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歌が人生に必要なものだと初めてわかった

本格的なジャズシンガーでありながら、ステージでは大阪弁でお笑いジョークを飛ばす綾戸智恵さん。外国で結婚をして離婚、シングルマザー、がんの闘病、40代でデビュー、長年にわたる壮絶な介護生活と、彼女の歌声には人生てんこもりの労苦が深みを与えている。
(取材・文/田中亜紀子 写真/小山昭人)

――2年ぶりのアルバム「PRAYER」。名前の通り、静かで力のあるアルバムで、今の日本にぴったりですね

私がアルバムを作る時は、歌いたい曲を選ぶだけなんです。今回もそうで、レコーディングを始めたら2月に腱鞘炎(けんしょうえん)になり作業が遅れ、3月に再開したら東日本大震災が起こった。私は阪神・淡路大震災も9・11のテロも現地で体験していますが、今回は規模が違う。これほどの地球的災害になってしまったらCDなど作っている場合ではない、やめようと思ったんです。

でも、人間は偉いもので、食べるだけじゃだめなんですね。被災者の方も最初は食べ物の確保が第一でも、徐々にそれ以外の物が必要になってくる。長く音楽活動をしていますが、こういう時こそ音楽が生きる力になると初めてわかった。それまでは、音楽の仕事はぜいたく品で、八百屋さんやお米屋さんに比べて下だと思っていた。でも、今回は皆さんに、音楽は人が生きるために大切なものだと教えてもらいました。

――震災後にレコーディングを再開。ご自身に変化はありましたか

ありましたね。再開した時には、ラブソングでも他の曲でも、1曲歌うごとに皆が元気になってほしいとの思いが自然にこもっていったんです。これは歌い手にとってはえらいこと。時代の流れや自然の力に音楽も逆らえないということですね。

できた作品は「PRAYER」とつけたタイトルにものすごくふさわしい内容になっていました。復興への思いで日本が一つになっている今、皆さん被災地のためにできることをやっているじゃないですか。被災者は助けてもらうべきだし、そうでない人は自分ができることを精いっぱいやるべき。私は皆さんに音楽を届けることが慰問であり、生き残った自分の役割だと思っています。

(写真)綾戸智恵さんプロフィール

1957年大阪生まれ。3歳でクラシックピアノを始め、10代からクラブで演奏。17歳で単身渡米し、91年に帰国。神戸や大阪のジャズクラブなどで活動。98年、40歳の時に「For All We Know」でデビュー。2000年度の芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。03年「NHK紅白歌合戦」に出場。大阪弁によるお笑い芸人顔負けの爆笑トークを交えてのステージは圧巻。ジャズ、ポップス、Jポップなど幅広いジャンルの曲を英語で熱唱するステージは、ジャズの枠を超えて多くのファンをひきつけている。

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