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政府 避難区域の見直しを決定
3月30日 20時25分

政府 避難区域の見直しを決定
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政府は、30日夜、原子力災害対策本部を開き、東京電力福島第一原子力発電所の事故で設定した福島県の3つの自治体の避難区域を見直すことを決め、このうち田村市と川内村では、来月1日に警戒区域が解除されることになりました。

政府は、今の警戒区域と計画的避難区域について、年間の被ばく線量で20ミリシーベルト以下が確実な地域を住民の早期帰宅を目指す「避難指示解除準備区域」に、20ミリシーベルトを超えるおそれがある地域を、引き続き避難を求める「居住制限区域」に、50ミリシーベルトを超える地域を、原則、長期にわたって居住を制限する「帰還困難区域」に見直す方針で、自治体側と調整してきました。
そして、30日夜、野田総理大臣らが出席して原子力災害対策本部を開き、避難区域が設定されている11の市町村のうち、調整が整った田村市と川内村、南相馬市の3つの自治体の区域を見直すことを決めました。
具体的には、田村市に設定された警戒区域は、「避難指示解除準備区域」に、川内村に設定された警戒区域は「避難指示解除準備区域」と「居住制限区域」に見直されます。
この2つの自治体は、来月1日に警戒区域が解除され、およそ1年ぶりに自由に立ち入りができるようになります。
一方、南相馬市に設定された警戒区域については、3つの区域に見直すことは決まったものの、防犯上の準備が必要なことから、区域の解除は来月16日に行われます。
野田総理大臣は「ふるさとへの帰還に向け、政府一丸となって生活再建の環境整備や雇用の創出などに取り組みたい。事故発生から1年が経過した現在も、多くの住民がふるさとを離れ、長く困難な避難生活に耐えている現実を決して忘れることなく、被災地や被災された皆様にしっかりと寄り添い、国が責任を持って対応していくことが重要だ」と述べました。
政府は、残る自治体についても、調整が整いしだい段階的に避難区域の見直しを行うことにしています。

新たな3つの区域とは

警戒区域と計画的避難区域は、放射線量に応じて「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の3つの区域に見直されます。
「帰還困難区域」は、現時点で年間の被ばく線量が50ミリシーベルトを超える地域で、区域の境界にバリケードを設けて避難の徹底を求めます。
少なくとも5年間は住むことができません。
区域内への立ち入りは、これまでと同様に国と市町村が協議したうえで認め、引き続き防護服の着用や線量計の携帯が必要です。
区域の外に出るときは、放射性物質が付着していないかを調べるスクリーニング検査も必要です。
「居住制限区域」は、年間の被ばく線量が20ミリシーベルトを超え、50ミリシーベルト以下の地域で、将来的に住民が帰ることができるよう放射性物質の除染のほか、道路や水道などインフラの復旧を計画的に実施します。
国や自治体の許可を得ることなく、自由に立ち入ることができます。
防護服の着用や線量計の携帯、スクリーニング検査はいずれも必要ありませんが、区域内で寝泊まりすることは認められません。
また、事業を再開するには国や自治体の特別な許可が必要です。
「避難指示解除準備区域」は、年間の被ばく線量が20ミリシーベルト以下になることが確実だと確認された地域で、除染やインフラの復旧を進め、住民の早期帰宅を目指します。
立ち入りは自由ですが、区域内で寝泊まりすることは認められません。
事業は通勤する場合にのみ再開が認められますが、病院や福祉施設、飲食店などは認められません。
農作業はできますが、コメについては、ことしは作付けすることができません。

それぞれの自治体の反応

福島県田村市の冨塚宥*ケイ市長は「市としては、これまで区域を早く解除するよう国に再三求めてきたが、きょうまで実現されず悔しい思いだった。区域の解除は町の再建への第一歩だ。どのような方法で以前のような町を取り戻すか住民と一緒に取り組んでいきたい」と話していました。
また、冨塚市長は、防犯や防火体制の構築が今後の大きな課題だという認識を示し、「警察や消防など関係機関と連携して住民の安全を守っていきたい」と話していました。(*「ケイ」は「日」へんに「景」)
また、福島県川内村の遠藤雄幸村長は、NHKの取材に対し、「これまで警戒区域が原発からの距離で一律に区切られてきたが、放射線量に合わせて、地域の設定を見直していくことはわれわれが要望してきたことであり、評価したい。復興していく新たに生まれ変わる川内村にとっては、いいタイミングの区域の見直しであり、村民が村に戻ってきやすくなると思う」と述べました。
そのうえで、「村に戻ってくる人にはしっかりとサポートし、それ以上に、理由があって帰りたくても帰れない村民の人たちにも寄り添っていきたいと思っている。住民にはいろいろな選択肢があり、すべてのことを村が受け止め、住民サービスを展開していきたい」と述べ、医療体制の充実や雇用の確保など、村が抱える課題に積極的に取り組んでいく考えを示しました。
一方、来月16日に警戒区域が解除される見通しになった福島県南相馬市の桜井勝延市長は「時期が決まることで市としても住民に今後のことを説明できるようになるし、避難区域にある事業所は操業再開の見通しが出てくるので経済の復旧という点では希望につながると考えている」と話しました。
一方で桜井市長は「住民の不安が払拭(ふっしょく)されたわけではなく、とりわけ除染について今後どのように進めるのか国にしっかり示してほしい。また、インフラなどの復旧には数年かかる見通しの地域もあり、今後、具体的な工程を住民に示していきたい」と述べ、国に対し避難区域の除染計画を早急に示すよう求める一方で、市としても区域内の復旧作業を急ぐ考えを示しました。
福島県の佐藤知事は「避難区域が見直される3つの自治体にとって、意義のあることだと思っている。今後も、政府にはインフラの復旧や除染、それに医療など、生活に必要な要素について自治体の意見を丁寧に聞いて対応してほしい」と述べました。
また、佐藤知事は、区域の見直しが来月以降にずれ込む自治体があることについて、「自治体によって事情が違うので、政府には、まず話を聞いてもらいたい。県としても、住民の帰還後もさらに財政措置を要望するなど広域自治体としての役割をしっかり果たしていきたい」と述べました。

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