“Mac OS XはUNIXベースなので、これまでに構築したUNIX関連の資産をそのまま使え、教材の準備にも苦労しない点がいいですね。”
東京大学 大学院総合文化研究科、
大学院情報学環 教授 山口泰氏
東京大学: iMacとXserveが選択される理由
効率的な運用管理と顕著なコスト削減を評価
同学では、本郷、駒場、柏の3つのキャンパスに点在する10以上のビルに分散配置された、1000台以上の端末を管理しています。なかでも、柏キャンパスについては、ブートサーバも管理者も置いていない状態で運用が行われているといいます。
システムの運用管理は丸山先生をはじめとする数名のスタッフが担当し、機器の管理やメンテナンスはメーカーのサポートチームが中心になって対応していますが、運用管理の効率化という目標は達成されているのでしょうか。
「集中管理と言っても、内蔵ディスクからのOS起動を前提する方式では、障害対応まで含めた管理コストは高くなります。かといって、我々のように数名のスタッフで1000台以上のメンテナンスをするのは現実的ではありません。その点、現在の集中管理システムでは、こうした機器の管理は基本的にベンダーにおまかせして、我々はシステムの運営に専念できます。また、MacにIntelプロセッサが搭載されたことで処理速度が速くなったことに加え、仮想化ソリューションも充実したことは大きなメリットです。1台の端末の中でOS Xと並行してWindowsアプリケーションを実行でき、OSを切り替えるたびに再起動する必要がないので、ユーザーにとってより使いやすい環境が提供できていると思います。また、標準端末のMacでWindowsを使用する場合、これまではWindowsサーバから画面データを飛ばす形にしていましたが、端末の上でローカルにWindowsを動作させることができるようになったことで、Windowsサーバにかかるコストを削減できました」(丸山一貴氏)
この他にも、NetBootサーバ全体を管理するツールを導入し、バージョン管理が可能になったことで、新しいバージョンを全端末に配布することはもちろん、特定の教室だけに特定のイメージを使うことができるようになり、集中管理がしやすくなったといいます。
ストレスを感じさせない利用環境
実際に授業で利用している先生方はどんな感想を持っているのでしょうか。一年生の情報の授業を担当している山口泰先生にお話を伺いました。
「自宅や高校の授業でWindowsしか使ったことがない学生がほとんどなので、最初は『なぜ、Macなの?』と疑問を感じるようですが、授業で1〜2回触ればすぐに慣れてしまうため、授業を進める際に問題になることはありません。教える側の立場でいいますと、Mac OS XはUNIXベースなので、これまでに構築したUNIX関連の資産をそのまま使え、教材の準備にも苦労しない点がいいですね。自分の研究で使っていたツールを授業に持ち込むのも簡単にできるので楽です」(東京大学 大学院総合文化研究科、大学院情報学環 教授 山口泰氏)
ECCSの運営を支えている重要な要素として、主に学生で構成される相談員の存在があります。学生は自学自習の補助教材としてオンライン教材「はいぱーワークブック」を利用できるようになっていますが、さらにスムーズに利用してもらうために、相談員は自習室や図書館で勤務し、利用者へアドバイスやトラブルシューティングを行っています。Macに対する印象について、現在相談員として活躍されている2年生の渡部真哉さんは、こう話します。
「大学に入るまでは、Windowsしか使ったことがなかったので、授業でMacを使うと聞いたときは、今まで触ったことのないマシンを使えるので面白そうだなと思いました。学生が相談員に聞いてくる質問も、ほとんどがプリンタについてのことなので、初めてMacを使う人でもあまりとまどいなく使えていると思います。個人的には、Macはソフトがいろいろ充実していて魅力的だと思うので、ソフトについての講習会をたくさん開催してもらえるとうれしいですね」
集中管理システムの今後の発展に期待
ECCS2008によってもたらされた効果を評価しつつ、システム管理者である丸山先生は、
「我々が運用しているような集中管理システムは、実はあまり選択肢がありません。サードベンダーによって支えられているサポートではなく、OSメーカーによるサポートの仕組みを持った集中管理システムの選択肢がもっと増えてほしい」
という指摘もしています。
また、同学の教育用計算機システムの発展について、こんな期待を寄せています。
「仮想化ソリューションが充実してきているので、Macの前にいなくても、遠隔地からログインして、サーバ室にある仮想環境内で実行中の、Macのアプリケーションを通信経由で呼び出して作業できるようになるといいなと思います。そうすれば、手元にMacがなくても、学生は自宅で課題の続きができますし、先生は学内のシステムを使って授業前に自宅や自分の研究室から教材の動作を確認できます。リモートからシステムを活用するソリューションが充実すれば、新しい可能性がもっと生まれてくると思います」(丸山一貴氏)
(2009年9月29日 東京大学 駒場キャンパスにて)