ワンセグよりも高い解像度を持ち、通常のテレビ放送と同じく番組表に従って進行するリアルタイム放送となっているNOTTV。通信ネットワークと違って放送波なので、多くの人が集中してもパンクしないという特徴を持つ。ツイッターと連動した双方向性のある番組やスマホのアプリ紹介番組などのオリジナル番組がある一方、Jリーグやプロレス、競馬などのスポーツ番組や、海外ドラマやアニメ、音楽番組、お笑いのライブなどもあり、コンテンツはバラエティに富む。
しかし、番組内容の充実や華々しいCMキャンペーンとは裏腹に、前途は多難だ。開局時の対応端末は「AQUOS PHONE SH-06D」と、タブレットの「MEDIAS TAB N-06D」のみ。「AQUOS PHONE SH-06D」は3月23日発売で、3月19日〜25日の週販ランキングではNTTドコモの端末だけに絞ってみても10位にすら入っておらず、人気機種とは言い難い。予定では2012年度上期でモバキャス対応端末がスマートフォン3機種、タブレット2機種になるというが、対応端末の少なさは致命的だ。また、現段階ではサービスエリアも関東、東海、関西、福岡、沖縄と限られている。
NOTTVを運営する株式会社mmbiの二木治成社長は「3〜4年後の単年度黒字化を目指す」と語っており、いきなり結果を求めるには、まだ早い段階なのかもしれない。だが、mmbiがドコモの子会社である以上、他キャリアから対応機種が出ることはまずないだろうし、ソニーエリクソンやサムスンなどの海外メーカーも対応端末を積極的に出すとは考えづらい。二木社長は、iモードが月額315円で5000万人の加入者がいることを比較対象に挙げ、「数百万人から1000万人の加入者なら可能」と語るが、むしろ比較すべきは携帯用動画配信サービスの「BeeTV」だろう。こちらは2011年時点での利用者は181万人に留まっている。内容の是非はともかく、ドコモ限定であることが足かせになっていることは言うまでもないだろう。
ゲームや動画がいつでも楽しめるスマートフォンに、時間が縛られるリアルタイム放送のサービスで勝負をかけるというのは、やはり少々無理がある。録画も一部の番組のみ可能で、スクリーンキャプチャーすら撮れない、という日本のデジタルコンテンツらしい異常なまでの閉鎖性のNOTTV。気が付けば目先の利益優先でアダルトコンテンツばかり……なんて事態にならないことを祈るばかりだ。(岡嶋佑介)