H24.3.22 参院予算委公聴会 藤井聡 公述人意見
【見どころ】
・藤井教授の
学者生命を賭けた公述人意見.
・政府の
虚言(そらごと)を次々と斬る.
・しかも非常に
わかりやすい.
・とにかく
熱い.
※本サイトの資料は,
京都大学 藤井研究室のサイトで公開されているものを転載させていただいています.関係者の方,もし問題があればご指摘ください.
ニコ動版
youtube版

藤井
えー本日はかような機会,頂戴いたしまして誠にありがとうございます.えー京都大学大学院,ならびに京都大学レジリエンス研究ユニット長を勤めさせて頂いてございます,藤井でございます.えーよろしくお願いいたします.
えー本日,あのー皆様におかれましてはお手元の資料…私の名前も記載させていただいております,こちらの資料をご覧頂ければと思います.なお,この資料は京都大学の藤井聡のホームページでも公表いたしている物でございます.
えー本日は,我が国日本の国家予算のあり方を考えるにあたりまして,極めて重大なお話をいたしたいと,いうふうに考えております.
…それは,専門家の皆様方の中には少なくともその一部…少なくともその一部でございますが,もちろん全てではございませんが,極めて重大な虚言(そらごと)が含まれていることがあると,いうことであります.
多くの先生方,国民の皆様方,そんなバカなと,いうふうにお感じかもしれませんしかし,世の中,嘘話が罷り通るという事は何も珍しいことではございません.
例えば,資料の2ページ目をご覧ください.今から700年も前,鎌倉時代の吉田兼好の徒然草の一節でございます.

藤井
世に語り伝ふること
まことはあいなきにや
多くや皆虚(そら)事なり
…これはつまり,世間で言われていることはほとんど嘘話だと,いう事でございます.でさらに,
いひたきままに語りなして
筆にも書きとどめぬれば
やがてまた定まりぬ
つまり学会やテレビ等で好き勝手なことを言って,そのうち筆にも書きとどめぬれば,即ち教科書とかペーパーになってしまえば,どんな嘘話でも正しい物とされ,あげくに政策や法律にまで定まってしまうという,恐ろしいお話でございます.
えーこれは今より日本人がずっとずっと立派であったであろう,大昔の話でございますから,今はそうであっても何も不思議ではないと,いう事はご理解頂けるかと思います.
では,本当に専門家の皆様方の中に,本当に間違った事を口にしておられる方が居るのかどうか,
という事について本日は中でも特に予算編成上,極めて重要な3つの虚言ではないかという疑いのあるお話を,告発申し上げたいと思います.

藤井
ひとつ目のお話,それは3ページ目をご覧ください.
「消費税増税のインパクトは限定的だ」
というお話でございます.4ページをご覧ください.

#P4

藤井
これは,まず異なった理論的見地から…異なった理論的見地からのグラフでございますが,宍戸駿太郎先生のマクロモデルDEMIOSにおいて,消費税増税のインパクトをいくつかのケースで計算したものでございます.
ご覧のように,増税後すぐには影響は出ないのですが,どんなケースでも3年目あたりから景気が大きく減速します.
これはある年次の消費税増税のインパクトは数年間 ―単年度ではございません― 数年間続く事,そして3年ほど経てばその前年,前々年の増税インパクトが累積をして,大きく景気が減速していくこと.これが原因でございます.
いわば消費税増税は,幻の格闘技の技の三年殺しのような効果を持つわけでございます.
\ドッ!/ \ワハハ/

藤井
もちろんこれは特定のたったひとつのモデルの計算結果ではございますが,まっとうなモデルであれば,それらはいずれも同様の効果を算定している事が知られております.
5ページをご覧ください.

#P5

藤井
ご覧のようにひとつの例外を除いて…たったひとつの例外を除いて,どのモデルも,5年も経てば―1年ではないです―5年も経てば,消費税増税によって4%〜6%,GDPが棄損する事が示されております.
なお,その挙動不審のモデルとは,なんと政府の内閣府のモデルでございます.
驚くべき事に,このモデルは消費税増税の破壊的インパクトは年々無くなっていくという…私ごときにはですね,理論的には全く理解できない挙動を取ってございます.
このような重大な疑義を孕んだモデルを未だ使い,これによって消費税増税を正当化しているのだとすれば,それは,政府の国民に対する詐欺・詐称であるという,重大な疑義が ―断定はしておりません― 疑義が,浮かび上がります.
ぜひ,本モデルの抜本的見直しを政府に強くお申し入れ頂きますよう,国会の先生方には平にお願い申し上げたいと,思います.

