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微睡みの合間に。三月一日。

ワイズです。

ラリーが回復したのは喜ばしい事ですが、それに伴い持ち上がって来た問題が一つ有りました。

『ラリーを前線から外す事によって生じる後方からの補充をヤギとグロのどちらにするか。』

ヨルダンのサーバやネットワークの保守構築は素人の手に負えるものではなく、ウチではヤギにしか出来ない仕事です。
だから、補充要員はグロ、理屈ではそうなるのですが、ハイそうですねとは出来ない事情が有り、私は頭を悩ませておりました。

「どうした。まだ何か悩んでるのか?」
「あ…教官~…。」


注:グレッグソン教官は一度は帰路についたのですがここ一月程妙にガードの固くなったウチの異変を感じ取り一週間程前に再訪、現在逗留中。

「…教官、人生の先輩としてこの道の先輩として若輩に御教授賜りたいのですが。」
「…お前の参謀官の事か。」
「はい…教官、アレをどう思われます?」

珍しくきちんきちんとして椅子の上に正座迄して教官に正対してみます。
教官はそんな私を見て苦笑すると自分も手近な椅子に腰掛けて煙草に火を点けました。

「まあ俺はウェブ上で何度か話しただけだから断言は出来んが…お前、何であんな甘ちゃんを参謀官なんぞにつけてるんだ?キャラの薄さだの性格の穏やかさからして綺麗なマッチングだとは思うが、お前の婚約者って位置に甘えてるように思えるぞ、俺には。」
「は、御指摘の通りで。」
「自分の仕事とその立場をしっかりと認識してないようなのを参謀、いや、それ以前に仲間として抱えるなんてな、お前、その内死ぬぞ?」
「は、それも重々。」
「お前やあの坊主が死ぬだけならそりゃ自己責任だが、お前には団体の長として組織の保持や仲間の身体や生命の保護責任が有る。それが重要な責務だってのを忘れるなよ、坊主をこのまま抱え続けるってのはそれを放棄するに等しいと思わないのか?」
「は、全く以って。返す言葉も有りません。教官。」
「何だ?」
「正座崩しても良いですか?」
「好きにしろ!俺はしろとは言ってない!」
「どうも。」
「…で?」
「は?『で?』と仰いますと。」
「惚けるな、お前みたいな性悪が何の目論見も見通しも無しに動く訳が無いだろ。どう事を運ぶつもりなんだ。」
「あら、性悪だなんて心外ですわ♪思慮深いと言って下さらないと♪」
「ほざけ!…で、どうなんだ実際のところ。」

あらあら、怒られてしまいました。仕方ない、私も煙草に火を点け、煙を吐き出しつつ頭の中を整理します。

「ん~…確かにね、全く以って教官の指摘通りなんですよ。あいつは甘ちゃんだし、私との関係の上に胡坐掻いてる。好きだとか何だとか、そういう気持ちが有れば何とかなる、私もそれを加味すると思ってる。多少成長はしましたがそういうところはまだまだです。今回の事も何度か協議をしましたけどあいつは『俺が行く』の一点張り、まあ向こうのメンテがヤギにしか手に負えるもんじゃないですからね、それも有るんですけど。でも根本には『甘え』が有る、だから私は現時点では反対なんですよ。」
「まあ、そりゃそうだな。で?」
「ええ、ただ、教官も仰った様に参謀ポストに在る人間がそれじゃ駄目だ。私が参謀官に求めるものは私自身の生命身体ではなく私の意志を何よりも最優先出来る事です、成長するのを待ってる余裕は有りません…今回の件で一気に奴のポテンシャルを引き摺り出しますよ。」
「引き摺り出すって…どうやって。」
「それはホラ、私の本業ですから。ま、見てて下さいな。」

そして、数時間後。
どちらを補充要員として呼び寄せるか、最後の協議が始まりました。

「…で、だ。」
『何言ったって俺は譲らないからね。』
「どうしても、か。」
『どうしても。』
「…あのさ、私の血液型言ってみ。」
『は?B型。』
「ヤギは?」
『B。』
「バグダッドにいる実働部隊は?」
『…全員…B…。』

「じゃあ、お前は?」

『…!!』

「言ってみろよ。」
『…A型…。』
「分かったみたいだな。私達は全員が夫々の輸血パックなんだよ、クロスマッチもバッチリだ。ウチがどうして月イチなんて高頻度で徹底した血液検査をしてたのか、お前、理由知らなかったワケでもねえだろ?」

徹底した血液検査の理由、それは私達がどこででも仕事を請け負う事に在ります。
衛生環境や医療環境の劣悪な地域も多く血液感染による致死疾患の危険は高低は有ってもどこも同じ、輸血が必要な事態になった時に『他人』の血液を身体に入れるのは緩慢な自殺行為に外なりません。
危険を避ける為には徹底した検査をパスした、信用出来る『仲間』の血液が不可欠です。
DTAとは、私を中核とした生命共同体でもあるのです。

