2011年10月16日 (日)「スティーブ・ジョブズさんは"徹底的に考え抜いた"」前刀禎明さん
前刀禎明さんインタビュー
「スティーブ・ジョブズさんは"徹底的に考え抜いた"」
前刀禎明(さきとう・よしあき)さん,2004年アップル本社マーケティング・バイスプレジデント(VP/副社長))兼 日本法人代表取締役就任,06年退社
現在は株式会社リアルディア代表取締役社長,ngi group株式会社代表執行役会長
10月12日の放送「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズの素顔」では、2004年から06年までジョブズさんとともに仕事をした前刀禎明さんにインタビュー取材をさせていただきました。ジョブズさんの人物像に迫るあまりにも貴重なインタビューのため、放送で紹介できなかった部分も含めて、前刀さんの許可を得て特別に掲載させていただきます。
ジョブズさんとの出会いは緊張感があった
もともとアップルの大ファンになったのは、もう今から、約20年ぐらい前ですかね。Macintosh SEを自分で買ったときで、当時は、60万円ぐらいしたのですけれども、非常に、高価なもので、非常にかわいらしいデザインで、使い勝手もよかったということで、その時以来すっかりアップルのとりこになって、ずっとアップルファンでいて、応援してきていたと。それで私が前職の後に、たまたまヘッドハンターのほうから、アップルで仕事しないかという話を貰ったときに、日本においてアップルというのは全く、iPodも全く売れていませんでしたし、Macintoshもちょっと勢いがなかったし。ちょうど銀座のアップルストアはオープンしたところだったのですけれども、今ひとつ、ぱっとしないような状態があって。なんとか、日本におけるアップルを復活させるということをお手伝いできたらな、ということで、最終的に、現在CEOになりましたティム・クック、その他エグゼクティブの方々から、インタビュー面接を受けて、最終面接がスティーブ・ジョブズということで、ついにあこがれのスティーブ・ジョブズと会うことになったわけですけれども。そこで、先にアメリカのほうで発表になっていましたけれども、iPod mini、これを使って日本でアップルブランドを絶対復活させようということで、いろいろな提案をしました。その面接のときはスティーブ・ジョブズと始めて出会って、初めて話したときでしたね。今でもそのときの記憶というのは、もう鮮烈に残っていますね。十分に自分なりに準備をしていって、無駄なこと話したら絶対だめだなってわかっていましたし、非常に端的に「日本でどうしたらいいと思うのだ?」と言うので、もう絶対にiPod miniで、ファッション戦略を展開して、日本でブランドを再復活させるのだということですね、復活させようという気持ちで提案をして、非常に彼は納得してくれましたね。ジョブズさんの印象は、本当に明確なビジョンがあって、迷いがなくて、そしてズバッと質問してくるタイプ、鋭い人間だなっていう感じはしましたね。ピーンと張りつめた感があって、なごんだ感じではなかったですね。もちろん面接ということもありますけれども、でもそれがまた気持ちいい緊張感で、非常に好印象でしたね。
ジョブズさんは 妥協せずに 楽しいライフスタイルを追求し続けた
スティーブが仕事する上で最も大事にしていたことは、もう絶対に最高のものを常に提供したいということで、絶対に妥協しないということですね。そのためにはすべての力を使って、それを追求して、実現させるということですね。その働き方、継続的にイノベーションを行うと、決して現状に満足をしない。次へ次へということで先を見ながら仕事をしていくというところですね。言葉でいうのは簡単だけど、なかなかそれはできませんよね。言葉で、継続的にイノベーションだとか、チャレンジだとか言っても、かなり強い意志と、精神力がなければ実現できないことだと思いますけれども。彼は天才といわれるゆえんで、そういうものを持ち得ていたということですね。そしてまたそれを支えるまわりの幹部、そして社員が、彼のことを信じて、それをサポートしていったということだと思います。間近で見ていてもすごいですね。本当に迷いがないですし。