人生設計できる指針を示してこそ
知りたいのは帰還時期だ
公明新聞:2012年2月3日付
除染工程表
「知りたいのは帰郷できるのかどうか。これでは判断に迷うばかりだ」。東京電力福島第1原発事故に伴い、環境省が示した福島県内の「除染工程表」に対し、避難を強いられている住民や自治体関係者から不満が噴出している。
住民が最も知りたがっている肝心要の帰還時期が示されず、最終的に放射線量をどこまで引き下げるのかという目標値や具体的な除染実施計画も不明なためだ。政府は地元自治体や住民の声にもっと耳を傾け、より包括的で詳細な計画を示すべきである。
福島第1原発周辺の11市町村について、国は現在、「警戒区域」と「計画的避難区域」に分けている。昨年12月、政府はこれを3つの区域に再編する方針を突然示し、地元自治体を驚かせた。事前の相談が一切なかったばかりでなく、線引きによっては地域が分断されかねないからだ。
工程表は、この新区域案に沿ってつくられた。「住民不在」「地元無視」の代物であることが、この経緯からも読み取れる。
3区域は、年間被ばく線量が20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」、20~50ミリシーベルトの「居住制限区域」、50ミリシーベルト超の「帰還困難区域」に分けられる。
このうち、解除準備区域については、当面10ミリシーベルト未満の除染をめざし、役所や学校などから優先的に除染する。完了時期は2014年3月末。当面20ミリシーベルト以下をめざす居住制限区域も、14年3月までに作業を終えるとしている。
一方、帰還困難区域については、「モデル事業を実施する」という漠然とした計画が示されただけで、実質的には作業見送りとなった。
同区域に指定される可能性が高い地域の住民からは、既に帰郷を断念する声が出始めている。これらの人と地域を切り捨てるようなことは、断じてあってはならない。
除染を進めるためには、汚染土などの仮置き場の確保や中間貯蔵施設の設置、作業員の確保と健康管理などさまざまな困難を克服する必要がある。その先には、住民帰還に不可欠な交通網の整備や学校、病院、商業施設などの再開といった課題も待つ。
住民が求めているのは、これら諸課題への対応や生活再建策を網羅した総合的な帰還計画であり、「今後の人生設計や地域再生の見通しが立てられる」(参院代表質問で公明党の山口那津男代表)骨太の指針だ。
機械的に区域の線引きを示すだけでは、住民の不安は増すばかりである。
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