藤井
さて,以上が理論的な指摘でございましたが,経験的にはどうかという点について,6ページをご覧ください.

#P6

藤井
これは…いくつかの事例があるんですが,最もわかりやすい事例を今日は持ってまいりました.1929年のアメリカの大恐慌の時の,政府の借金の対GDP比率のグラフでございます.
ご覧のように,消費税の導入を始めた…はじめとした,緊縮財政を敷いたフーバー大統領期,財政は明確に悪化し続けております.借金は増え続けております.
増税をしたのに借金は増え続けていると.
このときのしょ…で,えーちなみに…えー積極財政を敷いてからそれが減っていくという構造でございます.
で,このときの消費税導入後,GDPはなんと,約半分にまで,失速しております.
この歴史的事実を踏まえれば,「消費税増税の影響は限定的」だという話が,単なる嘘話であるという疑義が ―当然またこれ疑義でありますが― 疑義が濃厚であるということがわかります.

藤井
では,次のお話にまいりたいと思います.
7ページをご覧ください.
それは,「社会保障費の自然増に対応するには増税するしかない」というものでございます.
これは,学者の先生方のみならず多くの政治家,メディアが繰り返し喧伝するもので,国民もそれはそうだと信じ,だから増税も仕方がないと考えている風潮があるように思います.
しかしこれも,極めて悪質な,真っ赤な嘘である疑義が濃厚であります.
8ページをご覧ください.

#P8

藤井
この図の棒グラフはGDP,赤の折れ線グラフは税収なのですが,ご覧のように,全くもって両者はぴたりと一致してございます.
これはもう,当たり前の事でございますが,GDPが増えれば税収が増えると…いう当然の結果で意味を…事を意味してございます.
こうした関係は一般に先ほどもお話しございましたですが,税収弾性値という数値で表現されているのですが,あー先ほどご紹介のあった,えー昨年末の財政制度等審議会のペーパーが…

藤井
こちらがあるんですけども,これを精読いたしますと,このグラフに示されている名目GDPと税収がよく一致しているという事実を,なんとwあえて科学的でないと
―こんだけ一致しているんですけども―
あえて科学的でないと言って切り捨てて,あえて経済成長による税収効果は低いと…先ほど数値のなんか1.1という数値を…これは私の目から見てあの…
私あの林知己夫賞という統計学のあの賞を取った事があるんですけど,私の統計学の専門家の見地からして,
何言うてはんのやろ?と.
\ワハハハ/

藤井
…いうふうな感触を受けるような,結論を着けておられます.
しかし,学者として断定いたしますが,その部分の議論は極めて非科学的であって,統計学的にはデタラメとすら言い得るような議論が掲載されています.
従って,「経済成長による税収増加が低い」という結論は極めて重大な誤謬が潜んでいる―これもまた疑義でありますが―疑義が濃厚であり,そのペーパーに書かれているよりもずっと高い税収弾性値が実態である可能性が極めて濃厚であると,申し上げたいと思います.
さらに,言いますと,消費税率には常識的な上限があって,ずっと上げ続けていくということは,これは不可能であります.
しかし,社会保障費は当面の間増え続ける見込みだという事は皆さんご案内の通りでございます.ですから
増税で社会…高齢化社会に対応という論理そのものがwハナから破綻しているw
…疑義すらも考えられるわけであります.

藤井
一方で,国民と政府の努力さえあれば,経済成長には制限がありません.
ですから,高齢化社会に対応するために,いま目指すべきは,増税ではなく経済成長しか考えられないと,いう事を断定的に申し上げておきたいと思います.
では,経済成長は可能なのでしょうか?
もちろんそれは可能であります.
しかし,多くの専門家の皆様も,「経済成長なんてできない」という論調をいつも,いつも,いつも口にされます.
しかし,もちろんそれも真っ赤な嘘である疑義が濃厚であります.
9ページをご覧ください.

藤井
それは…あーこれは本日最後の3つめの嘘である疑義があるのではないかというお話の紹介でございますが,それは,「積極財政では経済は成長しない」というお話でございます.
彼らは,積極財政は
民業を圧迫したり,
円高を誘発したりして,
結局財…積極財政の効果は相殺されると―これはノーベル経済学賞の賞もある…あのモデルもあるんですが―相殺されると主張いたします.
そうした論理の全ての根底にあるのが,全ての根底にあるのが,国債を発行すると…「国債を発行すると金利が上がる」と…いう論理なのですが,これがそもそも事実と乖離していると,いう事をお話したいと思います.
10ページをご覧ください.

