電気新聞 ENERGY & ELECTRICITY The Denki Shimbun

  • ホーム
  • ニュース
  • 出版物
  • イベント
  • 広告・特集
  • 電気新聞について
  • トップ
  • 主要ニュース
  • 電力・エネルギー
  • 産業・技術
  • 工事・保安
  • 地域
  • フォト
  • スペシャル
  • エネルギー業界プレスリリース

News - スペシャル

紙面から(3月2日)/福島第一冷温停止への道 第1回

練りに練った施工法で安全期す

2012/03/30

原子炉建屋カバーの方向性が定まってからも、印藤は施工法を練りに練った。 「もし現地でうまくいかないようなことがあれば、日本の技術の恥になる」 (印藤) 。 その一念が印藤を突き動かした。 アイデアを書き連ねた約100ページのノートは3冊に達した。

画期的なアイデアがぎっしり書き込まれた印藤氏のノート

■ 設計で省人化実現

現場ではJV (共同企業体) の所長が自ら高線量下の中を走り、写真を撮影。 それによって、現場の状況も次第に分かっていった。 最初にカバーをつけるプラントは、原子炉建屋のサイズが約41メートル四方で最も小さい1号機とすることを決めた。

検討の過程で、カバーは何度もその姿を変えている。 初期段階での壁は膜シートのみで計画していたが、風で大きく煽られることが分かり、パネルに膜材を貼る膜パネルに変更するとともに、タービン建屋上にカバー基礎を設置するものは、強度やクレーン能力の問題などから消えていった。 安全性に万全を期すため 「2日に1回は計画を練り直していた」 (木ノ下)。

検討の末、印藤は建設に必要な部材を62ピースまで絞った。 通常の工法では、40メートルを超える建造物には200ピース以上の部材が必要になり、それをつなぐボルトは2万本に達する。 印藤の設計したカバーは部材が少ない上、ボルトを必要としない画期的なものだった。

設計が済んだものから発注する方式をとり、5月の連休明けには発注開始にこぎつけた。 「通常だと1年かかる工程を何とか4カ月でやろうと段取りした」 (印藤) 。 部材の製造は工程を大幅に短縮するため、全国7カ所の工場で行った。

■ 施工前の障害も

施工の前段階にもすべきことが山積していた。 その1つが機材を運び込むための周辺の整地だ。 カバーを造るには爆発で飛び散ったがれきを撤去するとともに、地下に通る配管などをつぶさないようにしなければならない。

クレーンの重量は1平方メートル当たり30トンで、乗用車約15台分に相当する。 印藤らはクレーンの重みによる設備の損傷を防ぐため、砕石敷きと鉄板敷きを計画。 原子炉建屋周囲に1メートルの砕石敷きと4センチメートルの鉄板を3枚重ねで敷き詰めた。

敷地には原子炉注水用のホースなどがあるため、敷設作業は注水プロジェクトとの調整も不可避だった。 木ノ下は 「ホースの移設や注水の一時停止など他プロジェクトの協力なしではできなかった」 と振り返る。

鉄板敷きが地面に積もった放射性物質の放射線を遮り、空間線量を大幅に下げるという思わぬ効用も生んだ。 これによりクレーンのオペレーターを最少の1台あたり3人に抑えることができた。 「チームワークのためにもオペレーターはできれば代わらない方がいい。鉄板敷きの効果は大きかった」 (印藤) 。

原子炉建屋から突き出た破片の撤去も進めた。 1号機では1面に20カ所ほどの破片が突き出しており、カバーを設置するにはこれを切断・除去する必要があった。

印藤たちは巨大なカニのつめに似た機材を手配し、およそ1.5カ月で破片を刈り取った。 また鉄骨柱の建つ既存建屋の上のがれきも遠隔操作の重機を使用して精度が確保できるよう丁寧に取り去った。

■ 仮組みスタート

6月からは小名浜港で部材の仮組みが始まっていた。 現地での100%成功のための 「嵌合 (かんごう) 」 の確認だ。 初めての作業に最初はスタッフも作業員も戸惑ったが、毎日の改善の繰り返しで 「訓練」 が進み、自信とチームワークが生まれていった。 部材はその後、順次搬入され、8月10日に鉄骨の組み立て工事が始まった。

紙面から(3月2日)/福島第一冷温停止への道 第1回

電気新聞購読のご案内

詳細
今ならキャンペーン実施中!

購読開始月 無料キャンペーン

お申し込み者全員に
図書カード進呈

有料データベース

詳細

e-ClipNews、新聞オンライン(デジタル新聞)、記事検索はこちらから

ご利用方法・料金などについては各サービスのウェブサイトをご覧ください

ページのトップへ

  • English
  • サイトマップ
  • お問い合わせ

電気新聞購読のご案内



おすすめ出版物

一覧

  • エネルギー環境教育情報が満載!エネルギー教育.ねっと
  • 電気新聞から初の電子書籍
  • 電気新聞WEBラジオ 「クロストークエネルギー」
  • 社団法人日本電気協会