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性革命で女性は幸福になったか―肯定派の主張

アン・パチェット

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 革命には、後戻りできないという共通点がある。歴史を振り返ると、もし別の方向に行っていたら、と思うかもしれない。おそらく、英国の植民地開拓者に憧れるあなたは、アメリカ革命の結末を後悔する。馬で畑を耕したいとの考えの持ち主は、産業革命は大失敗でしかないと感じるだろう。

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ピルの登場で、女性たちは、目も眩むほどの「自由」を必ず実行した。選挙権を得るために行進して刑務所送りとなった婦人参政権論者が、必ず投票したように

 しかし、そういった嘆きは個人的なものに過ぎない。いくら嘆いても過去は変えられない。性革命が女性に産まない選択を与えたことで、アメリカの家族が崩壊し、娘や妻を概して尻軽女に変えたとしても(気を揉むのは個人の自由だ)、女性を台所に戻せると考えるのはもうあきらめた方がいい。(台所といっても、どれだけ多くの「革命」が気に食わないかによって違ってくる――洗濯板と固形石けんのある台所なのか、はたまた英国王の絵が飾られた燻製室付きの台所なのか。)

 正直な話、不満を感じているのはあなただけではない。一般的に「進歩」と呼ばれながら、米国の家族構造を壊したと私が信じるものは数多く存在する。たとえば、ソーシャル・ネットワーキング。フェイスブックは、我々の繁栄に欠かせない、人と人とのつながりを深めようとしている。しかし、実際にフェイスブックがしていることはそうしたつながりを阻むことであり、人々をより孤独にしている。また、幼児にテレビを見せ、アップルの「iPad(アイパッド)」で「アングリー・バード」のゲームをやらせるのもいかがかと思う。とはいえ、過去に対する私のイメージがより理想的と言うだけで、世界中の携帯電話、テレビ、ノート型パソコンのMacBook(マックブック)をごみ廃棄場に埋められるとも思わない。

 個人的に不快と思う「進歩」に対して、私がどう対処しているか。それは、参加しないことである。私は、ツイッターでつぶやかないし、携帯メールも書かない。テレビも見ない。性革命を不快と思うなら、遠ざければいい。たとえば、受胎調節を容認しないなら、使わなければいい。もしあなたが私のようにカトリック信者で、受胎調節が勤務先のカトリック機関の医療保険プランでカバーされていても、使う必要はないのだ。抗議の意味で捉えればいい。あなたが、性に奔放などこかの誰かの受胎調節のために金を払うことに納得がいかないのなら、立ち止まって、あなたの税金の使われ方に関する問題の全リストを作成することだ。おそらく避妊はトップ10には入らないだろう。

 性革命は、ピンク色のプラスチックのケースに入った避妊ピルを引っさげて登場したが、多くの異性と寝るという問題ではなく、子どもを持つ時期と人数を決められる、という問題だった。それは、私にとって、子どもをまったく持たない自由を意味していた。それは静かな革命の使い方だったが、まったく妥当なものだった。私は子どもを欲しいと決して思わなかったので、自分が素晴らしい親になるとは思えなかった。子どもを欲しいと思わず、良い親にならないと感じ、私と同じ選択を考えた人はまだ他にもいるだろう。

 性革命に関して後悔が述べられるとすれば、おそらく我々は、これまで不十分だった方法について考えるべきだ。より良い状況で考えれば、進歩があるかもしれない。

 まず、我々の社会の若い女性に、優れた教育と家族の愛と支えを与え、素晴らしいロールモデルをたくさん示して力づけよう。そうすれば彼女らは、自分が信頼し、かつ大事に思ってくれる相手とセックスしてもよいと思うまで待つ強さを持てる。また、若い男性にも同様の教育と愛を享受させる。物事を楽にするために、多くの下品な女性の画像も削除しよう。それらは、他人の価値に関する間違った考えを男性に与えかねない。

 各人の準備ができた時、受胎調節を与える。そうすれば、子どもが欲しいかどうか、いつ子供を持つかを決めることができ、性病予防というおまけも付く――我々は皆、理想を持っている。私も例外ではない。

 受胎調節が登場した時、女性たちは、約束された目も眩むほどの「自由」を必ず利用した。それは、選挙権を得るために空腹を抱え行進し、刑務所送りとなった婦人参政権論者が、必ず投票したのと同じである。しかし、性革命の時代と今日の奔放な性を楽しむティーンの間には、あまりにも大きな開きがある。若い女性は、自由にセックスできることは知っているのに、望まない妊娠が回避可能であることを忘れている。サラ・ペイリン前アラスカ州知事の娘、ブリストルは、有名なティーンエイジの母親となり、赤ちゃんを抱く「クールな」高校生としてリアリティー・ショーさながらの関心を集めた。こうなると、革命には「再訓練コース」が必要なのではないかと時々思う。

 生殖は、地球上の生命の目的そのものだ。その行為の側面と結果がいかに論じられ、義務付けられ、違法とされ、後退しようとも、セックスは限りなく続く。性革命に批判的で後悔している向きは、女性の権利と自由が、模索を続ける社会の唯一の所産とみる私のような者と協力すべきだ。我々は共に、生まれてくるすべての子どもが誇れるような国を作ろうではないか。

 まず、ベイビー・シャワー(出産前のお祝いパーティー)の代わりに、育児支援策のヘッド・スタート・プログラムを行うのはどうだろう。多くの妊婦は、クマのぬいぐるみをもらうよりも出産前健康診断や栄養指導を受けたいと考えている。それならば、「ヘルスケア」「デイケア」「教育」の「3人のゴッドマザー」を出産に招待しよう。ヘルスケアは分娩と健康診断の費用支払いに、デイケアは両親が外で働かなければならない場合に、教育は、子どもを人生の成功の軌道に乗せるためだ。これが革命の理論的帰結かどうかは定かではない。しかし、確かにそれは、生殖的なセックスの当然の結末だろう。こういった権利を生まれてくる子に認めなければ、両親は自制するとあなたは考えるかもしれない。しかし、それはもう試したし、うまくいかなかった。

 人間が物事をややこしくする能力ときたら、本当に驚くべきものがある。しかし、これまでもそうしてきたし、これからもそうだろう。セックスは、人間の行為のなかで最も素晴らしいもののひとつであり、それは尊重に値する。私が最後に確認した際も確かにそうだった。それは、我々すべての根源だ。おそらく、まぎれもなくその意味において、我々は何とかして共通項を見出すべきなのだ。

(パチェット氏は、ベストセラー作『State of Wonder』『Bel Canto』など6つの小説を書いている)

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