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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第24回】 2012年4月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

社会活動に取り組む人に
なぜ「聖人君子像」を求めるのか

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すべてのことはマーケティング的に動いている?

 あまりに古い話で恐縮ですが、1980年代から90年代にかけて、テレビが変わったという印象があります。「夕やけニャンニャン」や「オールナイトフジ」などの番組で、製作側の裏側を隠さずに番組に出すようになったことです。

 番組に出るタレントも「スポンサーはこう言っている」「一番偉いプロデューサーがこうしたがっている」「広告代理店の力が強い」ということをわざと表面に出して面白おかしく演出していました。これによってテレビとは、制作者が本当に見せたいものを見せているとは限らず、いろいろな立場の人や会社の意向や思惑によって決まるという「裏側」を一般の視聴者に見せたのです。

 視聴者だって、番組製作の裏にはいろいろあることは察していたことでしょう。それをあえて前面に出すことによって、番組がより身近なものへと変わっていくとともに、裏を読むということが当たり前のようになってきたような気がします。

 この「物事には必ず何か裏がある」という傾向は、2000年代に入るとネットによってさらに増幅されたように感じられます。

 「世の中すべてのことには、公式には言えない裏の事情がある。ネットでは、そういう情報を手に入れることができる」

 現代の人々には、人や物事は何か隠された事情によって動いているだろうという考えが根強く浸透しているように見えます。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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