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【社会】

世界版SPEEDI 「全部公表」データに穴

2012年4月3日 07時04分

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 東京電力福島第一原発事故の際、文部科学省の依頼で日本原子力研究開発機構(原子力機構)が放射性物質の拡散を予測した「世界版(W)SPEEDI(スピーディ)」の試算結果の一部が、一年以上たった今も公開されていないことが分かった。緊急時に原発周辺への拡散を予測する国内版の「SPEEDI」と同様に公表対象だが、試算結果が原子力安全委員会に送られたため、依頼主の文科省と安全委のどちらが公表するか宙に浮いたままになっている。

 未公表となっているのは、東日本大震災から五日目の昨年三月十五日に行われた試算結果。本紙が独自に入手した原子力機構の説明書によると、千葉市で観測された放射性物質の濃度を基に、WSPEEDIを使い一時間当たりの放出量を推定した。

 試算によると、千葉で観測された放射性物質は三月十四日午後九時ごろに放出され、濃度はヨウ素が毎時一〇テラベクレル(一テラは一兆)だった。十五日朝に房総半島まで広がったとみられる。原子力機構は添付文書に「計算の精度は比較的高い」と記している。

 濃度はピーク時の千分の一程度だった。

 文科省によると、この試算の翌日の十六日に官邸で放射線モニタリングに関する省庁間の協議があり、測定値の評価は安全委が担当することに決まった。WSPEEDIなどへの言及はなかったが、同省はそれらの運用も安全委の担当になったと解釈。試算結果を同省でなく、安全委に送るよう原子力機構に指示した。

 原子力機構は、その日のうちにメールで安全委に送付。しかし、文科省と安全委の間の連絡が不十分で、昨年五月に文科省がWSPEEDIの試算結果をホームページで公表した際は、双方ともこの試算結果の存在に気付かなかったという。

 安全委は当初、本紙の取材に「結果は届いていない」と回答したが、その後、担当者のパソコンに届いていたことが分かった。

 政府は結果を公表する方針だが、文科省、安全委とも「自らが発表する立場ではない」と主張。互いに公表の責任を押しつけ合う事態になっている。

 放射性物質の拡散予測をめぐっては、文科省などが事故直後からSPEEDIで試算を重ねながら結果を公表せず、批判を招いた。昨年五月に政府は全面公開を表明。文科省はWSPEEDIの結果もSPEEDIに準じて、すべて公表したと説明していた。

 政府はSPEEDIについて「計算条件を設定した機関が公表する」としており、これに従えば文科省が公表することになる。

(東京新聞)

 

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