#P10

藤井
ご覧のように,国債発行が年々増え続けてござ…増え続けてございます.しかしながらこの理論に反して,長期金利は年々w
―これ理論的には上がっていくはずでありますし,あの理論が間違っていれば…一定でも良いんですけど―
なんとw真逆に低下し続けているというwわけのわからない,理論的にはわけのわからない行動を取ってございます.
従って,このグラフ1枚で,「積極財政では経済成長しない」という理論,論理そのものが,現在の,現状の日本においては破綻している,適用できないという事がわかります.
その事は,11ページのグラフからより明確に示されております.

#P11

藤井
このグラフは…いろいろな情報を掲載しておりますが一番下の,一番下の緑色の財政収支を…ちょっと分かり難いんですが,緑色の財政収支の折れ線だけにご着目ください.
これは政府の収入―つまり税収と出費との差額―財政収支を示してございます.
ご覧のように,バブル期右肩上がりで財政収支は改善していきます.
しかし91年のバブル崩壊で当然ながら一気に右肩下がりに悪化します.あ,あの赤の矢印描いてる通りであります.
しかし,この時積極的な,徹底的な積極財政を行った結果,93年頃から財政は改善し,財政収支の悪化は和らいでいきます.
ところが,97年に増税をする緊縮財政を採用したとたんに,財政は再び右肩下がりに悪化いたします.
ただし,それを見かねた小渕先生が99年に徹底的な積極財政を果たします.そうすると,右肩下がりだった財政収支は一気に,それも一気にですよ.V字回復をし,右肩上がりに改善していきます.
しかし…翌年には残念ながら小渕先生は他界されます.
そして残念ながら…本当に残念なんですがその後,小泉内閣による徹底的な緊縮財政が再び始められ,ご覧のように2000年頃,せっかく財政収支が改善していたのに,その改善がぴたりと止まってしまったのであります.
つまり,この経緯を素直に,虚心坦懐にご覧頂きますと,積極財政は確実に財政を健全化させていることは明白でございます.

藤井
一方で,緊縮財政を始めた橋本内閣,小泉内閣は財政を悪化させてしまったということが,過去の日本の実際の経験なのであり,これは先に紹介した,アメリカの大恐慌の経験とぴたりと符合しているのであります.
このことはつまり,「財政出動は無効だ」という話が,完全なる嘘話である疑義を,明確に示しております.
その点をより具体的に示したのが12ページでございます.

#P12

藤井
この赤い線は名目GDP,青い線は公共事業費…これ左肩が…あるのがこれ公共事業費でこの右肩がこう伸びているのがこれが,灰色の線がこれは輸出であります.
ご覧のように,赤い線のGDPは,公共事業が多い時には伸び,あるいは輸出が伸びる時にも伸びているのであります.
そしてどちらも小さくなればGDPは縮小すると.
…まこれは定義上あたりまえなんでありますが…定義上自明なのですが,統計分析からは公共事業のGDP上昇効果が輸出のそれのじつに4倍程度であるということが,まぁ示されたんですが.
…まぁこの手の分析はいろいろやり方によって,いろいろ変わってくる事はあるんですが,いずれにしてもこの結果は,「積極財政では経済は拡大しない」という説が,明らかに嘘であるという重大な疑義を―これもまた疑義でありますけども―明白に示しているのであります.

藤井
このように,
「消費税増税のインパクトは限定的」だとか,少…
「高齢化社会では増税派不可避」だとか,
「積極財政では景気拡大は無理」だとかいう話は
全て論理的に,実証的に,
簡 単 に 論駁 できる 完 全 な 嘘話
である疑義が,極めて,極めて濃厚であるのでございます.
では,真実の正しい経済政策というものはどういうものなのでしょうか.
14ページをご覧ください.

