歴史的にも社会の混乱を機にデマで勢力拡大を目論む者が存在します。裏付けのなく、信憑性に問題のある風評で不安を煽る。そしてその存在を大きく見せようとする。それが市民の安全安心を作るための政治家が中心にいるならば最悪です。
 
今回の原発問題。そうした輩が暗躍していないことを願いたいところ。政府の対応等々、問題視すべき点は多々ありますが、放射線対応については冷静且つ客観的に判断していかねばなりません。多角的な情報から判断することが大事。
 
昨朝、「フジテレビの新週間フジテレビ批評」という番組を見ました。”原発と放射能”をどう伝えるか、と題して大谷浩樹首都大学東京教授がインタビューに答えていましたが、自分で判断することを訴える大変客観性のある内容。偏重報道ではなく、こうした考えさせてくれる番組が増えればと思います。
 
がん医療の先端を走る中川恵一東京大学医学部附属病院放射線科准教授。私は客観性を重んじる同氏の主張に共感する部分が多いです。その氏が原発事故の人体への影響について語りましたのでご紹介させて頂きます。
 
今月7日、福島市で開催された公明党福島県本部主催の放射線に関するセミナーでの同氏の講演と質疑の内容(要旨)です。
 
1.講演
 
原発事故で放射線被ばくの不安が高まっているが、これは「自分ががんになる危険が高まるかもしれない」という不安だ。現実的には、今の福島市などの放射線量でリスクが高まることはなく、子供や孫への遺伝的な影響もない。
 
東京電力福島第一原発の事故では、3月11日から15日に漏れ出した放射性物質が風に乗って飛び、雨に溶けて降って土壌の表面に付着した。それが放射線を出している。
 
実は私たちの身の回りには、もともと放射線がある。日本では自然環境から年平均1.5ミリシーベルトの放射線を浴びている。食べ物にも放射性カリウムが含まれており、内部被ばくもしている。レントゲンなど医療による被ばくも日本人は平均2.3ミリシーベルトに上っている。
 
人体に影響が生じ始めるのは年100ミリシーベルト。それ以下の被ばくで、がんが増えたというデータはない。20ミリシーベルトや1ミリシーベルトという基準は、「それ以下ならがんいならない」のではなく、なるべく被ばく量をゼロに近づけようという意味だ。
 
2.質疑
 
Q;福島市内で新生児を育てて大丈夫か?
 
A;現在の放射線量で何か影響があるということはない。どうしても心配なら他の地域に移ってもいい。
 
Q;家の窓を開けておいても大丈夫か?
 
A;全然、問題ない。(原発事故による)放射性物質は、空気中にはほとんどない。
 
Q;息子の幼稚園で牛乳を飲まなくなったが、どう思うか?
 
A;牛乳は飲んだ方がいいと思う。そんなふうに心配していると100年後、「日本は2011年からがんが増えた」となるかもしれない。それは放射線の影響ではなく、野菜や魚は怖いから食べるのを控えたり、外に出ると被ばくするからと家にいて運動不足になったり、がん検診で放射線を浴びるのは怖いからと検診を受けなくなったりする影響からだ。むしろ、その方が心配だ。
 
Q;子供を外で遊ばせても大丈夫か?
 
A;20ミリシーベルトや1ミリシーベルトの基準は子供向けにつくられている。普通に遊ばせていい。
 
Q;放射線量を減らす掃除の仕方は?
 
A;水拭きなどをしても効果はない。室内の放射線量はそのと土からくるものだ。庭の草をむしったり、土を耕すのが有効だ。
 
Q;妊婦が気を付けることは?
 
A;特にない。水も野菜も心配ない。出荷されている野菜は放射線量を測っているし、畑の作物は肥料の関係から放射性物質のセシウムが入りにくい。自然に生えている山菜などとは違い、食べても全く問題はない。
 
Q;井戸水でミルクを作っても大丈夫か?
 
A;放射線については大丈夫だが、衛生管理はきちんとしているのか。そっちを注意しないといけない。
 
また、同氏は今年3月20日付でも公明新聞のインタビューに答え、100ミリシーベルトでも症状なし過剰な反応は控えて、と訴えています。
―放射線を浴びることに不安の声が聞かれますが。

中川 放射線は普段の生活の中で誰もが自然に浴びているものです。その量は、国や地域によっても違いますが、世界の平均で年間2.4ミリシーベルトという量を浴びています。イランのラムサール地方ではその4倍で、年間約10ミリシーベルトですが、それでも問題があるわけではありません。

今回の福島原発の事故によって、各地で観測されている放射線量は多少増えてはいますが、健康に影響のある量ではありません。

―どれぐらい浴びると健康に影響が出るのですか。

中川 放射線量が1000ミリシーベルトを超えると、吐き気などの症状が出ます。それよりも大幅に低い100ミリシーベルト程度の放射線量であれば症状もなく、血液検査でも、白血球の数値が下がるなどの異常は見られません。

しかし、この100ミリシーベルトの蓄積があれば、発がんリスク(危険性)は若干高まります。ただ、それはごくわずかで0.5%程度の確率です。日本人はもともと2人に1人、50%の確率でがんになりますが、それが50.5%になるという程度のことです。

―今回の事故で、一部に「東京も危ないから大阪に引っ越す」などの話もあるようですが。

中川 過剰に反応する必要はありません。東京の場合、全く問題ありません。

―放射線を一度に浴びた場合と長時間浴びた場合の違いは。

中川 例えば、原発の作業員などが、事故で一度に大量の放射線を浴びるようなケースは危険です。

しかし、普段の生活の中で少量を浴び続けたとしても、生物のDNAは、放射線で一時的に壊されてもすぐに修復されるので、人体に与える影響は小さいのです。

例えば、東京周辺では、1時間当たり1マイクロシーベルト(0.001ミリシーベルト)程度の放射線が観測されましたが、この量で先ほどの100ミリシーベルトに達するのには11年かかります。しかし傷つけられたDNAは日々修復されてしまうため、医学的にも影響はありません。

―退避地域内の住民などで、放射性物質を浴びるのを防ぐための注意点は。

中川 放射性物質を体内に取り込む「内部被曝」を防ぐことが大切です。

基本的には、花粉の対処法と一緒です。外ではマスクやぬれたタオルで鼻や口をふさぐ。肌の露出は避け、家に帰ったら、玄関に入る前に頭や着衣をよく払うことなどが大切です。

また、家の中では外気とともに放射性物質が侵入しないように窓を閉めることも大切です。用事がないなら家にいたほうが安全です。

―ほかに注意すべき点は。

中川 とにかく、行政の指示に従って行動すれば、特段注意することなどはありません。

『放射性物質』とは?

放射線を出す物質。自然界に存在するラジウムやウラン、原発の核分裂で生成されるセシウムやヨウ素などを指す。

放射線を出す能力を放射能という。

放射線が人体に与える影響を示す単位が「シーベルト」。1シーベルトの1000分の1が1ミリシーベルト、その1000分の1が1マイクロシーベルト。

人間が全身に、一度に大量の放射線を浴びた場合、500ミリシーベルトで血中のリンパ球が減少、7000~1万ミリシーベルトで100%死亡するとされる。

胃のエックス線集団検診は1回0.6ミリシーベルト。

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