経済産業省原子力安全・保安院は6日に開いた原発の老朽化に関する専門家の意見聴取会で、前回示した九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)の原子炉圧力容器を健全とする記述を資料から削除した。保安院は「前回の見解を取り消したわけではない」としているが、委員からは圧力容器がもろくなっている可能性を示すデータの評価方法などに異論が出ている。
保安院は先月22日の聴取会で、それまでの議論を整理し、「電子顕微鏡で圧力容器の試験片を観察した結果、健全性は確保されている」などと見解をまとめた。だが、6日に示した資料では「確認したデータなどから健全性は確保されていると評価して良いか」という表現にとどめた。
石垣宏毅・高経年化対策室長は「前回の見解を撤回するわけではない。まだ議論が終わっていないという意見もあるだろうから慎重に書いた。月内に審査案をまとめる」と説明した。
圧力容器は中性子を浴びてもろくなるため、容器と同じ材質の試験片を数年~十数年ごとに調べている。1号機では劣化に伴って上昇する材料の温度が93年に56度だったが、09年には予想を超える98度まで上がっていた。
九電は聴取会で温度変化は予測の範囲内と説明。だが、委員を務める井野博満・東京大名誉教授は、容器の溶接の有無を無視したデータの評価方法や評価基準自体の信頼性を疑問としている。【関東晋慈】
毎日新聞 2012年3月6日 20時40分(最終更新 3月7日 0時45分)
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