#P14

藤井
この表は,インフレ期とデフレ期でなすべき経済政策を完全に入れ替えるべきであると…インフレの時はインフレ対策,デフレの時はデフレ対策をすべきであるという事を主張するものであります.
インフレとはそもそも経済が過熱しすぎている状況ですから,その熱を冷ますために緊縮財政,増税等が当然必要になってまいります.
一方,デフレの時には経済が冷たくなっている状況ですから,経済を温める対策が必要であります.
だから,デフレの時には消費税増税…例えば,あるいは,公務員人件費削減等の対策などは論外中の論外なのであるということを強く申し上げたいと思います.
それとは逆に,投資減税などの積極財政などが必要なのであります.
つまり,インフレかデフレかの状況を見ながら適切なタイミングで,適切な経済政策を図ることこそが,正しいやり方なのであります.
…しかしながらこれは,言われてみれば本当に簡単な話で,中学生でもわかるような話やと思うんですが,専門家の方はこの簡単なお話を口にされません.
なぜか.その答えを15ページに書かせていただいております.

#P15

藤井
じつは,大恐慌以降,ケインズ先生の理論のおかげで,日本という唯一の愚かな例外を除いて,デフレは世界中で生じなくなりました.
その結果,皮肉にもケインズ…ケインズ先生は,ケインズ自らのお力のおかげでケインズは死んだと言われてしまったわけであります.
インフレを前提とした…そしてインフレを前提とした理論だけが発展し,それが学会や,定説の教科書として,定まってしまったのであります.だから今,多くの専門家がデフレに対する処方箋を知らないという事態を迎える事となったのであります.
ただし,リーマンショックを経験したアメリカでは,既にここで申し上げた正しい経済政策の議論が始められております.
ぜひ我が国日本でも,そんな当たり前の,理論的,思想的な大転換を,全ての学者の先生方,そして,全ての政治家の皆様方が,果たさなければならないのではないかと,ひとりの学者として強く…強く強く強く申し上げたいと思います.
では,結論でございます.16ページをご覧ください.

#P16

藤井
論理的,実証的,理性的に考えれば,デフレの今,消費税増税などによる緊縮財政はデフレを悪化させ,財政を悪化させ,倒産と失業者を増やし,そして自殺者数を増やし,あげくに被災地復興の大きな妨げになるという事は
―些細なもので恐縮ではございますが…私の学者生命の全てを賭して断定いたしますが―
明々白々なのであります.
景気対策,被災地復興,円高対策,そして財政健全化のために―財政健全化も含まれてございます―財政健全化のために今求められているのは
積極財政をおいて他に何もございません.

藤井
おりしも東日本の被災地に必要なのは積極財政であることは,万人が認めるところであります.
さらには,我が国は今,首都を壊滅させ得る直下地震が,10年以内に十中八九の可能性で起こるであろうことが,そして東日本大震災の10倍以上もの被害をもたらし得る西日本大震災も,20年以内に同じく7〜8割の可能性で生ずることが予期されております.
それに対する備え,すなわち国土強靱化には,例えば年間で10兆円や20兆円といった規模の予算が求められております.
しかし今回の予算ではそれは,たった4800億円しか計上されておりません.
これは本当に必要な数字のたった数%…消費税よりも低いぐらいの水準のことしか計上されておりません.
この程度の予算であれば,我が国は何百兆円もの経済被害を受け,何万人…何十万人もの民が―無辜の民が―殺められることとなるでしょう.
逆に,10年累計で例えば100兆円200兆円の財政出動があれば,日本のデフレは終わり,力強く経済が成長し,国土が強靱化され,多くの,多くの日本国民が救われる事となるでしょう.

藤井
この当然の理性的議論を全て忘れ去り,万が一にも,財政を出動せず財政規律を過度に慮りつつ消費税を増税するような愚策が罷り通ったとするならば,その方針は経世済民―つまり民を救う―どころか,ただただ何百万,何千万という民を苦しめ続けることになることは必定なのであります.
そうである以上,政府そして国会の先生方にはもうこれ以上,不次の虚言に惑溺されて,国民を殺め続けるような蛮行を今すぐに,今すぐにお辞めいただく勇気をこそ,今まさに持たれません事を…
―私が賭ける事ができる全てのものを賭けまして―
心から強く,強く祈念いたしまして私の公述とさせていただきたいと思います.
どうもありがとうございました.
【編集後記】
非常に
論理的で,しかも
わかりやすく,そして
熱い.
素晴らしい公述人意見でした.(ノリノリで書き起こしてしまった)
民主党と
マスコミが必死になって作り上げようとしている
「増税やむなし」という
空気.
これに
騙されそうになっている方に,この公述人意見をぜひ
見せてあげて頂きたい.
しかし公述後に委員長が「学者辞めて政治家になる事をお勧めします」なんて言ってたけど,意外と本心だったんじゃないのかな.