10回目の世界選手権で、ついに優勝したコストナー。
今回のメダリストたちは、実はみんな鈴木のようなベテラン勢ばかりだった。
初優勝を飾った25歳のカロリナ・コストナーは、このニースで10回目の世界選手権出場だった。2006年トリノ五輪当時から、もっとも才能のある女子の一人と注目されてきた。だがいつもここ一番というときにミスをして、大舞台でのタイトルを逃して何度も泣いてきた選手である。もうこのまま引退するのではないか、と囁かれたこともあった。
「今の気持ちはとても言葉では言い表せません」
コストナーはそう言って言葉をきり、目を少しうるませた。
「今までスケートの夢を見ると、大会に遅れてしまうなど悪夢ばかりだった。でもこうしてチャンピオンになれて、それも変わるかも」
あなたほど才能ある選手が世界の頂点に達するのに予想よりも時間がかかったのはなぜだと思うかと聞かれると、彼女は少女のように小首を傾げて少しだけ考えこう答えた。
「才能がある選手は私だけではなく、大勢います。でも私には、きっと今までの時間が必要だったのだと思う」
ティーンネイジャーの頃からいつ世界のトップに立つかと注目されてきた彼女だが、こうして10回目の挑戦でようやく頂点に到達。遅咲きながら大輪の花を披露することとなった。
若手の成長が著しいロシアにあって、底力を見せつけたレオノワ。
2位に入賞したのは、ロシアの21歳アリョーナ・レオノワだった。SPでは勢いのあるすばらしい演技を見せて首位に立ち、フリーもほぼノーミスだった。
「SPでトップになった後、さっきニースについたばかりで、これから競技がはじまるのだと自分に言い聞かせた。そして新しい気持ちでフリーに挑みました」
ロシアには、世界ジュニアを制した若手の女子たちが大勢控えている。
今季のGPシリーズで連勝して話題をさらった15歳のエリザベータ・トゥクタミシェワなどが、来季からはシニアの世界選手権に出場できる年齢になる。レオノワがロシア代表になれるのも今季が最後か、と囁かれていた。
だが今季の彼女はGPファイナルで初の銅メダル、そしてこのニースで2位になって底力を見せた。
「ロシアの若手に注目が集まっているのは知っています。でも私は、自分の演技をよりよくすることにだけ集中して、あまり報道などは気にしないようにしていました」
いずれも自分の力を信じ、マイペースを守って努力をしてきたベテラン3名が表彰台に揃ったニース。才能ある若手が出てくるのもエキサイティングだけれど、こういう世界選手権があってもいい。そう思わせてくれる大会だった。
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