「分かるか?お前はここの『異分子』なんだよ。」
『……』
「輸血パックとしても役に立たねえ、どうしようもない甘ちゃんで参謀官としても中途半端、そんな人間こっちに呼び寄せて何の役に立つってんだ?あ?答えてみろよ小僧。」
『………』
「気持ちが有れば何とかなるとでも思ってたのか?甘えるなよ、お前が私の役に立ってるとでも思ってんのか?…お前、自分がただのお荷物だってのにいい加減気づいたらどうだ?」

私の凄まじい物言いに聞いていた周囲が思わず止めに入ります。

「ワイズ、それ言い過ぎだろ、あんまりだぞ。」
「何が言い過ぎなんだ?役立たずを役立たずって言うどこが言い過ぎだ!!」
「やめろって!!グロ、気にするなよ、ワイズが言いたいのはお前に何か有っても助けてやれないからって事だからな、お前の事心配してるからだからな。」
「黙れっつの!!おい、グロ、良いか?!最初に言った通りお前がこっちに来ても何の役にも立たん、こっちにはヤギを呼び寄せる、ヤギの出発迄に引継ぎ済ませとけ!!分かったな役立たず!!」

そこ迄言って一方的に接続をブチ切ると、当然の様に周囲からは凄まじいブーイングが。

「お前何考えてんだ!!言って良い事と悪い事の区別もつかねえのか?!」
「ハッキリ言う言わないじゃないだろ!!あれじゃただの罵声じゃないか!!」

しかし私はさして狼狽する事も無く、にーんまりといやらしーく笑って連中の顔を睨め回します。

「いやー、さーんきゅーねー、読み通りの反応して援護してくれてー。」

「…What…?」

「私がガンガン言うだけじゃ押し弱いし、私があいつの心配をするのを素直に口に出してちゃ不自然だし、お前等がグロ庇ってくれなきゃ話進まなかったんだよねー。」
「…それって…もしかして…」
「そう♪全部計算ずく♪」
「うっわー!!最悪だこのアマ!!」
「教官!!男心部下心平気で踏み躙ってますよおたくの教え子!!」
「ま、ま、ま。別に悪意が有ってやってるワケじゃないし。」
「悪意が無きゃ何やっても良いってのかー!!お前マジでクソ!!」
「これが本職だもーん♪」

こういう時は凄まじいブーイングは最大の賞賛とほくほく顔で煙草に火を点け再び回線を繋ぎます。

「おーい、ヤギー、いるかー?」
『おうよ。』
「グロは?」
『あれだけ言われりゃそりゃ流石にヘコむだろ、出てったよ。』
「あ、ちょうど良いわ。…これからあいつが何企んでも抵抗するな、知らん振りして好きに動かせてやれ。」
『!…了解。…あいつが動かなかったら…?』
「そうなっても動いても私の望む答えを出せなかったとしてもそこで終わりだ、今回の結果如何で切り捨てるよ。」
『了解。』
「ああ。」

それだけを伝えて接続を切り、食べかけのマクルゥバを再びもむもむと頬張ると、事を少し離れて静観していた教官が横の椅子に腰を下ろし話しかけて来ました。

「これがお前の言ってた『引き摺り出し』か?」
「ふぁい、ふぉうおううぇうぃうぁ」
「食い乍ら喋るな!!飲み込め!!」

咀嚼中。

嚥下。

「失礼。そうですよ、これが私のやり方です。」
「あれだけヘコませて、成功する目算はどの位なんだ。」
「嫌だなぁ教官、私が奪れる見込みの無い博打打つ性格じゃないのは知ってるでしょ。ウチの連中がグロを庇うのもグロがどう動くかも全部計算の内ですよ。…奴はここに来ますよ、私の望む『答え』を出して…ね。」
「ったく、えげつない位に信頼してるんだな、お前は。」
「いえいえ、私は常に『DTA』ですよ、誰の事も信じません。」
「じゃあ、何でそんなに確信してるんだ、おかしいだろ。」
「信頼なんかしませんがね、私はグロがどんな人間か、他の連中がどんな人間か『知ってる』んです。…それで充分じゃないですかね。」
「ほ…この臍曲がりが。」
「何とでも。それが私ですから♪」
「もし読みが外れたならどうする気だ?」
「そりゃ私に人を見る目が無かった、勘が鈍ったってだけの話で。そうっすね、もしそうなったら…スッパリその場で現役引退しますよ。」
「そりゃ楽しみだ。」
「ま、そんな事にはなりませんけど♪ネゴシエイションもプランニングもブラフも私のオハコですから♪」
「かー、相変わらずクソ生意気だな、お前は。」
「有難う御座います♪」

それが丸一日程前の話、結果どうなったのかは次の機会に。

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