まわりの人間の彼への信頼も絶大なものでしたから。とにかくみんなで決めたところへ向かって一直線に向かっていくという形でしたね。そういう姿勢を続けていられたのは、彼はデジタルというものを使って、人々の生活を豊かに、楽しくすることを実現しようということで、そのための手段として、いろいろなものを発表して、世に送り出してきたということで、あくなき追求があったからということですね。ですからおそらくまだまだ、彼のやりたかったことはたくさんあったと思うのですよ。もっとできることは、彼ができることはたくさんあったと思うのですけれども、やりきれなかったところもあるのかなっていう、ちょっと残念だなってところがありますよね。本人が一番悔しがっているかもしれませんね。商品だけじゃないですね、製品の機能とかそういうことではなくて、機能というよりは、製品そのものが生み出す人々への本質的な価値ですね。その価値提供ということで、もうどんな広がりがあるかっていうことは、彼の頭のなかで大きく夢があってそれを実現しようとしていたということだと思います。結局、メ-カ-というのはどうしても技術が開発されると、その技術をすべて詰め込もうと、例えば機能であるならば多機能のほうがいいとか、どうしても機能優先になってしまいがちだと。ただ使う側にとっては必要のない機能というものもありますしね。あくまでも手段、ツールとして使って、どんなことが得られるのか、どんな楽しみが得られるのか、どんなことが便利になるのか、どんなことで心が満たされるのかということ、そこをスティーブは常々考えていたということですね。
集中力で最高のパフォーマンスを見せる発表会
製品を世に送り出していくときに、単に機能発表のような新製品発表会というのはないですね。彼の場合は、キーノート、つまり基調講演というもので人々がそれを使うとどんなに楽しくなるのだ、どんなに幸せになるのだっていうことを想像させるような、わくわくさせるような、そういう発表の仕方で世の中に送り出しているということですから。それは製品にとどまることなく、人々の感動を大きく呼び起こす新製品を送り出すということでしたね。本当につくりたかったものというのは、やはり人々の笑顔であったりとか、夢であったりとか、多くのひとにアップルの製品を使って、持ってもらいたいということだったと思います。あくまでも製品はツールだと思います。そう考えると、彼がやってきたこと、いろいろなことがつながってくると思うのですね。アップルを表面的な見方をすると、確かにデザインも素晴らしいですし、製品やプロダクトにフォーカスされがちですけれども、よく考えてみると、それによってどうしてあれほどシンプルなものができるのかと考えていくと、実はそれによってどんなことが実現できるのかということが、もっと重要だってことが見えてくるのですね。ですから、やはり単なる工業製品、単なるメ-カ-ではないということですね。デジタルというものを使ってデジタルなライフスタイルを実現させるべく、いろいろなものを世に送り出していたと言っていいと思います。毎年、一番大きな発表が、1月のマックワールド・サンフランシスコだったのですね。前年の10月に、私は本社に行ってスティーブとのミーティングに参加していたのですけれども。10月の段階で「もう今後、発表があるまでスティーブに難しいことを相談しちゃいけない」と言われましたね。なんでだ?と聞いたら「彼はもう集中するから」と。その集中ぶりはすごかったですね。もうほかのものは一切目に入らないといいますか、ずっと考えている感じですから、邪魔はしないでおこうというような状態ですね。雰囲気はさほど変わるということではなくて、いつも彼はいろいろなことを考えて集中していますから、見るからに顔が引きつるとか、そういうことはないのです。ただ、とにかくそこを考えているのだなっていうのは伝わってきましたね。ですから常に考えている姿勢が、非常に好印象、好ましいなと。本来、経営者として、世に送り出す人間としてそうあるべきだなと。そこまで思い入れのあるものを出していく。そこまで考えて、みなさんに伝えていくということで、社内に、いい緊張感を漂わせていくことになったのですね。スティーブの場合は完璧に全部覚えていて、ステージに立ったらいかに伝えるかということに集中していくということですね。人にものを伝えるというのはそういうことだと思います。最高のものを最高の形で送り出そうというスティーブの気持ちだと思うのです。
