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解雇の本当の恐ろしさを知らない経営者

 多くの経営者は解雇の恐ろしさを知らないように感じます。実際、経営者から労務トラブルの相談を受けていると、意気揚々と、
「あんな社員には絶対戻ってきてほしくない。最高裁までがんばります」
と宣言する方が少なくありません。しかし、少なくとも2000万円は覚悟してくださいと伝えたとたん、どんな人も真っ青になって黙り込むのです。

 裁判官もひとたび仮処分が出るとトラブルがドロ沼化することを知っているので、仮処分の審理中に強く和解を勧めます。1~2年分の給料を支払って和解することを提案するわけですが、経営者は「裁判所はすぐに労働者の肩を持つ」くらいにしか受け取りません。

 裁判になるとどれほどの費用や時間、労力が奪われていくか認識していないから、その提案を受け入れられないのです。弁護士としてはそんな経営者を何とか説得するのが仕事なわけですが、労働事件に不慣れな弁護士はそうした現実を知りません。

 だからこそ、経営者自らが解雇の後に待ち受けている悲惨な現実を知っておくべきです。そして安易な解雇は絶対に避けてください

退職勧奨は自由にできる

 以上のように、労働者を解雇することは非常に難しいのですが、退職勧奨することについては問題ありません。解雇できない以上、辞めてもらいたい社員とは話し合うしかないので、退職勧奨については使用者に甘くならざるを得ないのです。

 たとえば、嫌がる労働者に対して「この会社にあなたの仕事はないので、退職したらどうですか」という面接をしつこく3、4回繰り返したとしても違法とは判断されません。はっきり「あなたの能力は会社が求めるレベルに達していない」と言ってもかまわないのです。社会一般の認識よりも、裁判所は退職勧奨について寛容です。

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社長は労働法をこう使え!

社長は労働法をこう使え!

向井蘭 著

定価(税込):1,680円   発行年月:2012年3月

<内容紹介>
経営者・人事担当者・管理職のために、労働法の基礎と労務トラブルへの対処法を解説するビジネス実用書。法律と現実のあいだのズレを知ってもらったのち、ふんだんな事例とともに、問題社員の辞めさせ方や労組への対応法を説明する。全国に100人ほどしかいない、経営者側に特化した労務専門の弁護士による画期的な1冊。

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向井 蘭(むかい らん)

 

弁護士。1975年山形県生まれ。東北大学法学部卒業。2003年に弁護士登録。狩野・岡・向井法律事務所所属。経営法曹会議会員。労働法務を専門とし、解雇、雇止め、未払い残業代、団体交渉、労災など、使用者側の労働事件を数多く取り扱う。企業法務担当者向けの労働問題に関するセミナー講師を務めるほか、『ビジネスガイド』(日本法令)、『労政時報』(労務行政研究所)、『企業実務』(日本実業出版社)など数多くの労働関連紙誌に寄稿。
著書に、『時間外労働と、残業代請求をめぐる諸問題』(共著、産労総合研究所)、『人事・労務担当者のための 労働法のしくみと仕事がわかる本』(日本実業出版社)がある。


社長は労働法をこう使え!

「経営者側」の労務専門の弁護士は、全国に100人ほどしかいません。そのため、会社と労働者のトラブルでは会社に正義があることも多いのに、多くの社長が孤独な戦いを強いられています。そんな状況を少しでも改善しようと出版された『社長は労働法をこう使え!』の著者・向井蘭氏に、労働法と労務トラブルの「経営者のための」ポイントを解説してもらいます。

「社長は労働法をこう使え!」

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