北陸の経済ニュース 【11月4日03時24分更新】

富山市中心部、マンションラッシュ 郊外からシニア層、飲食も出店増
 富山市中心部でマンションの造成ラッシュが止まらない。リーマン不況に陥った時期に もかかわらず、直近5年間の供給戸数はそれ以前より15%増となり、シニア層が郊外か ら中心部に移るケースが目立っている。ただ、今後も200戸規模の大型案件が次々と計 画されており、北陸新幹線の開業を控え、供給過剰の懸念がくすぶっている。(荒木雄輔 )

 新たな計画が浮上したのは、富山市の「中央通り地区D北街区」の市街地再開発準備組 合だ。目指していたショッピングセンター誘致を断念し、約180戸のマンションを中心 とする26階建て複合ビルを6年後に建設する方針に転換した。

 市内の年間供給戸数は平均200戸前後。わずか1棟でこれに近い戸数になるが、目算 が立つのか。準備組合の黒田輝夫理事長は「マンションは好調。十分期待できる」と胸を たたく。

 実際、まちなかマンションの需要は旺盛だ。

 西町交差点の東南角地で建設が進む「プレミスト西町」は10月1日の発売後、約2週 間で分譲対象76戸のうち、3分の1にあたる24戸が契約済みとなった。

 「商業地区に近い便利な場所なのである程度需要は見込んでいたが、近所で110戸売 れた直後にもかかわらず、この勢いということに正直驚いている」。大和ハウス工業(大 阪市)の戸田裕之北陸マンション営業所長はこう手応えを語る。

 戸田氏の言う「110戸」とは、中央通りで来春完成するタカラレーベン(東京)の「 ルシーダタワー」のこと。こちらは5月に発売10カ月で完売した。「プレミスト西町」 も来年8月下旬の完成前の完売をもくろむ。

 需要を支えているのはどんな客層か。造成業者が口をそろえるのは「裕福なシニア層」 だ。

 地価調査富山県代表幹事の日俣学不動産鑑定士は、60―65歳前後の団塊世代の多く で、郊外の持ち家が建て替え時期に差し掛かっていると指摘。「徒歩や市内電車でマイカ ー要らずの生活ができ、雪下ろしも不要のマンションが老後の住まいとして注目を集めて いる」と説明する。

 中心部のマンション入居に必要な借入金を富山市が補助する「まちなか住宅取得支援事 業」も、6年前にできて以降、この流れを後押し。「ここ5年ほどマンションが建設され ているのは市中心部だけ」(市都市再生整備課)というほどだ。

 タカラレーベンの調べでは、富山市内の年間の供給戸数は05年までの5年間の平均が 約200戸なのに対し、06年からの5年間は約230戸に増えた。

 居住者の増加は、周辺の商店などにも波及している。総曲輪通り商盛会の金谷明男理事 長は「転入が増え、居住者の需要を当て込んで空き店舗に飲食店の出店が相次ぐなど、ま ちに活気が出てきた」と喜ぶ。

 金沢はどうか。リーマン不況で新築がぴたっと止まったが、駅周辺を中心に動きが出て きた。

 金沢駅周辺では、アパグループが9月、本町2丁目に44戸の「プレミア金沢駅前」を 着工。「金沢の年間需要は300〜400戸ある」(元谷外志雄代表)とみて、片町周辺 でもマンション用地を選定中という。

 大和ハウス工業は、金沢市の再開発事業として、本町1丁目で、4〜12階に分譲62 戸を配置し、太陽光発電や屋上緑化を備える環境配慮型の再開発ビルを着工。「団塊世代 や退職手前の50代が主なターゲット」としている。

 富山市中心部のマンションラッシュはいつまで続くか。

 新たな計画、構想はまだまだある。例えば、総曲輪の旧西武富山店跡では、14年度末 までに150〜200戸が入る24階の再開発ビルを建てる計画が進み、「近年にない大 きな出物になる」(地元不動産業者)という。

 「プレミスト西町」の隣でも40戸の賃貸マンションを1棟、来夏までに完成させる計 画がある。これらが完成すれば、さすがに需要は落ち着くとの見方が多い。業界関係者の 間では「42万人という富山市の人口を考えれば、供給は年200戸程度が妥当。過剰な ら当然、揺り戻しもある」との声が出ている。


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