製品だけでなく、箱まで、こだわる
製品そのものもデザインとか作り方とかそういうところに対してのこだわりは強かったことは、みなさんよくご存じだと思いますけれども。例えば、製品のパッケージ、箱ですよね。パッケージのデザインなんか、ものすごいこだわり、箱を見ただけでわくわくするような、側面すべてのデザインに対して、上がってきたクリエイティブを事細かにチェックして、ここはこうすべきじゃないか、ああするべきじゃないかって注文を出して、納得いくまで、デザインを作り直させていましたね。箱のデザインが上がってくるじゃないですか、提案として社内のクリエイティブチームから。これをですね、すべての側面をくるくる回しながら見て「うーん、うーん」ってうなりながら見てですね、「うん、こっちのほうがいい」って言って、しかもすぐOK出ずに「ここをこういうふうにして、もっとこういうふうにしてくれ」とリクエストを細かく、出していくということですね。持って帰る姿を想定した上で。それを持ち歩くのがまた、かっこよく見えるような、持ち歩く姿を想定してデザインをさせていると。どこまでこだわるのだって話ですけど、そういうこだわりをしてでも、最高のものを作った以上は最高のパッケージで、それを使い始めるプロセスそのもの、その過程そのものも楽しませようというエンターテイメントの思想がそこにも入っていると。それを使う人をいかに楽しませるか、目に浮かぶようですよね、これを買って、うれしそうに持ち帰って、家に帰って、それをあけてまたうれしいっていうね。何重にもうれしさが重なっていくと、楽しさが重なっていくという演出ですよね。たとえばiMac G5っていう薄いものが出てきたわけですけれども、あれを箱のなかでどう表現するのだっていうことですよね。箱を持ったときに中に入っているものがわくわくするようなデザインでなくてはいけませんし、それがすごくイメージできるものになっていなければいけないですから。どの角度にどういうものを乗せるのだっていうもののこだわりがすごくありました。初代のiPod miniは、箱が一番象徴的だったと思うのですけれども、ボックスのスリーブっていうのですか、それを取って、中がポコッとわかれるのですけれども、片方には、「Designed by Apple in California」という、「アップルがカリフォルニアでデザインしたものだ」ってことをまず伝えて、ふたを開けるとiPod miniがあって、片方にマニュアルとか入っている側があるのですけど、そこをあけると「Enjoy」と、楽しんでねと書いてあるわけです。そのあけるプロセスですよね。その段階で人々を楽しませている。あけるほうも、とにかくわくわくしながら、開けていって、使い始めるということです。そこまで考えたパッケージってあんまりないですよね。箱はどうでもいいって感じで、箱の外にいろいろな機能とか細かいことを、デザインを無視して書いてあるパッケージが多いなか、箱そのものも非常にデザインされていると。アートのひとつだと言っていいと思うのです。全部見ているのですよ。そんな箱も、細かいところまで全部見ている経営者はいないですよね。そのすべてが、彼が実現したかったこと。最高のものを届けたい、最高の感動を与えたい、本当に喜んでほしいというために、とにかくあらゆる局面でベストを尽くしていたいということのあらわれだと思うのです。
ジョブズさん自身が「使う側」に立ち続けている
