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新検査 “基準超え食品なし”
4月2日 23時4分

食品に含まれる放射性セシウムの基準が、2日から1キログラム当たり100ベクレルなどと大幅に厳しくなりました。
各地の自治体では、新たな基準を基に検査が行われましたが、2日は基準を超えた食品はなかったということです。

新基準での検査が本格的に

食品に含まれる放射性セシウムは、1日から新たな基準値が適用され、野菜や米などの「一般食品」は1キログラム当たり100ベクレル、粉ミルクなどの「乳児用食品」と「牛乳」は50ベクレル、「飲料水」は10ベクレルと、これまでの暫定基準値の4分の1から20分の1に厳しくなりました。
厚生労働省は、全国の自治体のうち、福島や茨城など17の都と県に対して実施計画をつくり、定期的に検査を行うよう求めているほか、それ以外の自治体も自主的に検査を行っています。
2日は、福島、千葉、新潟の3つの県で野菜や水産物など25検体について新たな基準で検査が行われましたが、基準を超えた食品はなかったということです。
各地の自治体が行う検査は、3日以降も、これまでに100ベクレルを超えたことがある食品を中心に進められ、半分の50ベクレルを超えた食品については、検出した市町村で3検体以上の検査が行われます。
そして、基準を超えた食品については、市場に流通しないよう出荷が自粛されたり、政府から出荷停止の指示が出されたりすることになります。

新基準で牛肉の検査

食品に含まれる放射性セシウムの基準が今月から大幅に厳しくなったことを受けて栃木県は、牛肉が新しい基準値を超えていないかどうか調べる検査を始めました。
去年、牛肉が一時、出荷停止となった栃木県では県内の食肉処理場で解体される牛の全頭検査を続けています。
牛肉の放射性セシウムの基準について国は市場の混乱を防ぐためとして経過措置を設けことし9月末までは1キログラム当たり500ベクレルという暫定基準値を適用するとしています。
しかし栃木県は、消費者の信頼を確保したいなどとして2日から1キログラム当たり100ベクレルという国の新しい基準値に変更し、これを超える牛肉があれば農家に出荷の自粛を求めることにしました。
宇都宮市にある食肉処理場では、農家から運び込まれた牛の枝肉から、検査用の肉が切り取られていました。
そして肉は市内にある県の家畜保健衛生所に運ばれ、担当者がこれまでよりも精度を上げた測定器で放射性セシウムの量を調べていました。
栃木県県央家畜保健衛生所の竹澤友紀子係長は「安全な肉だけが出荷されるよう、しっかり検査したい」と話していました。

検査態勢を強化の自治体も

NHKが全国の自治体にアンケート調査を行ったところ、21の都道府県が新しい基準の実施に合わせて検査装置を追加するなど検査態勢を強化していることが分かりました。
食品に含まれる放射性セシウムの基準の変更に合わせ、NHKは先月末、全国の都道府県に食品の検査態勢ついてアンケート調査を行いました。
その結果、定期的に検査を実施するとしたのは九州地方と中国地方などの一部を除く33の都道府県で、半分以上に当たる21の自治体が新しい基準の実施に合わせて検査装置を追加したり専門の部署を設けたりして検査態勢を強化していることが分かりました。
このうち、検査装置を追加するのは20の都道府県で、神奈川県と北海道はそれぞれ6台の装置を新たに配備するとしています。
また、専門の部署を設けたり職員を増員したりするところは5つの県で、群馬県は農業技術センターに検査係を設け6人の職員を専属で検査に当たらせることにしています。
基準が厳しくなったため、測定にかかる時間が長くなって十分な数の検査が難しくなるおそれがあると指摘されていますが、すべての自治体が新基準に対応できる態勢を取ったとしています。
一方、国が農産物などの検査を求めている東北や関東などの17の都県のうち11の自治体では地域の特産品など国が対象として示したもの以外も追加で検査すると回答しました。
このうち栃木県は、これまでに放射性物質が検出されていない農産物でも販売を目的にしている場合は、市町村ごとに出荷前の検査を行うとしています。
しかし、一部の自治体からは同じ時期に大量に検査しなければならないコメや麦については、検査の一部を国が実施すべきだという意見が出ていました。

専門家“さらに効果的な方法を考えていくべき”

食品に含まれる放射性セシウムの基準値の変更について、放射線が人体に及ぼす影響に詳しい大分県立看護科学大学の甲斐倫明教授は「暫定基準値は一般食品で1キログラム当たり500ベクレルとなっていたが、農産物などから実際に検出される濃度は、ほとんどの場合、これよりもかなり低くなっている。500ベクレルという基準を続けても大きな影響はないが、社会的には、あたかも500ベクレルのものが流通しているように受け取られてしまう。基準を厳しくすることで食品の流通がきちんと管理されていることを示し、安心感を持ってもらうことがねらいだと言える」と話しています。
一方で、「すべての食品を検査することは不可能だ。最新の研究を参考にしながら、汚染レベルが高い地域のものを重点的に調べるなど、より効果的な方法を考えていくことが大切だ」と指摘しています。
さらに行政が果たすべき役割として、「新しい基準を決めた背景や検査の内容、結果などを消費者に分かりやすく伝えるとともに、農作物が放射性物質の吸収を抑えるよう、農地を改良するなど生産者を支援していくことが必要だ」と話していました。

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