牧太郎の大きな声では言えないが…

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牧太郎の大きな声では言えないが…:冷酒、もう一本!

 前回に引き続き、東京・新橋の居酒屋。3月末に“完全リタイア”する高級官僚の友人は酔いが回った様子だ。

 「新聞が悪い! いつもだまされているんだ。AIJ投資顧問の事件。企業年金2000億円の大半が消えた事件。新聞は知らなかったのか?」

 「お前は知っていたのか?」

 「薄々は聞いていたが……新聞が知らなかったのは許すけど……よくまあ『政府・民主党は年金基金に資産運用の専門家を置くよう義務付ける方向で検討を始めた』なんて書けるよな? これまで専門家でなかった? そんなばかげたことが通用するか? なのに、まるで政府・民主党が被害者のように書く新聞なんて……」

 「政府の責任?」

 「当然! 悪の二人三脚だ!」

 「いやに威勢が良いな」

 「役人生活におサラバするんだ……何でも言う、 冷酒、そうそう八海山、もう一本!」

 「ゆっくりやろう。まだ、7時半だ」

 「新聞はだまされている。消費増税大綱が発表された直後にAIJ事件が発覚した。国民に『年金は危ない!』と思わせる魂胆だ」

 「タイミングは怪しいけど……事実を報道するのが我々の仕事だから」

 「それなら、聞く! 新聞は消費税アップに賛成なの?」

 「お前さんは、どうなんだ? 45年間も血税でメシを食ってきたお役人さまは、どう、お考えですか?(笑い)」

 「俺は反対だ! 前回の消費税アップの翌年、1998年、自殺者が前年の2万4391人から3万2863人に増えた。それからずっと3万人台だ。貧乏自殺だ!」

 「いやに詳しいな。専門家?」

 「2000年の倒産企業の負債総額は23兆円を超えた。増税は消費低迷→業績悪化→リストラ→倒産多発→消費低迷のスパイラルの繰り返しさ」

 「その通り! でもお前さんが反対だとは思わなかった」

 「役人は、つい自分だけ良ければいいと思うようになるんだ……でも、冷静になれば、日本人が貧乏になって喜ぶ役人なんて居ないよ。格差は広がる。10%の豊かな人が堂々と消費するが、90%は何も買えなくなる(笑い)」

 「10%が富裕層!の中国と同じか?」

 「バカ言うな。中国の10%は1億3000万人だぜ。経済力が違いすぎる」

 「……増税になると飲めなくなるのか? ……冷酒、もう1本!」(専門編集委員)

毎日新聞 2012年4月3日 東京夕刊

 

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