいという考えになりがちです。

何を伝えたいかより、「これだけ網羅したのだから有用なデータは自分で見つけてください」とか「自分たちの手抜かりが無いことを理解ください」と意図したいのでしょう。

特に官僚の方たちは、民間会社ではないのでおもてなしの意識は希薄です。複雑なことはもちろんのこと、簡単なことでも難しい表現を使うことを良しとする風習があります。それは表現の複雑性で自分たちの有能さをアピールするからです。どこが重要かではなく「関連するデータは載せている。理解できない程度の人間は見る必要はない」と考えているからでしょう。

内容を重視しがちなアメリカ文化と人物を重視しがちな日本文化の違いでもあるかもしれません。

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