彼は感性、自分の感性を信じているのですね。常に、ユーザーの思考とか、ユーザーの目線というものではなくて、もっと彼自身がコンシューマー、使う側の立場になって、どういったものが出てきたら、どういったメッセージがあったら、自分は納得するのだろうか、自分はうれしいのだろうかということを徹底的に考えぬいて、その指示を出していると思いますね。たぶん彼は、彼自身が未来のコンシューマーといいますか、ひとが先々どんなものを欲するのかというのが見えているのでしょうね。彼の場合はそれを四六時中考えているようなタイプですから。1つのことをずっとつきつめて、おそらくアップルを創業して以来ずっと考えているのではないですか。特に1回追放されて戻ってからのスティーブというのは、そこから学んだこともありますから、かつての鼻持ちならぬ若造ではなくて、経営者としての自覚もあったでしょうし。そして新たに戻ってきたアップルを最高のものにしようと、最高の価値を提供しようということでずっと考えていたと思いますね。普通の経営者なんか絶対に、そもそも決めるっていうことができない人が多いっていうことと、自分の感覚を持ち得ていないですよね、本質的に何が大切かってこと、普通の人ってそこまで考えてないですから。スティーブほど、考えて、決定をしている、指示を出している経営者っていないですね。そもそもそこまで見ないですからね、普通の経営者は。自社広告がどんなものか、自社のCMがどんなものかなんて。たぶん「じゃあ任せたから君やっといてくれ」みたいな感じですよね。
お客様の期待を上回ることを追求する
彼はアップルストアをオープンするときにディズニーストアからも人をとっているのですね。ラルフローレンなどの素晴らしいサービスをしているお店からも人をとっていますけれども。ディズニーの場合、ゲストの期待を超えろと、「Exceed Expectations」っていう言葉があるのですけれども、まさにそのアプローチを、彼は実現しようとしていましたね。ですから、いわゆるコンシューマーとかお客様のニーズにこたえるってレベルではないのですよ。常に期待を大きく上回って、さらに満足してもらって、感動してもらうということですね。そこを徹底的に追求する。それが彼の姿勢であり、それがものづくりにもあらわれているということですね。妥協を許さない追求で最高のものを世に送り出していくと。それを一緒に送り出していって期待を超えるものを実現していこうというふうに僕は受け止めて、常に妥協をゆるさないアプローチというのを自分なりに考えていましたね。すべて彼がやっていることのすべてはそこにつながるのですよ。最高のものを送り出して、人々が幸せになり、豊になるものを実現させたい。そのためにあらゆることをやった。
ジョブズさんも アップル製品が好きで 楽しんでいた
ひとに愛されるものっていう意味では、当時、車のミニってありますよね、よくアップルっていう会社は、大きなベンツとかそういうものを作っている会社ではなくて、ミニとか、ポルシェとか、本当に、好きな人のためのものを作っているっていうことをすごく言っていましたよね。いまとなってはむしろ自分たちが巨人になっちゃいましたけど、当時まだチャレンジャーだったこともありますから。彼は、今度、こんなものが出てくるよってことを、限られた人のミーティングのなかで話するときに、めちゃめちゃ楽しそうなのですよ。「こんなのが、今度出すんだ、こんなことができるんだ、最高だ、素晴らしいだろ」みたいな。そこの喜びってすごいですよね。ですから彼自身がまず、送り出す本人が最高に満足して喜ぶ。それがそのまんま、それを出てきたときに、受け取るユーザーといいますか、コンシューマーが、そこで感動して喜ぶさま、そのものですよね。自慢げに話をしていました。うれしそうに、「こんなの出すんだ」って。彼自身は、プレッシャーは感じていないでしょうね、むしろ楽しんでいたと思いますよ。一手先っていう、一手とか、二手とかそういうことじゃなくてとにかく、何がいいのかってことをずっと考えているということですね。それが、時が来て、それが世に送り出されていくという感じだと思いますね。
人生は限られているから 自分のやりたいことをやれ
スタンフォード大学でのスピーチのときに「Stay Hungly. Stay Foolish」というのは有名な言葉ですけれども、それ以外に「人生は限られているから自分のやりたいことをやれと、ひとのために時間を使っている場合じゃないと、自分のやりたいことは自分の心に聞け」というメッセージを送っています。まさに彼自身が、夢を追い続けてそれを自分で体験して、あくなき追求している人間が、大病を患って、命っていいますか、自分の人生っていうものに対して、改めて考え直すときがあったと思うのですね。ですから、自分のやりたいことをやれ、ということをより多くの人たちに伝えたかったのかなって気がしますね。