大阪市交通局の非常勤嘱託職員(32)=27日付で解雇=が労働組合名義の職員リストを捏造(ねつぞう)した問題で、大阪維新の会の杉村幸太郎市議(33)=1期目=がリストの存在を労組に確認せず、公表に踏み切っていたことが分かった。一部の維新市議団幹部も事前に了承しており、「裏付けに追われていたら議員活動などできない」と開き直る。専門家からは「責任を取るべきだ」との批判が出ている。
市議団は30日、記者会見を開き、交通局と労組が組織ぐるみで市長選に関与していたと断定的に指摘したことへの反省の意を示した。しかし、「真偽が確定しなければ質疑できないなら、市民の真実を知る権利の障害になりうる」と主張、謝罪の言葉はなかった。
杉村市議は2月10日の市議会市政改革特別委員会で「交通局と組合が組織ぐるみで市長選に関与していたことを裏付けるものだ」と、リストの存在を指摘した。リストには前市長の推薦人紹介カードの配布・回収状況が記され、「市労連」(市労働組合連合会)の文字があった。ところが、労組には「調査に応じるわけがない」としてリストが本物かどうか確認を取らず、市議会では「信ぴょう性が非常に高い」「(リストを提供した元職員は)捏造しようがない立場だ」と強調した。
杉村市議によると、元職員は初めて会った昨年11月以後、労組の違法選挙ビラなど次々に告発し、労組追及の情報提供者として信頼していたという。リストのデータが渡ったのは公表9日前の1月28日。市議団の坂井良和団長(66)=5期目=は「一連の流れの中で一つだけ偽物が混じっていたら、気付くのは至難の業」とかばう。
会派内のチェックも機能しなかった。議会で取り上げることは美延映夫(みのべ・てるお)幹事長(50)=3期目=がゴーサインを出し、他の市議団幹部は知らされていなかった。会派内は「偽物では」と懸念する意見も強かったといい、坂井団長は「疑問を持っていた。相談してくれていれば」と不備を認める。
捏造発覚前、労組が、維新の対応を批判すると、市議団は機関誌「維新ジャーナル」に「組合は、リストは誰が何の目的で加工したのかを明らかにすべきだ」との抗議文を掲載した。市議団のホームページでは今もこの抗議文を載せ続けている。【津久井達、原田啓之】
内部通報を調査する大阪市公正職務審査委員長を務めた辻公雄弁護士の話 内部通報には「ガセネタ」がつきもの。ぬれぎぬを着せる可能性もあり、非公開の場で組合に突き付けるなどして事前に確認を取るべきだった。民主党の偽メール事件と同様、パソコンなら本物に似せたものを作れる。今回は慎重さが足りず、間違った以上は責任を取るべきだ。
毎日新聞 2012年3月30日 15時00分(最終更新 3月30日 15時04分)
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