● 犬神家の一族(古谷版)
とうとう、古谷一行が初めて金田一耕助を演じた77年版『犬神家の一族』を入手したので語ってみる。^^;
主な出演者
犬神松子(長女):京マチ子
犬神竹子(二女):月丘夢路
竹子の亭主
竹子の息子:佐武
竹子の娘:小夜子
犬神梅子(三女):小山明子、
梅子の亭主
梅子の息子:佐智
野々宮珠世:四季乃花恵
犬神佐清(松子の息子)
古館弁護士:西村晃
那須警察署長 橘:ハナ肇
その他、野村昭子、田村亮、成瀬正、岡田英次、など
1976年に角川書店の一大キャンペーンとして始まった横溝正史フェアの第1作映画『犬神家の一族』が公開され、想像以上のブームに TV版の「横溝正史シリーズ」が制作された。
今では当たり前となった「売れている原作を映像化する 無難な営業戦略」を確立させたのが この時の角川書店を継いで間もない角川春樹だったと言って良いだろう。
そのTV版の金田一耕助に抜擢されたのが それまで、さほど知名度の高くなかった
古谷一行だったが、この古谷金田一は なかなか好評で 古谷の出世作となる。
で、TV版の第1作も映画を意識したのか この『犬神家の一族』である。
映像は 1時間枠x6回の全6話 映画の倍以上の映像時間があるため、濃度は映画よりも高い。
しかし、私は個人的な好き嫌いも多分に含まれていると自覚した上で 市川崑監督の映画版:石坂金田一に軍配を挙げる。
と言うのは、私の個人的見解には 日本の映画やTVは古来より(現在でも) なにかの作品を映像化する際に その作品に登場するキャラクターをキャスティングする際、本当に その脚本のキャラクターに合った役者を選んでいるのか?と 非常に疑問を抱く事が多すぎる。
おそらく、キャラに合うか否かでは無く、人気のある役者を揃えれば(スキャンダルなどで話題性のある役者でも意味は同じ) それなりに客を呼べて興行収入(視聴率)が稼げる…等という愚かな机上の計算に走りたがるクソ・プロデューサーが多いからだと推察される。
ゆえに、人気がある=ギャラが高い…という事もあって 制作費の大半がギャラで消え、舞台装置や背景考証はおざなりになり、結果的には ギャラが高くて人気のあるはずの役者が設定のキャラと合わずに駄作となり、背景や考証の拙さもその足をさらに引っ張り、多くの芸術家気取りのバカ監督(演出家)は 観客(視聴者)が この作品の良さを理解しきれないほど日本の程度が低い…等と 己の無能さを責任転嫁してきたのだ。
だから、映画版に比べて このTV版は役者への予算が見た感じ、低く 華やかさは薄いけど脇の役者達は 非常に良い味を出していて、それには物凄く制作者達に私は好感を抱くのだが、残念なのは 珠世役の四季乃花恵だけは 最悪だったと言い切りたい。
おそらく、宝塚を引退したてで話題性もあって…という意図だったのだろうと推察するが、この女優さんは 名前の文字ほど華が無い。^^;
映画版の島田陽子は 当時、まだバブルがはじけておらず、今日 世に知られている様な醜聞は この頃はまだ流れてなかったから、充分に珠世として受け入れる事が出来たので、どうしても 珠世の差が評価の差の大きな理由と 私の場合はなってしまう。
さて、「犬神家の一族」は
一代で巨万の富を築いた犬神佐兵衛という爺ぃが
とんでも無い遺言状を遺した事から、相続財産を目的に骨肉の殺人が行われる…というのが 大抵のところで述べられる「あらすじ」である。
まぁ、確かに それは間違いでは無い。^^;
しかし、私に言わせれば 充分な「あらすじ」では無い。
兄弟、親子、親戚が入り乱れて財産争い…と、聞けば 誰もがドロドロとした争いを思い浮かべ眉をひそめる。
しかも、そういう話の結末は ほぼ全部が とても後味が悪く、犯人は鬼畜そのものとして描かれる。
でもね、横溝正史は違うのだ。
読後、下手すると 泣けるのだ。
なんて言えば良いか… そこが美味く説明できないから 知らない人達には その辺の一山いくらの作家達と同列に語れてしまうのが 私には実に口惜しい。
この『犬神家の一族』も ラストは非常に感慨深く、私風に言えば 少なくともタバコを一本分 じっくりと時間をかけて深く吸い込み 読後の余韻を楽しみたい… そんな気分だった。
今度、この作品はリメイクされ、市川崑が再びメガホンをとり、石坂浩二が金田一を演じ、珠世役は松嶋菜々子が演じるという。
松嶋ならば…と期待する反面、じゃぁ… 誰が佐清なんだ? そこが気になって仕方が無い。
正直言うと、佐清は招集されて戦地に行き、戦後2年を経て復員してきた設定である。
年齢的には せいぜい20代半ば、いっても20代後半である。
珠世は その佐清を「兄」と慕う妹の様な存在だから 当然、歳下。
ちょっと 松嶋では… とは言え、石坂:金田一を考えると いっそのこと全体の年齢設定を上げるのもアリだよな…
横溝オタクとしては このところ、そんな妄想を楽しむ毎日なのである。^^;
さて、私は 先日… 『黒猫亭事件(古谷版)』という記事の中で
太地喜和子が出演しているが…
私は この女優さんの日本髪姿を見ると
【犬神家の一族】
この表紙絵の女性とダブって映る。
と、記したが 実は 太地喜和子と甲乙付けがたい存在なのが この作品で松子を演じた
この京マチ子であると申し上げて この記事の筆を置く。^^