大熊町長“全域を帰還困難区域に”3月28日 15時23分
原発事故の警戒区域に指定されている福島県大熊町の渡辺利綱町長は、政府が進めている避難区域の見直しに関連して、町の全域を長期にわたって居住が制限される「帰還困難区域」に指定することを求める考えを初めて明らかにしました。
これは会津若松市にある大熊町の仮役場で開かれた町議会の全員協議会で、渡辺町長が明らかにしました。
渡辺町長は、全域を「帰還困難区域」に指定することを求める理由について、町の中で複数の区域が指定された場合、住民の間で賠償の方法に差が出てしまうことや、早期の帰宅を目指して準備を行う区域などとなる地区の住民は全体の5%程度に限られることなどを挙げています。
避難区域の見直しを巡っては、政府が今月、大熊町に対し、複数の区域に見直される可能性があることを示したものの、住民の合意を得るのに時間がかかるため、見直しの時期は予定していた今月末より遅れる見通しとなっていました。
原発事故を巡って、福島県内の自治体が全域を「帰還困難区域」に指定するよう求めるのは初めてです。
「帰還困難区域」に指定された場合、住民は精神的な損害に対する賠償金を5年分一括で受け取ることができますが、町では放射性物質を取り除く除染のスケジュールに影響が出ないか懸念を持っています。
渡辺町長は「町が分断されることなく、全員を同じ扱いにしてほしいと国に要望している。これから議会や区長などの意見を聞いたうえで、4月中旬から下旬ごろには町としての結論を出したい」と話しています。
区域見直しの現状
原発事故の影響で放射線量が高い警戒区域と計画的避難区域には、今回の大熊町のほか、双葉町、富岡町、浪江町、飯舘村、葛尾村の6つの町と村の全域と、南相馬市、川俣町、田村市、川内村、楢葉町の5つの市町村の一部または大半が含まれています。
これらの11の市町村にまたがる避難区域について、政府は今月末をめどに、放射線量に応じて、住民の早い時期の帰宅を目指す「避難指示解除準備区域」、引き続き避難を求める「居住制限区域」、そして、長期にわたって居住を制限する「帰還困難区域」の3つに見直す方針を示し、各自治体との個別の協議を続けています。
しかし、双葉町や富岡町などでは町が複数の区域に分かれる可能性があり、国の審査会が示した賠償の指針で、見直し後の区域によって賠償方法に差が出ることへの住民の不安があることや、住民への説明自体がまだほとんど始まっていないことなどを理由に議論がほとんど進んでいません。
このため多くの自治体は、区域の見直しや住民の立ち入りの制限の解除は来月以降にずれ込む見通しです。
国は、調整が遅れている自治体については、見直し時期を今月末にこだわらない考えを示していますが、見直しが遅くなると、環境省が区域の見直しの方針に沿って進める予定だった自治体ごとの除染計画に遅れが出る可能性があるほか、自治体の復興計画の策定にも影響が出ることが懸念されます。
一方で、11の市町村のうち、川内村と田村市は30日にも複数の区域への見直しが正式に決定される見通しです。
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