【ロンドン会川晴之】英国が世界最大の余剰プルトニウム保有国となったのは、高速増殖炉計画や、軽水炉用の核燃料に加工するプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料工場が、技術的、経済的な問題で成果があがらず、プルトニウムの消費が計画通りに進まなかったためだ。このため余剰量は増え続け、テロリストが入手する事態を避けるための保管や、多大な費用の捻出が財政危機を背景に困難となってきた。英国の脱プルトニウム政策は、高速増殖炉を含む原子力発電を「準国産エネルギー」と位置づける日本にとっても、核燃料サイクル事業の見直しを判断する材料になるのは確実だ。
英国は、西側世界初の商業炉(1956年)、高速増殖実験炉(59年)を開発するなど、常に原子力開発の先陣を切ってきた。石油など化石燃料が枯渇するとの懸念が高まっていたのが背景で、50年代初頭から本格化した核兵器開発と連動する形で核燃料開発に注力した。
しかし、70年代に英国沖で北海油田が発見され、カナダで巨大ウラン鉱床が見つかるなどプルトニウムの経済的優位性が薄らいでいく。日本の「もんじゅ」と同様、ナトリウム冷却材漏れなどの事故が高速増殖炉で相次ぐといった技術的困難も伴い、94年には高速増殖炉計画を断念した。
一方、英国が使用している旧型ガス炉の核燃料は、長期保管が極めて難しく、再処理する必要がある。このため、余剰プルトニウムが年3トンの割合で増え続けた。
解決策として、英政府はMOX燃料を使ったプルサーマル利用を目指した。しかし、イングランド北西部セラフィールドに01年に建設したMOX燃料工場は、技術的障害で年産120トンの計画に対し、10年間で15トンにとどまり、今年8月に閉鎖に追い込まれた。
英政府が再処理中止と、プルトニウムの一部廃棄を検討していることについて、英政府の独立委員会、放射性廃棄物管理委員会(CORWM)のピッカード委員長は「再処理は、核廃棄物の減量を図り、プルトニウムなどの核物質再利用を進める役割を果たしてきた。だが、今、その考えは岐路に立たされている」と語った。
英国の足取りは日本の原子力開発の歴史と重なる。特に高速増殖炉には巨額の国家予算を投入。プルトニウム抽出に必要な核燃料再処理施設建設を青森県六ケ所村で進めた。
日本政府は87年にまとめた原子力長期計画で、高速増殖炉実用化を2020年代から30年ごろ、再処理工場稼働を90年代半ば、MOX燃料工場稼働も90年代半ばとした。その後、技術的な問題などを背景に何度も計画を変更。今は高速増殖炉が2050年、再処理2012年、MOX燃料2016年を目標にしている。
2011年12月2日
4月1日北リアス線田野畑~陸中野田間復旧
岩手県・宮城県に残る災害廃棄物の現状とそこで暮らす人々のいまを伝える写真展を開催中。