核処分場問題

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英国:プルトニウム廃棄へ 「再処理」から転換 世界初、国内地下に 2040年から

 【ロンドン会川晴之】世界最大の余剰プルトニウムを持つ英国が、保有プルトニウムの一部を2025年に着工を目指す核廃棄物の地下最終処分場に世界で初めて「核のゴミ」として捨てる計画を進めていることがわかった。プルトニウムは核兵器の原料になるため、テロ対策上の懸念の高まりと、年2000億円以上もの管理費が財政を圧迫していることが主な背景。使用済み核燃料の再処理施設も21年までに段階的に閉鎖し、「脱プルトニウム路線」にかじを切る。英政府は新戦略の決定に際し、関連資料を国民に提示、広く意見を募るなどの情報公開を図った。

 プルトニウムの利用をめぐっては、日本でも高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を含めた抜本的な見直しが進んでいる。1956年に西側諸国では初の商業用原子炉の運転を始めた英国が、最重要戦略物資の扱いを国民に問う形で決めたことは、日本などプルトニウムを保有する各国の政策の決定過程に大きな影響を与えそうだ。

 英エネルギー・気候変動省、英政府の外郭団体・原子力廃止措置機関(NDA)などへの取材によると、余剰プルトニウムの多くは、ウランと混ぜたMOX燃料として再利用する予定だが、一部は廃棄処分にする。プルトニウムを安全に捨てる技術はまだ開発されていないが、セメントなどで固めて地下数百メートルに埋める方法が検討されている。

 英政府は中部カンブリア州に最終処分場を造る方向で、地元との調整を開始。まとまれば、2040年からプルトニウムを地下処分する計画だ。

 英国が保有する民生用余剰プルトニウムの総量は、日本の電力会社などが英国に再処理を依頼して抽出した28トンも含めて114・8トン(10年末)で、管理費は年約20億ポンド(約2400億円)。21年まで再処理を続けるため、余剰量は最終的に海外の分を含めて130トンを超え、英国自身の保有量も100トンを超す見通しだ。国際原子力機関(IAEA)によると、純度の高いプルトニウムならば8キロで核兵器の製造が可能。英国の総量を換算すると1万発以上となる。

 英政府は、2010年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、余剰プルトニウムの議論が活発化したことを受けて、本格的な検討に着手。今年2月に(1)新技術が開発されるまで長期間保管(2)MOX燃料として原発で再利用(3)廃棄処分にする--の3案を国民に示した上で、(2)を推奨した。MOX案については「新規工場の建設・運用費用50億~60億ポンド(約6000億~7200億円)が、核燃料販売価格(25億ポンド)を大幅に上回る」とし、他案についても、長所、開発にかかる期間の見通しなどを記して意見を募った。

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 ■ことば

 ◇プルトニウム

 自然界に存在しない元素で、1941年に核兵器開発中の米科学者が生成。1グラムで1キロリットルの石油に匹敵するエネルギー量を持ち、「錬金術師の夢実現」と表現された。世界では軍事、民生合計で約500トン、うち民生用は約300トンだが、余剰が増え続けている。約45トンを保有する日本は「余剰プルトニウムは持たない」と国際公約しており、ウランと混ぜたMOX燃料を原発(軽水炉)で消費する「プルサーマル計画」を推進していた。

2011年12月2日

 

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