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【日本よ】石原慎太郎 天皇陛下の勇気
しかしやはり被災者の多くは他出していて陛下のお見舞いは予定より早く終わってしまい、警護の都合もあって予定の出発時まで控え室で過ごされることになってその間私は同席し、発災後間もなくヘリで飛んで視察に赴いた福島、宮城、岩手の各都市の惨状を報告し、すでにかつて他の病での手術を受けておられる陛下にはとても無理としても、若く元気なご子息の両殿下を名代として出来るだけ早く現地の見舞いに差し向けられてはいかがと僭越(せんえつ)にも建言させていただいた。
その間皇后陛下は一々頷いて私の言葉を聞いておられたが、陛下はなぜかただ黙ったまま表情も見せずに聞いておられた。
やがて時が来てお立ちとなり、先行して部屋を出てお見送りのために玄関口に立っていた私の所へ何故か突然陛下がつかつかと歩み寄られ、小声で、しかしはっきりと、「東北へは私が自分でいきます」といわれたものだった。
私は唖然(あぜん)たる思いでそれを聞き取り、立ち去られる陛下を見送っていた。
◇
私のような健康体の人間にとっても被災三県へのヘリでの飛行はかなりこたえるものだったが、すでに手術を受けられているお体にとって、ましてそのお人柄からして東京でと同じように被災者に一人一人身をかがめて声をかけられるだろう作業は並大抵のものではあるまい。
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