経営が悪化している東京電力は29日午前、臨時取締役会で1兆円の公的資本受け入れを正式に決めた。同日午後、原子力損害賠償支援機構に申請する。福島第一原発事故の賠償資金として約8千億円の追加支援も同時に求める。資本注入後の経営のあり方を示す「総合特別事業計画」を3月中にまとめる予定だったが、4月に先送りする。
東電は、原発の廃炉費用や火力発電の燃料費などがかさむため、政府が機構を通じて1兆円を出資し、資産をすべて売っても借金を返せない債務超過になるのを防ぐ。これで政府は東電の発行株式の7割を握ることになるが、議決権については当初は50%超とし、3分の2超にも拡大できる内容で調整している。
ただ、東電と機構は、議決権を明記する総合特別事業計画の政府への提出を先送りする。資本注入時に退任する勝俣恒久会長の後任が決まらないためだ。「国有化」後の経営は総合計画に基づいて進められるため、新会長となる人物の意向を確認せずには出せないと判断した。政府は外部の企業経営者を会長として送り込みたい考えだが、人選は難航している。
福島第一原発の破綻を背景に、政府、官僚、東京電力、そして住民それぞれに迫った、記者たちの真実のリポート