野田政権は30日午前、消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる消費増税法案を閣議決定した。午後、国会に提出する。これに先立つ同日朝、国民新党の亀井静香代表が首相公邸で野田佳彦首相と会談し、連立政権からの離脱を伝えた。一方、同党の自見庄三郎金融・郵政改革担当相は閣議決定に署名し、国民新党として連立にとどまることを明言。亀井氏と亀井亜紀子政調会長を除く同党の6議員は連立維持を確認し、分裂した双方が「国民新党」を名乗る混乱状態に陥った。民主党の小沢一郎元代表のグループは政務三役や党の役職にあるメンバーの集団辞任で政権を揺さぶる構えだ。
消費増税に反対してきた亀井氏は30日朝、首相との会談で「閣議決定を党としてできないので連立離脱させていただく」と表明。首相は「極めて残念だ」と応じた。亀井氏は29日夜、自見氏ら同党の政務三役を無所属にして閣内に残留させるよう首相に要請していたが、首相は無所属としての残留は「できない」と回答。亀井氏は「うちの議員は閣内から引き揚げざるを得ない」と伝えた。
会談後、亀井氏は自見氏に電話したが、自見氏は電話に出ず、閣議に出席して署名。その後の記者会見で自見氏は「結党以来の『一丁目一番地』(の課題)である郵政民営化見直しについて、政権与党の一員として最後まで責任を持って取り組む」と語った。亀井氏も会見し「頭がくらくらしてくる。あるはずがない」と批判した。
亀井氏は首相との会談後、同党の松下忠洋副復興相と東京都内で会談。森田高総務政務官、浜田和幸外務政務官にも電話して辞任を指示した。一方、下地幹郎幹事長も森田氏らに電話し「国民新党として署名したので辞任の必要はなくなった」と伝え、同党の分裂は決定的となった。
同党所属の8議員のうち亀井氏と亀井政調会長を除く6議員は29日夜、「議員総会」を党本部で開催(松下氏は欠席したが下地氏らに委任)。連立維持と消費増税法案への署名を党として決定したとしている。亀井氏は30日の会見で「議員総会は私が主宰する。そんなアナーキー(無政府状態)なことではいけない。最終決断は代表の務めだ」と容認しない立場を強調した。
亀井氏はその後、東京都内の個人事務所で下地氏と会談。連立離脱に理解を求めたが折り合わず、協議を続けることだけを確認した。下地氏は国会内で民主党の樽床伸二幹事長代行らと会談し、状況を伝えた。【木下訓明、青木純】
政府が30日に閣議決定した消費増税法案は税率(現行5%)を14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げることが柱。国会で成立し増税が実現すれば、1997年4月の税率引き上げ(3%から5%)以来。法案には消費税収全額を社会保障の財源に充てることを明記した。野田佳彦首相は同日午前の衆院予算委員会で「法案の早期成立に全力を尽くしたい」と決意を表明した。
民主党との事前調整で焦点となった景気との関係について、法案は「経済状況の好転」を税率上げの条件にあげ、経済指標を総合的に勘案し、増税実施を停止できるとした。一方で、政府が新成長戦略で掲げた11年度から20年度に平均で名目3%、実質2%の成長率達成は努力目標と位置付け、増税実施の条件としなかった。政府はリーマン・ショックや東日本大震災直後のような深刻な景気悪化時以外は増税に踏み切る考えだ。一方、将来の消費再増税を示唆する条項は党内の反発に配慮し削除した。
低所得者対策では、8%への増税時に一定額の現金などを配る「簡素な給付措置」を実施。10%への引き上げ後は、国民の納税や社会保障などの情報を一元管理する共通番号制稼働を前提に、税還付と現金給付を組み合わせた「給付付き税額控除」を導入する。【小倉祥徳】
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◆消費増税法案の骨子◆
・消費税率を14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げ
・増税は経済状況の好転が条件。名目3%、実質2%の成長率は努力目標。
・低所得者対策として「給付付き税額控除」を導入。それ以前は簡素な給付措置を実施。
・住宅購入時の負担軽減措置を検討
・所得税の最高税率を45%に、相続税の最高税率を55%に引き上げ
毎日新聞 2012年3月30日 東京夕刊
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