【ソウル西脇真一】釜山(韓国南部)の古里(コリ)原子力発電所1号機で定期点検中に発生した外部電源喪失事故で、同原発を運転する企業「韓国水力原子力」に対する批判が高まっている。政府への報告は2月9日の発生から1カ月以上経過した今月12日で、組織的隠蔽(いんぺい)があったとの見方が強まっている。
原子力安全委員会は16日、事故発生直後に発電所長(当時)は事故を認知していたと発表した。安全委は報告を受け、12日から運転を中断させ現地調査中。安全委によると事故当時、稼働しなかった非常用ディーゼル発電機は復旧したとされ、今月3日に点検を終了し、運転に入った。
しかし、15日に安全委が発電機を試験したところ2機のうち1機がバルブ不良で動かなかった。原発稼働には規定で2機とも正常でなければならず、安全委にとっては二重の衝撃だ。韓国メディアは、安全委のチェックの甘さも指摘している。
事故は2月9日夜、発電機関連の試験中に発生。外部電源の供給がなく、非常用ディーゼル発電機も作動しない状態が12分続いた。運転停止中でも、原子炉や使用済み核燃料は冷却が必要だった。
16日付の韓国紙、中央日報によると、安全委の聴取を受けた発電所長(当時)が「自分が(報告しないよう)決めた」と語った。
同紙は韓国水力原子力の関係者の話として、事故直後、現場幹部で協議したが、事故発生の影響を懸念する声があがり、報告されなかった模様だと報じた。安全委からの派遣駐在官らに知られぬよう、運転日誌にも記載されなかった。
一方、朝鮮日報によると釜山市議の一人が先月下旬、飲食店で事故の話を聞きつけ、今月上旬に原発側に確認を要求したが、回答はなく、13日に突然、安全委が発表したという。
古里原発1号機は韓国初の商用原発で78年に運転開始。07年に30年の設計寿命を迎えたが、政府は08年に10年間の運転延長を認めた。
毎日新聞 2012年3月18日 東京朝刊
「メディア・プロダクション・スタディーズ」の研究を始めた五嶋正治准教授に聞く。