自転車の利用環境向上のため国土交通省と警察庁が設置した有識者会議は30日、最終会合を開き、車道での走行路整備を柱とする国への提言案「みんなにやさしい自転車環境」をまとめた。今後の検討課題として、国が自転車政策の目標を設定することなども盛り込んだ。来週後半に両省庁に提出する。両省庁は提言を踏まえて今夏をめどに、国の出先機関や自治体向けに、自転車施策の「ガイドライン」を作成する。
提言案は、走行路整備を効率的に進めるため地域ごとに行政や警察、住民、利用者ら幅広い関係者の参加で、ニーズに応じた自転車ネットワーク計画を作成するよう求めた。
実際の整備は車道上で検討し、車の制限速度や交通量に応じて(1)自転車道(2)自転車レーン(3)車道で車と混在--を選択する。ガイドラインでは制限速度や交通量について具体的な数値を定める。
これまで4回の会議で大きな論点となった交差点での走行路については、自転車レーンの場合、直線的に矢印を路面に表示して接続させるやり方を示した。自転車道は原則、一方通行にすることを今後の検討課題とし、具体的な整備方法は提示しなかった。
また、利用環境向上には、自転車利用者だけでなく車のドライバーや歩行者にも自転車のルール徹底が必要として、学校や運転免許更新、地域、販売店などを通じて周知を図るとした。駐車対策や放置自転車対策、エコ通勤など自転車の利用促進策にも言及した。
一方、自転車に関する今後の検討課題として、自治体の予算確保▽母親が子供を乗せた自転車などの歩道走行▽自転車の利用状況や事故などのデータ収集・分析▽自転車の通行ルール簡素化--などを挙げた。【北村和巳】
・自転車の走行路は車道上に整備することを検討する
・行政や警察、利用者らの幅広い参加で計画を策定する
・自転車走行路が交差点を通過する際には、その前後と連続的・直線的に整備する
・全ての道路利用者に自転車の通行ルールを徹底させる
提言案は冒頭、「自転車は『車両』で、車道通行が大原則」と明示した。70年前後の車との事故急増を受け緊急避難的に始まった歩道走行が一般化した現状を改め、本来のルールに戻す姿勢を鮮明にした。また、歩道走行が「車両」である意識を薄れさせて新たな危険を生み出している状況を指摘。車道走行を促すさまざまな対策を列挙した。
ただし、自転車が歩行者と混在して走る歩道「自転車歩行者道」が10年3月時点で約8万600キロに上り、自転車用走行路の96%を占めるのが現状だ。現場では「歩道の方が安全」と車道走行に抵抗感が根強い。
提言案は自治体の自転車政策のマニュアルになるが、掛け声だけでは実効性はおぼつかない。国は事故発生率を調査し、目に見える形で車道走行の利点や安全性を証明する必要がある。併せて健康面や環境面の利点もデータで示し、自治体が政策の根拠にできるマニュアルに仕上げていくことが今後の課題だ。【馬場直子】
毎日新聞 2012年3月30日 22時07分(最終更新 3月30日 22時31分)
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