【コラム】在日韓国人、第4の選択

 在日韓国人にとって第3の選択は北朝鮮だった。1959年から1984まで続いた北送事業(北朝鮮帰国事業)で「地上の楽園」に渡った人は9万3340人に達する。大きな夢を抱いて北に渡ったが、成功した人は皆無だ。李明博大統領や辛格浩会長のような有名人もいない。金正日(キム・ジョンイル)総書記の愛人で、後継者の金正恩(キム・ジョンウン)氏の母、高英姫(コ・ヨンヒ)氏が知られるのみだ。多くの追従者を引き連れ、帰国船に乗り込んだ声楽家、金永吉(キム・ヨンギル)氏(日本名・永田絃次郎)は、北朝鮮に渡って7年後に消息が分からなくなった。北朝鮮がそんな彼らのために作ったのが「耀徳収容所」だった。彼らは韓国人の生来の才能を発揮できずに、祖国の悲劇の中に消え去った。

 第4の選択は、グレーゾーンに紛れ込むことだった。韓国を嫌い、首領様を尊敬していたが、北朝鮮行きの末路を兄弟、親戚から聞いた人たちが選んだ道だ。今でもこれまで「朝鮮籍」を維持してきた多くの人が韓国籍に変更している。当局は現在、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)系に属するが韓国籍を持つ人は5万人程度と推定している。もちろん考えを変えた人も多いはずだ。しかし、北朝鮮を称える代わりに、韓国を批判することでアイデンティティーを維持する人も多い。彼らは日本に住み、韓国の旅券で海外旅行を楽しみ、在外参政権で韓国の政治に介入し始めた。

 韓国は在日韓国人に負い目があるという。しかし、少なくとも第4の選択はその対象には当たらない。歴史も理念も良心も見られない便宜上の選択だからだ。一部には彼らが二つの祖国から捨てられ、虐げられた立場にあるとの認識もある。しかし、彼らが虐げられた立場だったとすれば、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で(韓国系の)民団に浸透し、組織を掌握することはできなかったはずだ。今月の韓国総選挙では動きが見られないものの、彼らが組織的影響力を示すことのできる12月の大統領選で本性を表すこともあり得る。転向の形跡が見られない「主体(チュチェ)思想派」(主思派)出身者が今回の総選挙で国会入りを目指しているのも、韓国の選挙に親北朝鮮勢力が介入する一連の流れと無関係ではない。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)社会部次長
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) 2011 The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
関連ニュース