そういう、いわゆるちょっと重いようなことは、社内では言わないですね、社員に対してはそういう不安を与えないように、彼は気丈にふるまっていたと言っていいと思います。自分の人生っていうものを改めて見つめ直す。時間というものの大切さをあれほど充実して生きている人間ですらそういうことを思うわけですから。およそ世の中で時間を無駄にしてだらだら人生過ごしている人から見たら、もっと自分のことを考え直すべきなのではないのかなってなりますよね。スタンフォードの学生たちに、アップルのCEOってことよりも、スティーブ・ジョブズというひとりの人間として、伝えたかったことをあそこでしっかり述べたのだなってことで感動しました。ただ社内では「おれのために働け」って、思いっきり言っていましたけれどね。結局、アップルという会社においては、アップルの製品を世に送り出していく、いろいろなサービスを展開することで世の中の多くの人たちにメッセージを発信していたと言っていいと思うのですね。その彼が病気をして、やはりまた違う形でこれからの時代を担っていくスタンフォードの卒業生たちに、1人でも多くの卒業生たちに自分のメッセージを自分のナマの言葉、ナマの声で聞かせたかったのかなってことが、いま振り返ってみれば、そういう意識だったのではないかなと思うのです。生きる時間、その時間の限られた、人生のなかで、最高に、自分自身の人生を幸せに送るためには、自分自身で素直に情熱をもって夢を追いかけていくべきだと、夢を追っていくべきだということを再度自分自身にも言い聞かせていたと思うのですね。ひょっとしたら、彼は、あと何年生きられるのだろうということをあのときに考えていたかもしれないです。
「ひと」の楽しさを追い続けた男
夢を追って、とことんそれに突き進む、情熱の男、ですね。本当に、尊敬してやまない、絶対に負けたくない、心のライバルとして。いつまでも自分自身も、彼のやってきたことを、たくさん学んで生かしていきたいという存在ですね。まさに彼が生きざまとして「夢をあきらめるな」っていうこと、「絶対妥協するな、常に挑戦を続けろ」という強烈なメッセージを残してくれた。彼がそれを体現すると同時に、経営者としてリードしてきて、それを実現してきた会社がアップルですから。多くの企業も学ぶところたくさんあると思いますし、個人個人が彼の生きざまから学ぶことがあると言っていいと思います。そういう、非常に貴重なことをこれからの21世紀にも残していった人だなということですね。ぼくは会えたことを誇りに思いますし、彼がいろいろ機会を与えてくれたことにも感謝しますし、そしてこれからも忘れずにいたいなと思っています。単なる天才だとかそういうことでは語り尽くせないですよね。いろいろなことを、彼が本当に成し遂げたかったことから考えていくと、「ひと」を幸せにするとか、夢を与えるとか、感動させるためには、ここまで徹底的にこだわってやらないと実現できないのかなって。本当に、私が今まで働いていたかつてのソニー、ウォルトディズニー、こういったところに通じるものってたくさんありますからね。こうした、ある種、狂人的と言ってもいいような、徹底したこだわり。こうしたものはスティーブ・ジョブズも、とても強く持っていた人間ですよね。あくまでも、「ひと」、なんですよね、技術ではなくて。ライフスタイルということで、あくまでも、どんな人たちが使うのか、どんなシーンで使うのか。どんなにアップルのものを使って楽しくできるのかってことを常に頭の上において、こういうことを人々に伝えていくということ。あくまでも「ひと」が中心で、アップルが提供するものは手段と言っていいと思います。ジョブズさんの考えでいうと「自分たちが、ひとのために、ユーザのために提供しているものは何なのかってことを常に考えろ」っていうのがポイントですよね。「どんな価値を提供しているのだ?どんな楽しみを提供しているのだ?どんなことを便利にしているのだ?」ってことですよね。ですから、アップルの製品が人々に与える本質的な価値を常に考えるというのがメッセージだと私は理解しています。商品って、作り手のエゴになるじゃないですか。この商品、この製品はこんな機能があって、こんなことができますよ。ではなくて、あくまでも人々がそれをやって、うれしいかどうかってことが重要なんですね。「ひと」ありき、まず。その本質、人々が喜ぶ、楽しむ、すごく便利だと思うとか、使って感動するものを提供している、その手段がアップルの製品。あくまでも「手段」だと。最高のものを人々に提供するために、人々を幸せにするための、すべて、手段であってプロセスだということですね。
