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東京湾 周辺河川の放射性物質
3月30日 18時8分

東京湾 周辺河川の放射性物質
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原発事故を受けて、東京湾などに流入する河川の放射性物質についての調査結果がまとまり、水からは放射性物質は検出されませんでしたが、河口に近い地点の川底の泥や砂からは1キログラム当たり数十ベクレルから数千ベクレルの放射性セシウムが検出されました。
環境省は付近で生活しても健康への影響が出るとは考えられないとしたうえで、今後も調査を続ける方針です。

この調査は、原発事故によって首都圏などにも広がった放射性物質が、東京湾や周辺の水系にどの程度流れ込んでいるか調べるために環境省が行いました。
それによりますと、東京湾の河口に比較的近い8つの地点では、川底の泥などに含まれる放射性セシウムの濃度は1キロ当たり59ベクレルから4700ベクレルでした。
このうち、都内を流れる隅田川の両国橋付近では580ベクレル、荒川の葛西橋付近で700ベクレル、東京と千葉県の間を流れる旧江戸川の浦安橋で380ベクレル、千葉市を流れる印旛放水路の新花見川橋で1770ベクレル、千葉県市川市を流れる真間川の三戸前橋では4700ベクレルなどとなっています。
一方、川の水自体からは、いずれも放射性セシウムは検出されませんでした。
このほか、関東地方の湖や沼では、霞ヶ浦が250から1300ベクレル、手賀沼が1090から7400ベクレル、印旛沼が440から1250ベクレルなどでした。
結果について、環境省は、大気中の放射線量自体が比較的高い場所や上流から放射性物質が移動してくる下流付近で、濃度が高い傾向があると分析しています。
そのうえで、環境省は「水による放射性物質の遮蔽効果もあり、付近で生活するうえで健康影響が出るとは考えられないが、大雨などによって下流にさらに放射性物質が移動する可能性もあり、自治体などと協力しながら調査を続けていきたい」としています。
調査結果は、環境省のホームページで公開されます。

専門家“濃度の変化に注意を”

環境省の調査に先立って、去年、首都圏の河川や海の底にたまった放射性物質を測定した近畿大学の山崎秀夫教授は「原発事故で各地に降った放射性セシウムは雨によって流され、川底に泥と一緒に蓄積して、下流に向かって移動している。今後、川の水量が多くなる夏にかけて放射性セシウムは河口付近にさらに蓄積するとみられる。調査ポイントを増やして汚染の広がりを調べるとともに、濃度の変化に注意を払うべきだ。また、魚などに影響が出ないか検査の回数を増やして監視を強める必要がある」と話しています。
放射性物質の魚への影響に詳しい東京海洋大学の神田穣太教授は「関東地方の湖や川に堆積している放射性セシウムの多くは粘土に吸着しているとみられ、一般的には餌などを通じて魚の体内に取り込まれたとしても、粘土と一緒に再び排出されると考えられる。ただ、これまで、関東地方でも湖や川の魚から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたことがあり、詳しい仕組みは解明されていない。暫定基準値が改められ、基準が厳しくなることから、河川の汚染状況の変化も含め、魚など生物への影響をさらに詳しく調査する必要がある」と話しています。

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