掲載日 2001年8月31日
ITを経営に活かすことに早くから積極的だったスルガ銀行。顧客との接点であるチャネルも、従来型の店舗にこだわらず、顧客にとってより便利であることを目指して柔軟に模索してきた結果、テレフォン・バンキングやインターネット・バンキングをいち早く実現してきた。このインターネット・バンキングを支えているのが、IBMのe-business ホスティング・サービスだ。
お客様ニーズ
インターネット・バンキングは、新しいビジネス・チャンス
日本の銀行で初めて全顧客を対象としたCRMシステムを採用するなど、ITを経営に活かすことに早くから積極的だったスルガ銀行。個人顧客や中小企業経営者向けのサービスに特化する「リテール戦略」を打ち出して以来、とりわけCRMの発想を大切にしている。顧客との接点であるチャネルも、従来型の店舗にこだわらず、例えば車両店舗を導入するなど、顧客にとってより便利であることを目指して柔軟に模索してきた。テレフォン・バンキングやインターネット・バンキングの実現も、同様の考え方によるものだ。静岡・神奈川といった従来からの商圏には徹底的に密着し、また全国区では無店舗で拡大しながら、つねに顧客の方を向いてビジネス・チャンスを掴んでいく。そのための取り組みのひとつであるインターネット・バンキングを支えているのが、IBMのe-business ホスティング・サービスだ。
ソリューション
スピードをもたらすe-business ホスティング
スルガ銀行がIBM e-businessホスティングを採用してインターネット・バンキングのプロジェクトを開始したのは1999年5月だが、それからわずか半年未満でオープンすることができた。インターネット・バンキングは金融取引を行うサイトである以上、システム開発の裏側では勘定系システムとの接続など、さまざまな作業が必要となる。それを考えれば、半年という期間は極めて短い。多くの金融システムの構築を手がけてきたIBMの実績も、バーチャル支店の短期構築に役立っているようだ。
さらに、アライアンス戦略に基づいてバーチャル支店を次々に立ち上げるにあたり、Webサイトのテンプレート化という形でシステム開発の効率アップが実現。これにより、新しく開発するサイトにバグが発生しないという安定性と、立ち上げまでの開発期間の短縮が可能になった。現在スルガ銀行では、バーチャル支店の企画から立ち上げまでを、わずか3週間程度で完了することもある。ホスティングを利用せず、手作りでシステム構築を行っていたのでは、これほどのスピードを達成するのは難しかっただろう。
ホスティングを拡張し、オリジナリティーを加味
スルガ銀行は、e-businessホスティングの「地銀共同インターネット・バンキング」サービスを効率よく使っている。これは、複数の地方銀行のシステムが共通の仕様で開発され、ホスティング・サービスも共同で提供されるというもの。ポイントは、いかに「地銀共同センター」の枠組みを崩すことなく、スルガ銀行はもちろんのこと各バーチャル支店のオリジナリティーを加味していくことができるか、にある。スルガ銀行の一連のインターネット・バンキング・システムの場合、必要なところは柔軟に拡張し、アプリケーションのカスタマイズ部分を乗せる、という形で対応した。
トータル・コストを低減するe-businessホスティング
インターネットでバンキング・サービスを提供するバーチャル支店は、実店舗を設ける必要がないため、その分のコストがかからない。また、インターネット・バンキング・システムの開発・運用についても、徹底したコスト削減が可能だ。カギを握るのが、e-business ホスティングの「地銀共同インターネット・バンキング」。これは、複数の地方銀行が、IBMのe-business ホスティング・サービスを利用して構築したインフラを共同で使用する仕組みである。インターネット・バンキングの基本的なサービスである明細・履歴照会、残高照会、振込、そして住所変更届の受付、資料請求などを共同で開発するだけでも、大幅なコストダウンになる。安全面を考慮しても、インフラの冗長構成により実現する信頼性が、一社でシステムを運営した場合と比べはるかに優れている。また、24時間365日の運用についても、トータル・コストでホスティングにメリットがあると言える。インターネットでバンキング・サービスを提供する場合、サイトが24時間365日稼働していることが必要だ。一方、自社でサーバー運用のために24時間体制をとることは、担当者のスキルや人件費の面から困難になってきている。「IBM e-businessホスティング・サービス」では、企業に代わって24時間365日専門の担当者がサーバーの運用・監視を行い、グローバルの専門チームによる最新セキュリティー情報の収集・管理や、定期的な疑似アタッキングなどセキュリティー機能診断に基づいたパッチ適用により、最新のセキュリティー・レベルが保たれている。
導入効果
バーチャル支店を矢継ぎ早にオープン
スルガ銀行オンライン専業支店の1号店、「ドリームダイレクト支店」がオープンしたのは1999年9月にこと。実際の店舗を持たないこのバーチャル支店では、優遇金利に加えて、ジャンボ宝くじをつけた定期預金が好評を博し、予想を大きく上回る預金残高を早々に達成。また、商圏が一気に全国区に拡大したうえ、インターネット・バンキングの先駆者としてのイメージを確立することに成功した。スルガ銀行では、その後、IT関連企業や保険業など異業種の企業と積極的に業務提携するなどしながら、バーチャル支店を次々に立ち上げ(アライアンス戦略)、果敢にビジネスを展開している。
将来の展望
スルガ銀行の成長をIBMの総合力でバックアップ
インターネット・バンキングの世界で、次々と新しい挑戦を続けるスルガ銀行。IBMの e-business ホスティング・サービスには、ITを駆使し、それをどのように迅速に実現していくかが求められている。IBMは、企画段階のコンサルティングから、WebSI(Webシステム・インテグレーション)、そして運用に至るまでトータルでサービスを提供する。また、刻一刻と変化するインターネットの世界で、つねに最新のテクノロジーを追求し、最適のシステムを提案する姿勢を持っている。例えば、ホスティング・サービスを基盤とすることで、最新アプリケーションへの取り組みがよりスピーディーに可能となり、早い段階で携帯電話の主要3機種(iモード、J-sky、EZ-Web)に対応した。このことにより、ビジネス・チャンスを逃さないというスルガ銀行の挑戦をタイミング良く支えることが可能になった。また、2001年5月下旬には、BSデジタル・データ放送を利用した「テレビバンキング」の取り扱いを先駆的に開始した。
スルガ銀行は、インターネット・バンキングでのさらなる進化を続けている。顧客一人ひとりのニーズに合わせた商品を提案するため、CRMシステムとインターネット・バンキング・システムを統合する、といった先進的な試みも視野に、スルガ銀行とIBMのチャレンジはさらに続きそうだ。