まだまだ、先を走っていてほしかった
スティーブが亡くなったというニュースを初めて聞いたときには、悲しいというよりは本当に悔しいと。どうしてもういっちゃったんだ?という気持ちがあったのですけど、数日たってみて、彼が残したこと、彼がやってきたことをどう世の中に広めていったらいいのかということを自分なりに考えてみました。悔しいというのは、やはりものすごく尊敬していたのですね、天才の経営者、創業者として。自分の心のなかで、ライバルとして、スティーブ・ジョブズに負けたくない彼に負けたくないという気持ちで頑張っていますので、まだまだ、先を走っていてほしかったなという気持ちで悔しいということですね。
投稿時間:15:50
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[クローズアップ現代]は、欠かさず見ています。たまたま、このスティーブ・ジョブズ特集は、見逃してしまいました。是非、再放送してください。私は、建築家です。クリエイティブな想いは、共有していると思っています、前刀氏のコメントが、間近にジョブズ氏と接した貴重な見解を興味深く読みました
投稿日時:2011年10月17日 14:35 | 笠嶋淑恵
ジョブズさんの考えでいうと「自分たちが、ひとのために、ユーザのために提供しているものは何なのかってことを常に考えろ」っていうのがポイントですよね。・・・という文面を見て、クローズアップ現代という番組の再放送がないことについて、ジョブスさんはなんと言うだろう?と考えてみた。そこで結論・・自分の国、日本という国に対して、あきらめの気持ちを持つにいたった。ジョブスさんの存在に力づけられた反面、現実は、皆、そんなに真剣に生きていないよ、と実感。大変残念。
投稿日時:2011年10月19日 05:08 | Ka
クローズアップ現代の放送も拝見しました。
スティーブ・ジョブズをここまで真摯にとらえた日本のマスメディアは他に無かったです。
福田さんと前刀さんのインタビュー全文、本当に感激しました。
NHKさんの仕事に対する誇りと熱意に敬意を表します。
投稿日時:2011年10月20日 23:57 | かっぺい
当番組と12月25日のNHKスペシャル「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」を見て、遅ればせながら私見を。(敬称略)
ジョブズの足跡を見ると、どうも私にはソニーの歴史と重なって見えます。技術の井深大、経営の盛田昭夫。商品の芸術性を高めた大賀典雄、ハードとソフトの融合を推し進めた出井伸之など。トランジスタラジオや家庭用VTR、携帯音楽プレーヤーなど、送り出した商品はいずれも、どの時代においても革新的でした。
日本にもカリスマとよばれた経営者はいます。松下電器産業(現・パナソニック)の松下幸之助、ホンダの本田宗一郎などの名前は、すぐに思い浮かぶでしょう。
1976年創業のジョブズ率いるアップルが、1945年創業のソニーに追いつき、追い越した要因はなんでしょうか。
私が考えるに、ソニー、松下、ホンダなどは「社会に貢献する。そのために先進的な商品を作る」ように思えます。それに対し、ジョブズは「社会を変える挑戦をする。そのために革命的な商品を作る」ように、番組を見て感じました。
マッキントッシュのように新たな分野を切り拓いた先駆者となれば、それはやはり強いですよ。では、携帯型音楽プレーヤーのように、既存市場があったところではどうか。いや、ジョブズはそもそもウォークマンを相手にしていなかったのかもしれません。それをも超えた卓越したビジョンがあったからこそ、iPodを堂々と世に送り出し、成功させたのでしょう。ジョブズにとっての競争相手は、ソニーやマイクロソフトではなく、時代や社会だったのでしょうか。
投稿日時:2011年12月24日 00:19 | Mullion