公明党トップ / ニュース / 放射線不安、暑さに悩む

放射線不安、暑さに悩む

公明新聞:2011年6月16日付

長袖やマスクを付けて登校する児童が少なくない長袖やマスクを付けて登校する児童が少なくない=10日朝7時半ごろ 福島市

長袖にマスク姿、閉め切られた窓
「授業に集中できない!」

東日本大震災から3カ月がたち、季節は夏へと移り変わりつつある。そうした中、被災地では新たな課題が浮上している。震災で日常生活が一変して初めて迎える夏を前に、思い思いの悩みを抱える住民の今を現地ルポする。初回は、東京電力福島第1原発事故の影響で、放射能汚染の対応に悪戦苦闘する福島市内の小学校を取材した。

学校生活

「おはよう!」。10日午前7時半ごろ、福島市内のある小学校の正門前では、児童と教員があいさつを交わしていた。例年であれば衣替えの時期だが、マスクや長袖姿の児童が少なくない。「暑いのに、なぜマスクを付けるかって? 放射能汚染の対策ですよ」。そう言って保護者の一人が解説してくれた。

福島県の中通りと会津地方は、周囲を山で囲まれた盆地であるため、夏場は35度を超える猛暑日が続くこともある。事実、10日の福島市の最高気温は、30度の真夏日だった。「暑いなあ……」。口の辺りが蒸したのか、装着したマスクをいじりながら、集団登校中の長袖姿の男子児童は、そうつぶやいていた。

同日の午後2時、市立福島第3小学校では5時限目の授業が始まっていた。科目は算数。「この円の半径、分かる人は?」「ハイ!」。元気な声とともに何人かの児童の手が挙がった。教室の両脇では、2台の扇風機が勢いよく回っていた。教室の暑さ対策として、PTAが5月28日に学校側に寄贈したものだった。窓はほぼ閉まっている状態だ。

同校の渋谷朗校長は「休み時間以外、窓はほとんど開けない。扇風機は本当に助かっています」と語っている。

福島市は5月下旬から、第一弾として放射線量が比較的高かった26の小中学校などを対象に、校庭の表土除去や校舎の除染作業を行ってきた。作業期間は施設の規模によって異なるが、「放射線量が基準値を下回っていても、子どもの安全と保護者の安心のため、丁寧かつ慎重に作業しているから、2週間かかる学校もある」(市学校教育課)という。校庭の表土作業中は砂じんが舞うこともあり、放射性物質が教室内に入るのを防ぐため、教室の窓は閉め切っている。

教室の暑さ対策として設置された扇風機そして、学校生活に悪影響が出始めた。市学校教育課の菅野善昌課長は「最大の難題は、やはり教室の暑さ。あまりの暑さに、教室内に氷柱を置いた学校さえある」と語る。保護者からも「授業中、暑さでのぼせて鼻血を出した子どもがいる」「子どもが授業に集中できない」などの声が出ており、教室の暑さ対策は待ったなしの課題だ。

福島市では、風の強い日は窓を閉めるように指導しているため「暑い中での学習環境を考慮する目的」(同課)で、7月21日から8月24日まで予定していた夏休みを8月31日まで1週間延長した。8月分の授業時間は冬休みを短縮して対応するという。

また、市内73の小中学校と特別支援学校を対象に、ようやく1教室当たり4台の扇風機を配備することになった。市では7月中を目安に設置する方針だが、小学6年生の男子児童の父親(52)は「時間とお金を掛けても、教室内にエアコンを設置できないのか!」と訴えていた。

屋外活動の制限相次ぐ
教員側 子どものストレス緩和へ努力


渋谷校長から屋外プールの現状について説明を受ける公明党福島市議団のメンバーら一方、放射能汚染の不安から運動会を延期・中止するなど、子どもの屋外活動が大きく制限されている。

福島市立福島第3小学校のプールは、現在も緑色に濁った水をたたえている。放射能汚染の懸念が指摘される中、市では小中学校の屋外プールの使用を見送り、市内外のスポーツ施設の屋内プールを交代で使うことにした。

このため、プールの授業は今夏、たった1回に限られる。小学6年生の女子児童の母親(45)は「1回と知っていても、『プールに入れる』と聞いた娘は本当にうれしそうでしたよ」と悔しい思いを語っていた。

屋外活動を制限された子どものストレスを緩和しようと、学校側も対策に乗り出している。同校では、屋内でも児童が遊べるよう、普段は禁止している学校内へのトランプなどゲームの持ち込みを認め始めた。

教員側も、手づくりの百人一首を制作するなど、児童が学校生活を楽しく送れる努力を重ねている。渋谷校長は「表土除去で中庭の人工芝まで無くなったが、保護者と教員が協力して学校が良くなるよう知恵を出していきたい」と語る。

公明推進、子どもに線量計配布


福島市は13日、公明党福島市議団が子どもの被ばくを低減化させるため要望してきた、積算放射線量を把握できるバッジ式線量計を市内の児童・生徒計3万4000人に配布する方針を決めた。党市議団は今後、通学路などの放射能除染や、エアコン設置など教室の暑さ対策の充実を求めていく方針だ。

週間人気ランキング
(集計期間:3月26日~4月1日)

  1. 1位

    民団の呉団長(中央右)らの表敬を受ける山口代表(同左)ら=15日 党本部

    民団の新出発を祝福(2012年3月16日付)
    山口代表ら応対 呉団長、金議長らが来党
  2. 2位

    古屋範子 衆院議員

    意義ある「児童手当」復活(2012年3月26日付)
    古屋範子衆院議員に聞く
    安定、恒久的な制度へ
    2年余の迷走 民主党政権の責任重い
  3. 3位

    記者会見で見解を述べる井上幹事長=30日 国会内

    理解得られぬ増税法案(2012年3月31日付)
    閣議決定で井上幹事長が批判
    全体像示さず増税先行
    景気への配慮が不明確
    低所得者対策も不十分
  4. 4位

    公明パンフ

    「公明パンフ」で大いに語ろう!(2012年3月4日付)
    友好対話の“決定版”が完成
  5. 5位
    子ども手当は完全崩壊(2012年3月31日付)
    迷走続けた民主党政権 ようやく恒久的な制度に

過去のニュースをお探しの方は、「キーワード」もしくは「日付」でお探しください。

キーワードで探す

日付で探す

公明新聞のお申し込み

日本の未来、世界の明日が見えてくる
公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

最新のニュース

2012年4月2日付

日本の未来、世界の明日が見えてくる

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

新聞の定期購読