5KBのゴングショー第21戦勝者

「手」

穐葉 真

 上空から巨大な手が延びてきて、俺を掴まえた。俺は必死で抵抗したが無駄だった。巨大な手は俺を掴んだまま上空へと移動していく。俺は大きな叫び声を上げた。

「!」 俺は飛び起きた。どうやら悪夢を見ていたらしい。そういえば、先日、親友が巨大な手が自分を掴まえて連れ去る夢を見たと言っていた覚えがある。その影響を受けたのかもしれない。
 俺は何気なく時計を見て驚いた。時計の針はもう8時を示している。俺は慌てて服を着替えた。俺の家から学校まで30分はかかる。今日は朝食抜きで行くしかない。
 俺は遅刻すれすれで登校した。親友に俺の見た夢を話そうと思っていたのに、彼は今日休みのようだ。昨日はあんなに元気そうだったのに、と俺が不思議がっていると、先生が入ってきて、親友が行方不明になったと知らせた。俺は茫然となった。まさか、夢が現実になるなんてありえない。でも、そういえば最近この付近で失踪事件が増えているらしい。しかも、失踪した人々皆が事前に巨大な手が自分を連れ去る夢を見たと言っていたらしい。と噂を聞いた。
 俺は帰宅するとすぐに親友宅に電話を入れた。親友の母が出てきて、俺が親友のことを聞くと、泣きながらまだ帰って来ないと教えてくれた。俺は何も言うことができなくって、早々に電話を切った。
 それからしばらくして、俺は巨大な手に連れ去られた。

「センサーに異常な反応が見られるから調べてみたら、こんな微生物のせいだったとは。」と、二人の研究員の内、年老いた方がそう言って顕微鏡の中を覗いた。
「センサーによく反応するのを20匹ほど集めたのですが、どうするのですか?」
「一応、解析してみるか。こんな微生物に思考能力があるとは考えられんのだが。」

終わり

[前の殿堂作品][殿堂作品ランダムリンク][次の殿堂作品]


[HOME][小説の部屋][感想掲示板][リンクの小部屋][掲示板]