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証言/焦点 3.11大震災
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焦点−大震災から1年/見えぬ「出口」復興阻む/がれき広域処理進まず

海に面した1次仮置き場。がれきの周囲に設置した土のうが一部で崩れて、廃材などが再び流出する懸念が高まっている=宮城県南三陸町志津川

 東日本大震災で発生した災害廃棄物の処理が進まない。処理作業の前提となる、県外の自治体に廃棄物処理の一部を引き受けてもらう広域処理が進まないためだ。国が掲げる完了目標は2014年3月。既に4〜5カ月の遅れが出ており、達成は極めて厳しい状況だ。津波がもたらした未曽有のがれきは復興の歩みに重くのしかかる。

<湾内に流出>
 養殖ワカメの収穫が本格化する宮城県南三陸町の志津川湾。がれきの山が海に迫る。約1.5キロ東に離れた漁港で作業に励む漁師渡辺長喜さん(66)が表情を曇らせた。
 「いつになったらがれきが片付くのか。大潮や波の高い時、湾内にごみが流れ出る。作業中も仲間と風向きや潮の流れを心配している」
 湾に隣接する松原グラウンドは、がれきの1次仮置き場として木くずなど分別前のがれきが山積みになっている。2次仮置き場に移す予定だが、気仙沼・南三陸地区では用地選定作業が難航。いまだ焼却炉すらない。
 各地の2次仮置き場も深刻な状況だ。被災自治体で最大の616万トンのがれきを抱える石巻市。市内24カ所の1次仮置き場からがれきを受け入れる同市の2次仮置き場は、本格稼働を前にして既にがれきでいっぱいだ。
 昨年中に約40万トンを県外の処理業者に委ね、空いた敷地に選別・破砕施設を造る予定だったが、全国に広がる放射能不安で計画は早々に頓挫。敷地内で9万袋の土のうにがれきを詰めて移動させ、施設用のスペースをつくる作業が続く。

<窮状を訴え>
 環境省によると、被災3県で発生したがれき処理の進行率は、震災から1年近く経過した今も5.6%(2月27日現在)にとどまる。宮城県の場合、がれき量の半分以上が被災家屋などの建物。解体が遅れ、仮置き場への搬入率は69%に低迷する。特に約2万棟の解体が必要な石巻市は、54%が野ざらしのままだ。
 岩手県も悩みは同じだ。1日の県議会環境福祉常任委員会では、がれき処理が進展しない状況に質問が相次いだ。県は「災害廃棄物は防潮堤建設地や観光・運動施設に積まれたままで、物理的に復興の妨げになっている」(環境生活部)と窮状を訴えた。

<まだ5都県>
 岩手、宮城両県で広域処理が必要ながれき量は380万トン(岩手57万トン、宮城323万トン)に上る。受け入れが始まったのは青森、秋田、山形、福島、東京の5都県のみ。宮城県震災廃棄物対策課は「がれき置き場の多くは市町の復興計画で区画整理事業の対象になる。処理が遅れれば復興そのものが進まない。早期の県外搬出が必要だ」と危機感を募らせる。
 村井嘉浩宮城県知事は定例記者会見などで「ただただ、お願いするしかない」と頭を下げつつ「誤解に基づく反対運動が活発で、どの自治体も難しい判断を迫られている。これも風評(被害)と言えるかと思う」と口惜しそうに話した。


2012年03月04日日曜日

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