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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第24回】 2012年4月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

社会活動に取り組む人に
なぜ「聖人君子像」を求めるのか

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純粋に活動している人が叩かれるニッポン

 元内閣府参与で反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さん。現内閣府参与で自殺対策支援センターライフリンクの代表を務める清水康之さん。

 お二人ともマスコミで脚光を浴びている方々ですが、お付き合いしてみて感じるのは、彼らがお金や権力や名誉に対する欲がまったくなく、貧困に苦しむ人、自殺に追い込まれる人を何とか減らそうという純粋な気持ちで活動しているということです。

 しかし、湯浅さんも清水さんもときに多くのバッシングを受けます。

 「純粋な気持ちだけでやっているはずはない」
 「あいつらは政府に取り入ろうとしている」

 特に、湯浅さんは「派遣村」でスポットライトを浴びてしまったため、叩かれることが続いているといいます。もちろん彼らも完全な人間ではないので、落ち度もあるでしょうし、誤った行動もあるかもしれません。また、社会貢献をしている人というだけで、無批判になるのも健全とはいえません。しかし、果たして彼らは多くの人に集中砲火を浴びるようなことをしたのでしょうか。

 内閣府参与は、個別の部屋が与えられるだけで無給です。活動のベースとする組織からも十分なお金を得ていません。何かイベントがあったときでも、その後の打ち上げは安い居酒屋でつましく開く程度にすぎません。

 湯浅さん、清水さんはバッシングに対して「傷つきますよ」「ヘコみますよ」と正直に吐露しています。言いたいヤツには言わせておけ、何を言われても気にしないという頑固な姿勢ではなく、私たちと変わらない普通の人間が自然体で活動しているだけなのです。

 かつての社会活動家のなかには、自分は正しいという妄信的な信念があり、それを表に出すタイプの人がいました。彼らの多くは、自分の活動を誇らしげに語り、周囲を巻き込もうと積極的にアピールします。

 しかし、湯浅さんも清水さんも自分の弱さをよく知っていて、しかも「みんなも私たちと同じことをするべきだ!」と押し付けるようなところがないのが、新しいタイプの社会活動家です。

 マスコミの人に聞いても、彼らは取材してほしいとも言わず、取材に行っても取材陣を強引に引きずり込むようなことはしないそうです。批判する人たちから見れば、かつての社会活動家の類型に当てはまらないところが得体の知れないところなのかもしれません。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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